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『不幸な子どもの生まれない運動』を肯定し続ける兵庫県に抗議の声を届けよう!

7月21日(土)23時 ETV特集「私は産みたかった――旧優生保護法の下で」放映をきっかけに


私たちの内なる優生思想を考える会・関西女性障害者ネットワーク
http://yuuseisisou.jugem.jp/

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last update:20180717

 私達は、6月30日に集会「『不幸な子どもの生まれない運動』は終わったのか?」を開催しました。
 「不幸な子どもの生まれない運動」とは、1966年に兵庫県で始まり、全国に普及した施策です。障害児を「不幸な子ども」とし、その「出生防止」のために、県費で障害者への強制不妊手術や出生前診断を推進しました。この施策は、障害者達から激しい抗議を受けて中止に追い込まれました。
 しかしながら、一昨年発行された『兵庫県立こども病院移転記念誌』には、この「不幸な子どもの生まれない運動」を「本邦で初めてのユニークな県民運動」と称賛する文章が堂々と掲載されたのです。
 障害者や市民からの抗議にもかかわらず、県当局は、子ども病院のホームページに掲載されていた『記念誌』を削除したのみで、話し合いにも応じようとしません。そこで、改めて「不幸な子どもの生まれない運動」を問い直し、県当局に私達の声を届けようと開かれた集会でした。

 集会を取材した読売テレビは、放送日時は未定ですが、「不幸な子どもの生まれない運動」の特集を組むそうです。
NHK Eテレは、「不幸な子どもの生まれない運動」と強制不妊手術の被害者飯塚淳子さん(仙台在住)への数年にわたる取材もあわせて、7月21日(土)23時〜24時、ETV特集「私は産みたかった――旧優生保護法の下で」を放映予定です。
http://www4.nhk.or.jp/etv21c/x/2018-07-21/31/20172/2259628/
(再放送は次週木曜午前0時)

 これらマスコミの動きを県の態度変更に結びつけるために、皆さんの知人・友人・関係者によびかけ、「番組を見て憤慨した」ということで、県当局および県立こども病院に対し、FAX・メール・郵便・SNSなどあらゆる媒体を通じて抗議のメッセージを送っていただき、世論が注目していることを彼等に思い知らせたいと思います。
 7月21日24時(7月22日0時)、NHKEテレのETV特集が終わったのを合図に(また、その後も継続して)、兵庫県や兵庫県子ども病院に対して、一斉に抗議のメッセージを流してください!
 6月30日の集会決議文(後掲、参照)の内容にもとづき、以下に抗議例を挙げています。全文を含まなくても、一部でもかまいませんが、具体的な県への要求は、11番の「話しあいを持て」であることを強調した上で、各自が独自に文章化し、抗議のメッセージを、ファックス・メール・SNS・郵便などあらゆる媒体を通じて、一斉に送って頂ければ幸いです。

■抗議してほしいこと

1.障害者との共生が謳われる現代に『兵庫県立こども病院移転記念誌』で「不幸な子どもの生まれない運動」を称賛したことは許せない。

2.「不幸な子どもの生まれない運動」は、相模原障害者殺傷事件であらわになった「障害者は不幸を作る」という考え方を、社会に根付かせようとした点が「ユニーク」だというのか?

3.「不幸な子どもの生まれない運動」に障害者運動から強い批判があった事実を隠蔽したことは許せない。

4.県は「不幸な子どもの生まれない対策室」が廃止され県費での羊水検査も中止に追い込まれた歴史的事実を明記し、訂正文を広報せよ。

5.県やこども病院が、「不幸な子どもの生まれない運動」が差別・偏見を社会に根付かせた反省の表明もなく、こども病院ホームページに掲載していた『記念誌』を削除しただけで、問題を隠蔽しようとする姿勢が許せない。

6.「不幸な子どもの生まれない運動」が障害を理由とした強制不妊手術や出生前診断(羊水検査)を推進したことは許せない。

7.県は優生手術を受けさせられ、今も苦しんでおられる被害者の実態を早急に明らかにし、謝罪し、救済措置を講じるロードマップを明らかせよ。

8.県は「不幸」と決めつけられ、人としての尊厳を傷つけられた全ての人々に謝罪せよ。

9.「不幸な子どもの生まれない運動」が「障害者は不幸で、生まれてこないほうがよい」という「内なる優生思想」を掻き立て、母親を不安にさせ、悩ませ、追い込むのは許せない。

10.県やこども病院は、2013年に始まった新型出生前検査を一般医療として広く実施させ、障害の有無にかかわらず、どんな子も、生まれてくる子どもを安心して産み、育てにくい環境を作っている。

11.県やこども病院は6・30集会主催団体、共催団体、賛同団体、集会参加者を中心とする障害者・市民らと、この問題について話し合いを実施せよ。

 マスコミの動きを県の態度変更に結びつけ、交渉の壇上に引きずり出したいと思います。
 このタイミングを逃すと、県当局およびこども病院に逃げ切られそうで心配です。みなさま、よろしくお願いいたします。

■抗議文の送付先

●兵庫県庁
〒650-8567 兵庫県神戸市中央区下山手通5丁目10番1号
電話:078-341-7711(代表)
県への意見・提案のフォーム:https://web.pref.hyogo.lg.jp/sawayaka/goiken.html
*健康福祉部健康増進課への意見であることを明記して下さい。

●兵庫県健康福祉部健康増進課
電話:078-362-9128
FAX:078-362-3913

●兵庫県立こども病院
〒650-0047 神戸市中央区港島南町1丁目6-7
 電話:078-945-7300(代表)
 FAX:078-302-1023(代表)
 Eメール:info_kch@hp.pref.hyogo.jp

■6月30日の集会決議文

「『不幸な子どもの生まれない運動』は終わったのか?」集会決議

 私達は、本日、「『不幸な子どもの生まれない運動』は終わったのか?」と題した集会を開催し、「不幸な子どもの生まれない運動」が決して過去の問題ではなく、より先鋭化した形で現在につながっていることを確認しました。

 「不幸な子どもの生まれない運動」は、兵庫県衛生部が中心となって、1966年から県下全域に広めていきました。この施策は、経済成長を支える優生政策のモデルとして全国へと波及していったのです。「不幸な子ども」とは、主に障害児を指しています。県は「不幸な子どもの生まれない対策室」を設置し、「不幸な子ども」を増やさないために、県費で障害者に対する強制不妊手術や出生前診断(羊水検査)を推進しました。これに対して、障害者達は激しい反対運動を行ないました。対応を迫られた県は、公費による羊水検査は中止、「対策室」を廃止して「母子保健課」とし、名称も「よい子を産み健やかに育てる運動」に変えました。

 あれから40年以上経ち、障害者との共生が謳われている現代ですが、障害者が当たり前に地域の中で育ち、暮らしていくための支援は不十分です。多くの障害者が今も施設に長期間にわたって隔離され、虐待も後を絶ちません。相模原障害者殺傷事件であらわになった「障害者は不幸を作ることしかできない」といった考え方は、今も根深く存在します。また、2013年に始まった新型出生前検査は、今春から一般医療として広く実施されようとしています。受精卵の段階で「異常」の有無を広範囲に調べる着床前診断も頻繁に行われ始めており、現代版の「不幸な子どもの生まれない方策」は社会的論議もなされないまま広がりつつあります。

 このような中で、一昨年発行された『兵庫県立こども病院移転記念誌』では、「不幸な子どもの生まれない運動」を「本邦で初めてのユニークな県民運動」と称賛する文章が堂々と掲載されたのです。障害者差別を根底とした施策を推進したことへの反省が全くなされていないことは明白です。兵庫県や県立こども病院に対して、複数の障害者・市民団体が抗議するとともに、公開質問状を提出して話し合いを求めていますが、形ばかりの「回答」がなされたのみで、いまだに誠実で明確な説明がないばかりか、話し合いにも応じていません。

 私達は、兵庫県当局に対して以下の項目について要請します。

1. 県は「不幸な子どもの生まれない運動」について、どのような検証及び反省を行なったのかを明らかにすることを求めます。

2. 「不幸な子どもの生まれない運動」は、「障害者は不幸で、生まれてこないほうがよい」といった差別・偏見を社会に根付かせました。女性達に対しては「『健康な』子どもを産むべき」との圧力を与え続け、生まれてくる子どもの障害の有無にかかわらず安心して産み育てることを阻害しました。県は、「不幸」と決めつけられ、人としての尊厳を傷つけられた全ての人々に謝罪することを求めます。

3. 県は、「回答」の中で、障害を理由とした優生手術について「現在では不適切」であったとしていますが、その「不適切」な手術を受けさせられ、今も苦しんでおられる被害者の実態を早急に明らかにし、謝罪するとともに救済措置を講じるべきです。全ての行政機関、公文書館、県下の全ての医療・福祉・教育機関に存在する優生手術に関する資料を探索し、調査することを求めます。また、被害者が名乗り出やすい体制を整備するとともに、名乗り出た被害者の人権回復に向けて全力でサポートすることを求めます。

4. 県は、現在、こども病院ホームページに掲載していた『記念誌』を削除したことで事足れりとしています。理由を明確に付して、該当部分を訂正すること、及び、「不幸な子どもの生まれない運動」に対して障害者運動からの強い批判が投げかけられ、「対策室」は廃止され、県費での羊水検査も中止に追い込まれたことを歴史的事実として明記することを求めます。同時に、その訂正文を広報することで、過去の県の姿勢を改め、障害者差別解消に向けて施策を進めていくことを示して下さい。

5. 本集会主催団体、共催団体、賛同団体、集会参加者を中心とする障害者・市民らと、この問題についての話し合いの場を持つことを求めます。

2018年6月30日
集会参加者一 同

■6月30日の集会

「『不幸な子どもの生まれない運動』は終わったのか?――『不幸な子どもの生まれない運動』というかつての兵庫県の施策を知っていますか?」

■関連事項

◇わたしたちの内なる優生思想を考える
 http://yuuseisisou.jugem.jp/
立岩 真也定藤 邦子 編 200509 『闘争と遡行・1 於:関西・+』,Kyoto Books
障害学会理事会 20180307 「旧優生保護法に関する障害学会理事会声明」
小川 恭一


*作成:北村 健太郎
UP:20180717 REV:
優生 2018(日本)  ◇障害女性  ◇DPI女性障害者ネットワーク  ◇全文掲載

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