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旧優生保護法に関する障害学会理事会声明

障害学会理事会 2018年3月7日

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 日本が2014年1月に批准した障害者権利条約は、その第23条第1項で「障害者が子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する権利を認められ、また、障害者が生殖及び家族計画について年齢に適した情報及び教育を享受する権利を認められること」「障害者(児童を含む)が、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること」の保障を締約国に義務づけながら、障害者に対するリプロダクティヴ・ライツ(性と生殖に関する権利)の保障を求めている。
 1948年制定の日本の優生保護法は、受胎調節運動の意義を認め、人工妊娠中絶、ならびに避妊方法としての不妊手術を、世界的に見てもいち早く合法化し、障害者権利条約や現行の母体保護法に継承されているリプロダクティヴ・ライツの考えを、不十分ながらも認めた。しかし、同法はその名のとおり、優生政策推進のための法律であり、その第1条は同法の目的の一つを「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことに定め、第4条は、遺伝性とされた疾患や障害を有する者に対し、その不妊手術(優生手術)が公益上必要であると医師が認めた場合、本人同意の要なく、都道府県の優生保護審査会の決定にもとづき、不妊手術を実施してよいと定めていた。また、第12条は「遺伝性のもの以外の精神病又は精神薄弱にかかっている者」についても、保護者の同意があれば、同じく優生保護審査会の決定にもとづき、不妊手術を実施してよいと定めていた。これらの審査を要件とする不妊手術について、厚生省が1953年に各都道府県知事に宛てた「優生保護法の施行について」は、必要ならば「身体の拘束」「麻酔薬施用」「欺罔」等の「強制の方法」を用いて、これを実施してよいと指導してきた。
 さらに、優生保護法の第3条は、遺伝性とされた疾患や障害を本人ないし配偶者が、あるいは四親等以内の親族が有している場合、もしくは本人ないし配偶者がハンセン病にかかっている場合、本人および配偶者の同意にもとづいて、医師が不妊手術をおこなうことを認めていたが、ハンセン病者が療養所内で結婚を認めてもらう際、その条件として不妊手術が提示されていたという事実一つとっても、この第3条にもとづく不妊手術の中にも、実質的には強制と言うべきものがあることは明らかである。
 優生保護法は、リプロダクティヴ・ライツを一部の人に認めつつ、しかし、それをすべての人には認めなかった。同法は「優生上の見地から」「不良」とされた人びとから、その権利を暴力的に奪った。リプロダクティヴ・ライツに関する人間のこのような分断こそが優生思想であり、障害者差別である。障害者のリプロダクティヴ・ライツの否定という優生保護法の論理はまた、生理時の介助が面倒である等の理由で、女性障害者に対し、施設入所等の条件として子宮や卵巣の摘出をせまる等の、同法さえ認めていなかった行為を、間接的に正当化してきたと言えよう。
 障害学会理事会は、優生保護法が直接、間接に正当化してきた、障害者のリプロダクティヴ・ライツの否定行為を障害者差別として明確に否定しつつ、強制不妊手術をはじめとした権利剥奪行為について、実態解明と公的補償を速やかに行なうよう、日本の立法、行政、司法の各機関に強く求める。加えて、各都道府県に対しては、優生保護審査会をはじめとした優生保護法関連の資料の保存と可能な範囲での公開を求める。

 以上


UP: 20180307
障害学会  ◇優生:2018(日本)  ◇全文掲載
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