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メモ:アレクサンダー・クルーゲ監督『定めなき女の日々』・『昨日からの別れ』

村上 潔MURAKAMI Kiyoshi) 2018/03/02+03+04

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last update: 20180304


●kiyoshi murakami(@travelinswallow)

『定めなき女の日々』1:家父長制、家事/ケア責任、中絶の権利、医療の権威性、ポリシングの暴力、ジャーナリズムの欺瞞、労働組合の怠慢、資本の合理化、労働者の生活苦、貧困調査の無力、母親の学習と連帯、女性の社会運動……と、盛りだくさんのテーマを次から次へと数珠つなぎに入れ込んでくる。
[2018年3月2日21:15 https://twitter.com/travelinswallow/status/969546823542104064]

『定めなき女の日々』2:よって、もちろん、テーマの散漫さは感じるのだが、同時にその散漫な「出し方」には必然性が感じられる。自立心の強い母親を主人公にした時点で、おそらくこういう展開は決められていたのだろう。主人公の発想や行動は、「現代女性の社会病理」として括られかねないもので、>
[2018年3月2日21:18 https://twitter.com/travelinswallow/status/969547563132059648]

『定めなき女の日々』3:作り手はもちろんそれは意識していたはずである。彼女の行動原理は社会的には「非合理」なものであるが、それを非合理たらしめている秩序こそを、実は問題にしているのが本作ではないだろうか。かといって本作は、主人公を「たくましい、変革のモデルとなるヒロイン」として>
[2018年3月2日21:22 https://twitter.com/travelinswallow/status/969548557702213633]

『定めなき女の日々』4:描いているわけではない。かなり突き放したかたちで描いている。そこがおもしろい。彼女の純真さ・エキセントリックさと、生活・労働に追われる日常性の両方の観察記録のように描写された作品だ。古典映画・格言・寓話の引用もあれば、セミ・ドキュメンタリー的な要素もある。
[2018年3月2日21:28 https://twitter.com/travelinswallow/status/969549924898500609]

『定めなき女の日々』5:結果としてこの作品は「社会問題の告発を使命とするに至る女性を取り巻く環境をリアリズム的かつ形而上的に捉えることによって、現実の現象自体がもつ救いがたさ・滑稽さ・変わらなさと、無力な一個人自身の変化の可能性とをドライにまとめて指し示さんとした試み」といえる。
[2018年3月2日21:38 https://twitter.com/travelinswallow/status/969552606035984384]

『定めなき女の日々』6:おもしろいと思った点。まず交通事故が主人公のその後の人生を象徴するかのように描かれ、次にロケ中に偶然出会ったと思われる車のトラブルが記録され、さらに主人公が交通事故を社会問題として告発する立場になり、最後に話の筋でロードムーヴィー的な展開になるという流れ。
[2018年3月2日21:45 https://twitter.com/travelinswallow/status/969554402565537792]

『定めなき女の日々』7:それにも表れているが、どこか人を食ったような、本気なのか皮肉なのかただの冗談なのかわからない表現が多いのが本作の魅力。特に雑多な音楽の使い方。映像と脈絡のないフォルクローレ音楽などどう解釈すればいいのか。そしてブレヒトの音源。つまり、解釈を拒んでいるのか。
[2018年3月2日21:50 https://twitter.com/travelinswallow/status/969555482007412736]

『定めなき女の日々』8:余談。アレクサンドラ・クルーゲのファッションは、まったく派手さも個性もモダンさもレトロ感もない凡庸なものだが、不思議とださくはない。自分も日常的にしてみたいな、と思う着こなし。中盤で出てくるいかつい大きな犬と飼い主のおじさんの組み合わせが、なんかかわいい。
[2018年3月2日21:55 https://twitter.com/travelinswallow/status/969556698682687488]

*2018年3月2日、〈福岡市総合図書館映像ホール シネラ〉の《アレクサンダー・クルーゲ監督特集》にて鑑賞。
 http://www.cinela.com/gaiyou__20180301.html

■定めなき女の日々
監督:アレクサンダー・クルーゲ
出演:アレクサンドラ・クルーゲ シルヴィア・カルトマン
1973年/16ミリ/モノクロ/87分/ドイツ
「女性医のロスヴィータには三人の子供と、無職の夫フランツがいた。フランツは妻に養ってもらっているにも関わらず、彼女の職業を不服としている。なぜならロスヴィータの主な仕事は「堕胎」だったから。様々な葛藤を経て、彼女は堕胎医を辞め、政治活動の道に入るのだった。男性社会に対する女性の抵抗を描いたセンセーショナルな作品。」(上記特集ページより)



『昨日からの別れ』1:昨日観た『定めなき女の日々』と基本的な構成・手法は同じ。ただ(7年前に作られた)こちらのほうがモンタージュや音声の被せが多用されており、アヴァンギャルド感が強い。二人の会話があからさまにかみあわないディスコミュニケーションの象徴として編集されていたりもする。>
[2018年3月3日22:08 https://twitter.com/travelinswallow/status/969922445044981760]

『昨日からの別れ』2:この作品でも、判事・大学教授・企業の管理職・文化的な役人(すべて中年男性)に代表される様々な「権威性」が明に暗に批判的/皮肉的に描かれるが、それだけに、最終的に「監獄」へと自ら「包摂」されていくアニタの身体をどう位置つければよいのか、普通に考えると難しい。>
[2018年3月3日22:18 https://twitter.com/travelinswallow/status/969925091537567746]

『昨日からの別れ』3:ヒントになるかもしれないのは、収監後のアニタをケアするのがすべて(高い専門性をもった)「女性たち」であること。アニタはここで、自らの身体を従順にさらけ出し、混乱に陥ることはあっても彼女らのケアで自らを取り戻す。女性同士のフィジカルな関係性がポイントになるか。
[2018年3月3日22:23 https://twitter.com/travelinswallow/status/969926247718436865]

『昨日からの別れ』4:それと関連して印象的だったのは、2回ほど挿入される、アレクサンドラ・クルーゲと出演女性たちが談笑しているオフショット映像。この演出の意図を特定するのは難しいが、単純に考えれば、監督は「女性同士の親密性」に対して何らかの(肯定的な)思いをもっていたのではないか。
[2018年3月3日22:28 https://twitter.com/travelinswallow/status/969927400875175936]

『昨日からの別れ』5:たしか『定めなき女の日々』でも、出演者女性たちが談笑するオフショット映像が使われていたと思う。どちらの作品でもすべての女性が主人公の理解者として出てくるわけではない(敵対する女性もいる)が、主人公をもっとも精神的に支える存在となるのは男性ではなく女性である。
[2018年3月3日22:32 https://twitter.com/travelinswallow/status/969928429142339585]

『昨日からの別れ』6:アレクサンドラ・クルーゲのファッションショー的な側面もある作品。ソフトなコートもクールなシャツも普段着のセーターも似合う。あと、彼女が荷物用エレベーターに乗っていたずらに上下するシーンと、両手に食べ物を持って交互にがっついて食べるシーンが特にかっこよかった。
[2018年3月3日22:42 https://twitter.com/travelinswallow/status/969930989190328320]

『昨日からの別れ』7:6を書いて気付いたが、人ではなく荷物を運ぶエレベーターにアニタが乗っていたのは示唆的な意味をもつだろう。彼女は企業社会から、国家や学問の世界から(つまり、男性社会から)生産的な人間として扱われてこなかった、ということだ。便利な労働力として、もしくは愛人という>
[2018年3月4日0:19 https://twitter.com/travelinswallow/status/969955307446128642]

『昨日からの別れ』8:>オプションとしてのみ、機能を求められ、利用されてきた。皮肉にも彼女には、女性のみがケアしてくれる監獄こそがもっとも自分を疎外から救出してくれる場所だったのだ。また、唯一生産性のない恋人となる若い男子学生も、他の男のようには悪く描かれていなかったように思う。
[2018年3月4日0:23 https://twitter.com/travelinswallow/status/969956499819708417]

*2018年3月3日、〈福岡市総合図書館映像ホール シネラ〉の《アレクサンダー・クルーゲ監督特集》にて鑑賞。
 http://www.cinela.com/gaiyou__20180301.html

■昨日からの別れ
監督:アレクサンダー・クルーゲ
出演:アレクサンドラ・クルーゲ ギュンター・マック
1966年/16ミリ/モノクロ/84分/ドイツ
「東ドイツから単身で西側に渡った女性アニタ。ユダヤ人というだけで学校に通えなかった彼女は教養に飢えており、社会のルールに従うのではなく、より哲学的に生きたいと望んでいる。「寒いから」という理由だけで同僚のカーデガンを着服したアニタは、法廷に立たされるも判事のありきたりな質問にうんざりするばかり。そんな彼女の反社会的彷徨を描いた異色作。」(上記特集ページより)


*作成:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
UP: 20180303 REV: 20180304
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