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「いま思うこと」

山崎學, 201808,『日本精神科病院協会雑誌』2018年8月,pp. 781-782.

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last update:20180925


 5月号の「巻頭言」はコピペ記事から始まった報道でセンセーショナルな内容に仕立て上げられ、全国紙に転載され騒ぎが大きくなった。「精神科医に拳銃」といった取り上げ方で面白おかしく報道したつもりかもしれないが、煽り記事の書き方を教わったような気がする。会長に就任して以降、その時々の心象をここに書き綴ってきたが、素人の筆力では時々脱線することもある。しかし、5月号の「巻頭言」は鶴田医師が指摘した欧米精神科医療の建前と本音の使い分けを強調したつもりであった。西欧の医療現場が「患者中心医療」と称されるなか、精神医療の現場が英国ではセキュリティーオフィサー、アメリカではホスピタルポリスと呼ばれる職種に危険な仕事を回して医療関係者は遠巻きに見ている実態について強調し、医療職種以外の人聞が行う行為については隔離・拘束にあたらないという勝手な解釈がまかり通っているという不都合な真実について詳解したつもりである々今回の報道については、精神科医・精神保健指定医でもない自称有識者に不適切な発言と言われて辟易している。さらに、びっくりしたのは目精協は銃刀法の改正を目指しているのですか」といった記者の問い合わせであった。あの内容から銃刀法改正に飛躍する配者の発想には開いたロがふさがらない。日精協は銃保持を声高に主張する全米ライフル協会ではないし、精神科医療の発展向上を目指す公益社団であることをお忘れのようである。また、田本の精神科医療現場はアメリカのように荒廃しておらず、人権も担保されていると思う。少なくとも、精神科医療現場において患者・医療提供者双方に想定されるリスクをいかに少なくできるかがテーマであり、精神科医療安全士とホスピタルポリスを同一視して精神科医療を後退させようとする一部の発書にはがっかりさせられる。
 最近、口先のきれいな建前論的社会報道が本流になっているような気がしてならない。IR法案が上程されると依存症問題が大きく取り上げられたが、かつては33兆円と診療報酬と同額で、2015年ベースでも23.2兆円(全世界のカジノ市場は推定18兆円)を売り上げているパチンコへの依存、また競馬依存、競輪・競艇依存はなぜ今まで騒がれなかったのか理解できない。マスコミは貧富の差ができたと騒ぐが、かつて市場原理主義を推し進めた小泉・竹中コンビを国民・マスコミがそろって熱狂的に支持した結果ではないのか。戦後 日本に民主主義が根づいたというが、うわべだけの民主主義と習われるなかで、官僚統制による社会主義国家として、その理想を目指しながら発農してきているような気がしてならない。長期自民党政権の政治主導が悪いと民主党政権を誕生させ官僚主導にしたところ、結局は官僚に丸め込まれて破綻し、政治主導体制に切り替わって経済成長が順調に回復してきたのに、またそろ政治主導はいけないとマスコミが世論を誘導し始めている。西欧を含めて、民主主義で国民が幸せになったという話は聞いたことがない。40%の支持率がある自民党に対して支持率1%に満たない野党とで、どうずれば健全な二大政党体制を成熟させることができるのか教えてほしい。そろそろ民主主義に対する幻想は捨てなければならない。
 いま、世界ではグローバリゼーションの反対軸としての孤立主義が台頭し、各国の政治軸が大きく揺すぶられている。EU崩壊・再編成、アメリカが軍事援助費(経費の70%)の削減に踏み切った時のドイツをはじめとするNATO加盟国29力国の軍事費負担等のあり方、米中保護主義貿易の結果生じる経済摩擦など、自由主義経済圏をめぐる問題がすぐそこまで来ている。わが国においても拉致被害者問題、憲法改正を含む日米関係の新しいあり方、対中国外交北方領土返還を含む対ロシア外交といった大荒れの国際関係のなかで、森友・加計問題で大切な審議を先延ばしにしている時間はない。野党の党利・党略によるそのような暴挙は国民に対する重大な背信行為であることを、彼らには自覚してもらわなければならない。

――全文掲載終わり――

(参照:)
山崎學 2018/05 「欧米での患者中心医療の外側で起こっていること」
山崎學 2017/02 「アメリカでの隔離拘束最小限化成功の影響」



*作成:伊東香純
UP:20180925 REV:
精神障害/精神医療:2018  ◇障害者と政策:2018  ◇介助・介護  ◇病者障害者運動史研究   全文掲載
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