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ジン[Zine]についての簡潔な解説

A Brief Exposition of Zines

村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
2018/09/06−【第7稿(最新):2019/11/07】

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last update: 20201020

★→【追記[Addendum]】本文に盛り込めなかった内容(随時更新)
*→「ジン[Zine(s)]――その世界の多様性と可能性」というページに独立させました

■第7稿[Seventh Draft](最新)

*2019年11月7日修正の草稿→決定稿

■ジン(Zine)
 まず、「ジン(Zine)」は「マガジン(Magazine)」の略語ではない。マガジンから派生した「ファンジン(Fanzine)」という言葉から独立して、「ジン」という言葉が生まれた。最も簡潔なジンの定義は、「有志による非営利・少部数の自主制作出版物」となる★01。ジンは、個人的でありかつ政治的であること、親密性と身体性をあわせもつことをその大きな特徴とし、DIY(Do It Yourself)カルチャーの一部として位置づけられる。
 現在のジン・カルチャーに特に強い影響を与えているのは、1970〜80年代のパンク・シーン、90年代初頭のライオット・ガール(Riot Grrrl)・ムーヴメントと第3波フェミニズムだが(ピープマイヤー[2009=2011])、60年代の各種社会運動とアンダーグラウンド文化、そして70年代の第2波フェミニズムも、その発展に大きく寄与している★02。ジン・カルチャーは、本質的に反資本主義・反権威主義的姿勢を内包しており、アナキズムやラディカルな直接行動と親和性が高い★03。カウンターカルチャーとしてファシズム/家父長制/商業主義/能力主義への抵抗手段となる一方、障害者/マイノリティ/持たざる者たちの主体的表現手段となる★04。
 ジンの起源は一般には1920年代のアメリカのSFファンによるファンジンとされているが、その見解を白人男性優位主義とし、それ以前のアイダ・B・ウェルズに代表される黒人女性解放運動における自主刊行物の存在意義を強調する立場もある。これに象徴されるように、現在のジン・カルチャーでは、黒人/POC(People of Color)/移民/先住民/女性/ノンバイナリーといったマージナライズ(周縁化)された人びとの存在を重視し、白人男性中心の歴史/価値観を「脱植民地化(Decolonize)」することが重要な課題とされている。またジン・フェスト等の会場では、「セーファースペース・ポリシー(Safer Space Policy)」の周知徹底など、さまざまな差別・抑圧・排除の問題に対する具体的・実践的な社会正義(Social Justice)の取り組みが積極的に行なわれている。
 ジン・カルチャーの実践においては、ジンの制作にとどまらず、その流通・収集・保存・公開のシステムや、創造とシェアのためのアクセシブルなスペース(空間)も自律的に構築する(村上[2018])。例えばアメリカ・イギリスでは、公立/大学図書館の図書館員たちが中心となり、ジンのアーカイヴィングに関する専門的な検討を定期的に行なっている。ローカルなコミュニティ単位の草の根の活動が国際的に連携し、交流・議論が重ねられ、その成果が共有されることで、ジン・カルチャーは日々成長を続けていく。

【注】
★01 以下に補足する。@「有志」:(機関誌/同人誌に見られる)掲載審査、掲載料、投稿ノルマ等は存在しない。固定的な組織を前提としない。A「非営利」:できる限り自力で、身近な資源を活用して、低予算で制作し、無償で譲渡/寄付、交換、もしくは極力安価で販売する。なお、ブランドやプロのアーティストが商品/作品のプロモーションのために華美な印刷物を大量に製作し、それをジンと称して頒布する行為は、批判の対象とされる。B「少部数」:一般的に一度に制作されるのは20〜30部ほどである。
★02 日本の例でいえば、戦後のサークル文化運動のなかで制作された各種「サークル誌」や、ウーマンリブ運動のなかで制作(・複製)され流通したパンフレットなどが、現在のジンの「先祖」に位置づく。
★03 一例として、アナーカ・フェミニズム(Anarcha-Feminism)の運動におけるジンの活用が挙げられる(村上[2019])。
★04 ディスアビリティ・ジン、メンタルヘルス・ジン、クィア・ジン、レズビアン・ジンといったジャンルも確立しており、当事者たちの表現・交流手段となっている。

【文献】
◇Piepmeier, Alison[アリスン・ピープマイヤー], 2009, Girl Zines: Making Media, Doing Feminism, New York: New York University Press.=2011 野中モモ訳『ガール・ジン――「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』太田出版
◇村上潔 2018 「[連載]都市空間と自律的文化へのアプローチ――マンチェスター・ジン・シーン・レポート(全4回)」Webマガジン『AMeeT』(一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団)
◇村上潔 2019 「アナーカ・フェミニズム」『現代思想』47(6): 170-173

【注記:お読みいただいたかたへ】挙げている参考文献は最低限のものです。本文の内容の多くは、それ以外の(主に海外の)ソース*から得られる知見です。
 *例:
◇Casio, Holly, 2017, "The Economy of Zines", Cool Schmool, March 9, 2017, (https://coolschmool.com/news/economy-of-zines).=20180620,村上潔訳「ジンの経済」,arsvi.com
◇Knight, Rosie, 2018, "How Zine Libraries Are Highlighting Marginalized Voices", BuzzFeed News, December 30, 2018, (https://www.buzzfeednews.com/article/rosieoknight/zines-libraries-marginalized-voices).=20190829,村上潔訳「ジン・ライブラリーはいかにして周縁化された声を強調しているのか」(非公開/教育利用)
 *ジン・カルチャーに関する教科書的な書籍としては、Duncombe([1997] 2017)が挙げられる。
◇Duncombe, Stephen, [1997] 2017, Notes from Underground: Zines and the Politics of Alternative Culture, Third Edition, Portland: Microcosm Publishing.


■第6稿
*2019年10月3日修正の草稿

■第5稿
*2019年7月15日修正の草稿
【メモ】本文に盛り込めなかった内容
◇ジン・カルチャーは純然たるアマチュア文化であるため、プロが自らの高度な専門的技術を駆使して制作した作品をジンと称して(高額で)販売することや、プロのアーティストになる(=仕事を得る)ための(売り込みの)道具としてジンという形態を利用することは、批判の対象となりえる(前者であれば「アート・ブック/アーティスト・ブック」、後者であれば「ポートフォリオ」と称するべきである)。
◇アメリカ・イギリスでは、ジンは公立図書館・大学図書館における専門的アーカイヴィングの対象となっている。それに従事する図書館員たちは、定期的に会合をもち、よりよい(合理的かつ倫理的な)アーカイヴィングのありかたを共同で検討し、その成果を広く共有している。

■第4稿
*2019年5月13日修正の草稿。字数は1120字。
【メモ】本文に盛り込めなかった内容
‐ アマチュア文化[Amateur Culture]であること――専門性を活用しないこと[Do not utilize your expertise.]/プロを目指すための道具にしないこと[Do not utilize zines as a tool for becoming a professional.]

■第3稿
*2018年9月7日修正の草稿。字数は1120字。
【メモ】本文に盛り込めなかった内容
‐ 戦後日本のサークル誌/サークル文化運動

■第2稿
*2018年9月6日修正の草稿。字数は1120字。

■第1稿
*2018年9月6日作成の草稿。字数は1120字。
【メモ】本文に盛り込めなかった内容(→第2稿に反映)
‐ 親密性・身体性をあわせもつ
‐ カウンターカルチャーとしての側面
‐ ファシズム/家父長制/商業主義/能力主義に抵抗する手段
‐ ディスアビリティ/メンタルヘルス――自身を肯定する/他者へと開く
‐ 持たざる者の武器


*作成:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
UP: 20180906 REV: 20180907, 20190513, 0603, 0714, 15, 26, 1003, 1107,[…]20201020
ジン[Zine(s)]――その世界の多様性と可能性  ◇全文掲載
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