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「青柳 親房氏への障害基礎年金に関するインタビュー」

話し手：青柳 親房さん／聞き手：髙阪 悌雄さん　20180220　14:00～14:50　M＆C Cafe丸の内オアゾ(丸善丸の内本店４F 喫茶室：東京都）にて.
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last update: 20220324


■青柳氏について

青柳親房氏へのインタビューを2018（平成30）年2月20日にM＆C Cafe丸の内オアゾ(丸善丸の内本店４F 喫茶室）にて14時～14時50分に実施した．青柳氏は，1980（昭和55）年7月より1985（昭和60）年8月まで厚生省年金局年金課で課長補佐等を歴任した．その後，社会保険庁運営部長，厚生労働省九州厚生局長を経て，2009（平成21）年7月厚生省を退官．現在新潟医療福祉大学教授．なお，1985（昭和60）年年金改正全般に関する青柳氏への詳細なインタビューを立教大学の菅沼隆氏が行っている．


■インタビュー本文

聞き取れない箇所は、＊＊＊（hh:mm:ss）
聞き取れるけれど自信のない箇所は、【きこえたおと（hh:mm:ss）】
と表記しています。


（00:00:00）



青柳先生（以下敬称略）：障害者生活保障問題専門家会議は結果だけしか知らないので。いろいろ先生がていねいに追いかけられた話、僕はこんな話があったのかというのを初めて知ったようなところがありますのでね。だから年金制度のほうで検討していたら、こちらのサイドのことしか知らないという。制約条件というか、限界があるということは、最初にお断りしておいたほうがいいと思います。

髙阪：それは、もうだいぶ前の話ですし。

青柳：まず最初の、質問の1のところからですが、これはまさに障害者の検討委員会のサイドからの見方と、年金制度を検討したほうの見方が違うところなんだなと思ったひとつなんだけれども。僕らは、正直言って、どっちが最初かというのは、あまり正確に覚えていないけれども。年金制度の側のほうから、いわゆる1カ月の被保険者期間期間がいるかいらないかという議論をしていて。それがいらないということになったので、じゃあ障害福祉年金の対象者であった20歳前の人たちについても被保険者期間の要件はいらないというのも当然だよね、というふうに思ったので。最初に検討委員会の議論があったという認識じゃないんですよ。それで、なんで僕はそういうふうに自分で思ったのかなと思っていろいろ考えたら、山口ゼミにその痕跡がありました。

髙阪：それは、すごい。

青柳：僕も読み直してみて、一番最初にどこであったかなっていろいろ考えてみたんだけれども。

髙阪：ご編集なさった、新一郎さんの本ですね。

青柳：そうです。ご覧になったかもしれませんけれどもね。

髙阪：一通り全部持っています。そういう箇所ありましたか？　ゼミの。

青柳：こっちが先がいいかな。橋本さんとの話が先がいいかな。まず、こっちか。この、ここからこっちにかけての話で。ちょうど昭和55年の11月頃に、障害年金の議論をしているところなんですけれど。結局何かというと、そこでも言ってるように、そもそも被保険者期間の要件が必要かどうかというところについて、昔日の感があると。（山口ゼミ）で議論していても、みんな、それいらないんじゃないかという議論のほうが優勢だと。昔は、やっぱり被保険者期間はいるという議論だったが。そこに、随分昔日の感という思いがするね、というような話を山新さんが言っているんですよ。

髙阪：これは貴重ですね。

青柳：つまり、55年の11月の段階で、彼はまさに被保険者期間の要件の話をしているんですよ。

髙阪：していますね。そのあと検討委員会に入っていきますからね。座長に。すいません、これ見落としていました。あるはずなんだけれど、あまりにも量が膨大なので。

青柳：だから、それ気付かないと思うんですよ。

髙阪：これ、見落としていた。ありがとうございます。

青柳：もっと言えば、彼にしてみれば、この問題は昭和44年に年金課長をやっていたときからの思いだというのは、橋本さんとの対談の中で書いてある。このくだりです。

高阪：これ、読んだはずなんですけれど。

青柳：僕も今回読み直してみて、こんなこと言ったなと思って気付いたの。

髙阪：なるほど。44年のときから既に。

青柳：もう年金課長をしていたときからの思いだということを言っているの。彼にしてみたらやっぱり、この検討委員会ができてからっていう話じゃないんですよ。

髙阪：ではないんですね。既に考えていて。

青柳：どういうふうに制度として組み立てるかは、もちろん検討したあとじゃないと出てこないにしても、そういうものは必要だという議論に。だから、まさに拠出制の障害年金の問題としてあって。それと、いわば20歳前のやつを並べてみたら、当然じゃないかっていう論理の流れ方じゃないかと、僕は見ていて思ったんですね。

髙阪：これ、貴重です。検討委員会の前の段階でも既に考えていた、貴重な話で。あまりにも分厚くて、よくあんな集めたなっていうくらい編集なさって、写真のことも全部書いておられたんですけれども。

青柳：あれ、僕が編集させていただいたから、誰がどこかでこんなことを書いてあるはずだという記憶があったということもあるんだけれどね。探してみたら。その2つは、恐らく先生の疑問に答えている材料じゃないかなと思うんですね。

高阪：求めているものになると思います。とにかく浅野さんは、検討委員会のときに何か言い出したということをおっしゃっている。それで、浅野さんは、そんなに山口さんは障害年金のことを関係していないというふうな見方。

青柳：違うと思います。

髙阪：ではないでしょう。浅野さんは、何か、どっちかという。

青柳：浅野史郎はね、要するに昭和56年にアメリカから帰ってこられたんですよ。だから、山口ゼミは知らないんです。

髙阪：なるほど。これ、それなら、山口ゼミと重なっていないですよね。

青柳：重なっていない。

青柳：辻さんもおられないんですよ。辻さんは、この前に滋賀県に出向されて、このあと昭和58年に戻ってこられたので、山口ゼミはご存じないんですね。

青柳：僕ら制度をつくっている人間からしてみたら、最初に20歳前があったんじゃなくて、むしろ拠出制の障害年金の要件をどうするかがあったので、それとの並びで言うと、20歳前も当然だよね、という論理の流れだというふうに思っているんです。これ、要件に関して言えばね。ただし、20歳前を、障害福祉年金を基礎年金にするべきだというのは、逆に言えば、ほとんど上意下達できました。つまり、しろって話が来ました。山新さんから。

髙阪：来た？

青柳：うん。

髙阪：上意下達で来たという。

青柳：そうそう。だから、それを受け取ったときに、拠出制でそういう構成をするならば、まさにここに書いてあるような論理で、障害基礎年金でやってもいいかもしれないというふうで、みんな納得したという記憶があるんですよ。僕らの頭の中は、拠出制の要件が最初にあって、それから20歳前になったというふうに思うけれども、山口さんの頭の中では一緒なんですよ。

髙阪：一緒だったんですね。

青柳：と、思いますよ。

髙阪：貴重な。

青柳：この発言を見る限りは、そうとしか思えないよね。

髙阪：ですよね。ぜひ。ありがとうございます。

青柳：それで、恐らく1番目はお答えできたかなと思います。

髙阪：1番目は、これでもう十分オッケーです。ありがとうございます。それと、2番目ですね。

青柳：2番目はね、これは板山さんの追悼集への寄稿を読まれたと思うんですけれど。結局板山さんは、最初に生活保護で、山新さんはまだ若手の事務官のときに一緒にやって。一番大きいのは、老人福祉課長を山新さんがやったときに、例の老人医療費の無料化の制度を一緒にやって。そういう下地があって、この検討委員会の話がつながっているんですよ。僕のツーカーという印象は、まさにこの流れなんですよね。だから、具体的にこの20歳前の話をどういう風に2人がやり取りしたかは知りません。

髙阪：局長室で会っていたというこの記述は、ちょっとだけ残っている部分なんですよね。老人福祉課の時代に、老人医療費無料の話というのを一緒に取り組んだ、その流れの中で。

青柳：要するに人間関係、信頼関係ができているから。

髙阪：そこで信頼関係というのができていますよね。

青柳：やっぱり若手のときに生活保護をやっているというのは、まさに基礎年金なんかの水準を考えるときには、彼にとっての財産なわけですよ。

髙阪：そうですよね。

青柳：それとの流れで、これもご覧になっていると思うけれども、調さんの、ゼンコロの障害者団体。

髙阪：ゼンコロの。

青柳：彼が、やっぱり山形からの人間関係ができているという意味で。つまり、障害者のことを山新さんがどう関わってきたかということのひとつの材料が、板山さんルートであると同時に、調さんのルートだなということは、僕はこの追悼集を知って、知ったんですよ。

髙阪：出向していましたね、山形のほうに。

青柳：そうそう。

髙阪：老人福祉課時代に板山さんがいた。調さんは山形に出向したときに、山形時代にいたと。その流れで、障害者の問題というのは絶対に関心を持っていた。こうした破天荒な論理というのを、その流れの中で打ち立てて。やっぱりこの2人の影響というのは大きかった、みたいな。

青柳：直接の関わりとして僕が知っているのは、その2人との関わりしか知らないですけれどもね。

髙阪：ありがとうございます。やっぱり老人福祉課の流れで一緒にやったというところが大きかったということですよね。

青柳：大きいと思いますよ。

髙阪：じゃあ、申し訳ないです。質問を、いろいろと聞きたいことが多々あって。質問の3のほうなんですけれども。

青柳：これは、僕もちょっと数字を調べてみたんですけれどもね、恐らくね、ちょっと正確にわからないところがあるんだけれども、これ、例えば60年から61年にかけて、障害年金から基礎年金に増えている部分が、人数で言うと6万7000人くらい増えているんですね。

髙阪：これ、ちょっと数字が、じゃあ。

青柳：これは実際に、例えば60年の段階で、つまり障害者のストックとフローの数の変化を見てみたんですよ。ストックというのは、つまり年度末における受給者の数でしょ。例えば、ここでいうと72万とか68万とかっていうのはそうじゃないですか。フローっていうのは、新規裁定で差し引きで、その年にどれだけ純増しているかというのを見てみたんですよ。

髙阪：フローの部分、純増の部分という資料がまたあるんですね。

青柳：『厚生省五十年史』の資料編で見ました。

髙阪：『厚生省五十年史』ですね。

青柳：それで見ると、昭和60年度で国民年金の拠出制が3万1702人くらい新規裁定されていて、障害福祉年金が3万1450人くらい。それ以外で、厚生年金の障害年金が、これ3級含む数だけれど、2万6500人くらいですよ。全部あわせると、8万9000、大体9万人くらい。それに対して、ストックの純増分を見てみると、5万2000人くらいしか増えていないということは、新規裁定が8万9000あるのに、純増が5万2000しかないということは、軽快で非該当になったり死亡や他年金の選択で3万7000抜けているということなんですよね。そういう目で見てみると、昭和60年から昭和61年で障害年金（既裁定、国民年金拠出制）と障害基礎年金を合計した純増は3万4千人増。この中には従来の厚生年金の障害年金（1・2級）の新規裁定の人の分が含まれているわけで、殆ど増えていない。要するに障害年金の新規裁定総数9万人から3万人くらい抜けているという構造は、あまり変わっていないんじゃないかと思います。

髙阪：あまり変わっていない？

青柳：うん。つまり、障害基礎年金には、従来でいえば障害厚生年金の1・2級も入っているから。ここでいう障害基礎年金のね。そうすると、この所得制限の影響はあまり課題に見るべきではないんじゃないかな、というのが。

髙阪：すごい。それ、でも貴重な証言ですね。

青柳：ちょっとだからこれは、もうちょっと精査してみないとわからないけれど。だから、従来で言えば厚生年金の障害年金になった人が、61年4月以降は、障害基礎年金と障害厚生年金の2階建てになったはずだから。それが含まれているとすれば、そんなに増えていないのかもしれないなっていうイメージですけれどね。

髙阪：僕、本当単純に、ストックで引いて、足して、引いてとやっていたんですけれど、その求め方だったら、全然駄目なんですね。弱い部分ですよね。

青柳：だから、これは『厚生省五十年史』の資料編に、新規裁定分の60年度の分が出ていますから、確認していただいたほうがいいと思いますね。

髙阪：ぜひ確認させていただきます。『厚生省五十年史』のほうを。なるほど。ありがとうございます。

青柳：それで、だからそれ以外にどんな要因というのは、恐らくほとんどは、従来で言えば、厚生年金と障害厚生年金1・2級になった人が、その基礎年金プラス障害厚生年金になった分は含まれているのかなっていうイメージなんですよね。

髙阪：ごめんなさい、ちょっと理解が本当遅いので。

青柳：この障害厚生年金の72万7099の中には、20歳前の裁定替えもあるし、それ以外に、従来の国民年年金の拠出制の障害年金で新たに裁定された人と、厚生年金の障害年金1・2級で新たに裁定された人も入っているわけですね。

髙阪：いうことですよね。そうなりますよね。

青柳：それでいっていたら、そんなに違わないのかなというふうに思ったんですけれどね。

髙阪：これ、ちょっとこのあたりは専門家の方に聞かないと、さすがにわからないですね。貴重な、ありがとうございます。証言を。

青柳：ちょっと精査しないと。夕べちょっと思いついて見てみたので、不正確かもしれませんけれども。

髙阪：いえいえ。またこのへんお気付きの点とかあったら、またいつでも教えていただけたら。

青柳：だから、直接に、例えばこの所得制限の撤廃で、どれだけ増えたかがわかるデータがないものですからね。

髙阪：わかるデータがね。単純に私らも、それで増えたんだというふうに、ちょっと論文にも書いてしまったことはあるんですけれども。でも、やっぱりこのあたりのところは、ちょっと精査してみないと本当わからない部分なんですね。

青柳：それから、年金水準の話は、これも記憶をたどってみたら、結局基礎年金の水準5万円そのものが、国民年金の1680円かける加入期間25年分に、大体それにスライドかけた分に、大体イコールになっているんですよ。だから、少なくとも25年以上の加入期間があって障害年金を受ける人は、ひょっとしたら年金額が減った人もいるかもしれないけれども。障害年金を受ける人は大体加入期間が短いですから、大部分の人が同じ水準になったと思います。これも正確な数字はないけれども。論理的には、2級の障害年金、拠出制の障害年金の最低保障額と、基礎年金の2級の障害基礎年金の額が合うようなところからスタートさせているから。

髙阪：これ、この給付額というのが2500億円。これはストックだと思うんですけれども。増加しているんですけれども。これは、実際にそれは、この増加分というのは、これは実際その障害福祉年金が基礎年金になって、額が上がっているので、そういう新規裁定の＊＊＊（00:16:02）。

青柳：新規裁定の分が、どのくらいになるかなんですね。

髙阪：そうですよね。了解です。

青柳：金額までは、僕もちょっと確認できなかったので。

髙阪：すいません。本当ありがとうございます。貴重なご証言をいただきまいて。

青柳：いいえ。

髙阪：次ですね。

青柳：4はね。

髙阪：4なんですよね。

青柳：これは微妙だな。

髙阪：これはどうなんですかね。

青柳：そういういきさつがあったにも関わらず、健保法改正を通したあとに年金をと言ったら、ばかなこと言うなって、与党筋から言われたんですよ。これだけ通してくれれば国会はいいって言ったのに、年金までやろうというのかと言って。それで、しかしそこから巻き返して、なんとか継続審議にして。次の国会、臨時国会、その次通常国会。そこで、臨時国会のときに、結局衆議院だけは進めるという話でも。それも、59年度の、当年度の物価スライドの法案を一緒にしていたのを、そこを分離して。そっちを先にやるかわりに、衆議院を通すということで、やっと一歩前に進めたというのはあったんです。だから、先生が書いておられた、障害者団体の力というのは、一番感じたのは、そのあとなんですよ、まさに。つまり、衆議院はなんとか進めたけれど、そのあとにとにかく成立させなきゃいけないというので、ものすごい力になったのは障害者団体の人たちです。

髙阪：59年の101のときに、1回廃案になりました。時間切れで、一度59年に。

青柳：廃案にはならなかった。継続審議になった。

髙阪：そうですよね。継続審議になって、そのあとが重要なんですね。

青柳：そう。これはものすごい障害者団体の皆さんの力でね。みんな陳情してくれて、それで社会党も反対できなかった。

髙阪：その59年にも、3月か何かに閣議決定されて、そのあと4月に国会に上がった、その段階まで、それほど障害者の声というのは。

青柳：もちろんバックアップはなっていたけれども、結局一番力になったのを感じたのは、その先なんですよ。

髙阪：101国会が終わった、そのあとですよね。なるほど。

青柳：僕の印象はね。もちろんその前から動いていたよって団体の方はおっしゃると思うし、それも間違いじゃないと思うんだけれども。はっきり言って、衆議院まではなんとかそうやってスライド法案を切り離していったけれども、その先はなかなか進めないというときに、ものすごい力になったというのは、僕らのイメージですね。

髙阪：社会保険審議会とかに、また諮問にかけますよね。スライドの部分なんかもね。じゃあ、もうそのあたりでいろいろと、障害者団体というのは、社会党を説得したりとか、それとか労働組合に会いに行ったりとか、いろんなことをとにかくやったわけなんですね。

青柳：してくれたと思いますが、本当にこれはかなわないなと議員が思ったのは、やっぱりこれを通してくれなきゃ困るというふうに、まさに参議院にかかる法案がね、先に進まないよ、という話で、ものすごい力になったと僕は思いますね。

髙阪：25年の86年に間に合ったわけなんですよね。

青柳：そうそう。

髙阪：貴重な、その前後関係も大体。

青柳：ただそこは、自分たちは動いていたっておっしゃるかもしれないけれどね。あくまでも僕の印象だけなのでね。

髙阪：もう貴重な。ありがとうございます。やっぱり社会党や総評も、臨調の流れには逆らえなかった。でも、審議が遅れるということがとにかく怖かったということですかね。審議が引き延ばされて、引き延ばされてというような。

青柳：だって、普通でいえば、通常国会で成立するとしても、もっと遅い時期ですよ。6月とかそんな時期になっちゃうはずだったのがね。

髙阪：なるほど。ありがとうございます。

青柳：もっと言うと、これもオフレコかな。まずいかもしれない。

青柳：議員修正については、当時は、距離感みたいなものさえ間違えなければ、ある程度こちらで材料は用意するわけですよ。これでどうですかとやるわけ。その距離感さえ合っていれば、みんながで、俺たちはこういうことをやってくれればいいんだ、という話になるんですよね。

髙阪：じゃあ、もう各政党のバランス感覚で動いている。障害年金というのは、言ってみれば社会党の取り分みたいな部分もあったのではないですかね。

青柳：だから修正項目は全部覚えていないけれども、修正のところは、衆議院も参議院もそうやって、こういう社会党分、公明党分、民社党分なんですよ。

髙阪：とにかく利害関係を調整していた部分というのが、こちらに書いておられるようにすごくあったわけなんですね。

青柳：そういうことをやっているなら、僕も当時、係長から補佐に成り立てくらいだったから、初めてそういう国会の流れにおける55年体制の最後のときだけれども、そういうバランス感覚でものごとが進んでいるというのは目の当たりにしましたよ。びっくりしたね。こういうものなんだなと思ってね。

髙阪：なるほど。ありがとうございます。いろいろと貴重なお話を聞かせていただきました。

青柳：だから、その意味で、障害者団体も一生懸命陳情していただいたり、努力していただいて、汗をかいたと思うけれども、みんなが汗をかいているという世界なんですよ。

髙阪：だから、表面的には反対はしているけれども、基本は社会党も汗をかいて、年金改正に助力をしているし、公明党もそうだし、というような、みんな汗かいていたということなんですよね。

青柳：そうなんです。

髙阪：なるほど。総評と障害者団体の関わりというのはすごい強かったんですよね。いろいろと資料を見ると。だから、汗をかいていたということですよね。

青柳：そうだと思いますよ。

髙阪：だから、いわゆる今の国会とはまた違った、当時の、みんなでつくりあげていこう、みたいな民主主義の力学みたいなものは、すごく働いていたということですよね。

青柳：僕はそう思いますよ。

髙阪：そのへん、辻さんとか浅野さんにはない証言で、すごく面白いご証言ですね。ありがとうございます。

青柳：そういうのを目の当たりにしたので、印象がすごく強いのかもしれませんけれどね。

髙阪：それと、この質問5は、非常に私、福祉年金と、この無拠出制の障害基礎年金と拠出制の障害基礎年金の違いみたいなものがわかる、非常にわかりやすい説明で。

青柳：刑務所、少年院の収監の場合うんぬんというのは、僕の理解では、要するに、そこへ入っているときにはちゃんと生活費なり何なりが出ているから、年金を出す必要がないという話だと思うんですよね。無拠出の年金は。拠出制は、保険料を払っているから、どこにいようが出るけれどもね。無拠出は税金なので、ほかに食いぶちが出ているならば、いいじゃないかという話だと、僕は理解したんです。単純に。

髙阪：こういうの、障害福祉年金の時代からあった話なんですかね。

青柳：刑務所のほうはあまり覚えていないけれども、日本国内住所のうんぬんは、だって住所要件というのは、社会手当にもあるじゃないですか。

髙阪：はいはい、ありますね。それの並びだろうなというふうに思っていたんですね。

髙阪：その並びで。とりたてて。

青柳：結局今の時代でも、国内に住んでいる外国人であっても、内外人平等の原則だから面倒を見ると。だけれども、外国に行ってしまえば、それは外国政府の面倒見る話だよね、というのが社会手当の世界じゃないですか。

髙阪：社会手当の世界ですよね。

青柳：それなんだろうなと、僕は単純に思っていたんですけれどね。

髙阪：このときに、取り立ててこの仕組みをつくったというようなことではないんですよね。

青柳：うん。ですし、法務省とは特にそのことを連絡はしていません。一般論として、もちろん法令協議しているから、法務省にも法案が行っているので見ているのでしょうけれどもね。特別にそのことで協議した記憶はありませんね。

髙阪：国庫負担のほうが確かに多く入っているので、いろんな制限がかかるとういうのは、理にかなってはいますよね。ここの部分ね。

青柳：だから、これはね、ただそうは言うものの、保険料も入れているわけだから、という部分があるんだけれども。だけれども、その払っている保険料はみんなが出している分であって、もらった人たちが自分では負担していないというところは、遠慮してもらうんじゃないの、という話だと思うんですよね。

髙阪：そうですね。

青柳：だからこの時点では、先生もどこかで書いておられたように、結局、扶養義務者の所得制限だけは外してくれと。これはものすごく強い要望だったし、これだけをとにかくやってくれればいいというふうに僕らは聞いていたから、それは当然じゃないだろうかと思っていたけれどね。

髙阪：このあと、辻さんの証言では、生活保護の受給者なんかが減ったというような証言が。

青柳：それは事実。

髙阪：事実？　それはそうなんですね。

青柳：それはむしろ、確か61年の4月を境に生活保護の受給者ががくんと減っていって。それは、そこに問題があるというよりも、その分どうなったかというと、国保の被保険者に回っちゃったんですよ。

髙阪：そうなんですか？

青柳：だって、生活保護でなければ医療扶助を受けられないから、その人たちは国保の被保険者にならざるを得ないでしょ。

髙阪：そうですよね。

青柳：だから、国保課から文句言われたの。

髙阪：に、なりますよね。それは、国保のほうに、文句に。そうなっちゃいますよね。

青柳：そのくらい顕著に数が減っているはずなんです。

髙阪：数が減ったということ。それはすごいな。

青柳：それ、医療扶助のみならず、生活扶助も含めて、全て減っているということ。その部分の所得制限の効果というのは、ちょっとまだ試算はしていないけれども。でも、その生活保護だけは確実に言える部分なんですよね。

青柳：言えると思いますね。それは、だって国保課から言われたからね、文句ね。

髙阪：なるほど。ありがとうございます。

青柳：6の話は、ちょっと僕の誤解かもしれないけれども、2つの話がごっちゃになっているかなという懸念があったんですけれどね。1つは、基礎年金の3分の1に集中するという話と。それを、言ってみれば拠出金のレベルでやるか、それとも基礎年金の給付費のレベルでやるかの議論というのは、ちょっと一緒になっているかなという気がしたんです。

髙阪：ごめんなさい。ちょっと僕理解していないと思います、そのへんは。

青柳：これは、なんでそんなことを言うかというと、基礎年金の3分の1、今2分の1だけれど、という説明をしているけれど、あれは説明が正しくないんですよ。

髙阪：正しくない？　なんで？

青柳：なぜかというと、正確に言うと、拠出金の3分の1、2分の1なんです。

髙阪：拠出金の3分の1。なるほど。

青柳：なぜそこが違うかというと、恥ずかしい話、シーリングの問題があるんです、これ。

髙阪：書いておられましたね。厚生省の取り分のシーリングを超えてしまう。各年金制度に2割だったものだけれども、でも基礎年金をつくることによって、そこを経由して基礎年金に拠出すると、シーリングの部分を超えてしまうという、そういう理解ですよね。

髙阪：つまり、共済の従来持っていた基礎年金部分も、厚生省が予算要求しなきゃいけなくなっちゃうんですよ。ところが、拠出金だと、各共済から出すのは、ばらばらにそれぞれのところで要求して拠出金を出すことになるから、各省庁の要求でいいんですよ。だから、そこはすごいこだわったんです、我々は。だけど、その拠出金の3分の1という形にして、形式的に基礎年金が国庫負担を統一化するっていう話については、山新さんの最初のこだわりは、ひとつは共済がついてきてくれるかどうかの懸念であったと思いますよ。そんなことで共済がついてこなかったら、元の子もないじゃないかと。だから、そんなことをこだわる必要ないだろうと小村さんに言ったというなら、よくわかる。だけども途中から、いつになるかは別にして、最終的には基礎年金に共済も乗ってくるという見通しが立ったんですね。

髙阪：見通しが立ったので、これをオッケー出したんですね。

青柳：そう。そこは、基礎年金に集中してもいいじゃないか、という議論になったと思います。

髙阪：なら、その共済の見通しが何か立ってきたときの、でもだいぶ早い段階ですよね。共済の見通しが立ったの。これ、もう82年の6月って話になっているので。

青柳：それはどうかな。だから、一元化の閣議決定のときには、まだいつ乗ってくるかは立っていなかったはずなんですね、共済。

髙阪：大蔵省の共済課長。

青柳：84年の暮れか5年ですよ。恐らく共済のほうが腹を決めたのが。

髙阪：とにかく頑固だった大蔵省の共済課長が。

青柳：あの人、立派ですよ。

髙阪：立派な。

青柳：彼が、だって最終的に首を縦に振ったから、地共済も私学も全部ついてきたんだから。

髙阪：全部乗ってきたわけですよね。

青柳：あれはすごいと思うね。

髙阪：最後まで反対していたらいしですよね。坂本さんという課長でしたよね。

青柳：坂本さん。あの人は、恐らく腹の中ではこれしかないと思っていたんでしょう。彼がそう思ったのは、それにも書いたかもしれないけれども、国鉄なんですよ。国鉄共済。

髙阪：前年の統合の話ですね。

青柳：だから、最初に国共済が国鉄共済の面倒を見たじゃない。だけど、いつまでも見れきれるとは思っていないわけですよ。最終的には厚生年金も含めて全体で見てもらわなきゃいけないと思っていたから。それなのに、自分たちが今反対したら、展望がないと。

髙阪：火だるまになるという。11年の座談会でも書いておられましたね。

青柳：それは、最終的に厚生年金がみてくれるという前提のもとに、それなら厚生年金にそろえてしまえと。そのために基礎年金に乗らざるを得ないと、こういう発想だったと思うんです。国鉄ですよ。

髙阪：とにかく、その前年の共済統合法が坂本さんにとってすごい気になった。

青柳：と、思いますよ。

髙阪：あれが、火だるまになってしまって、全体が。

青柳：あれが一番の、だから懸案だったはず。

髙阪：だったということですね。

青柳：だから、このときの議論としてもうひとつあるのは、36年4月より前の厚生年金の分に2割残したという経過措置をとったりしていますのでね。だから、そういうものまで全部込みにやれば、当面、国庫負担が前年に比べてめちゃくちゃに減るということはないんじゃないか、という見通しが見えてきたというのはあったと思いますね。

髙阪：大体そうなんですよね。このあたりで納得しているというのがね。山新さんなりのいろんな計算はそこで働いていた。

青柳：予算の数字が固まってこないと、そんなに安請け合いはできない、ということはあったんじゃないかな。

髙阪：ありがとうございます。

青柳：それだと大体いいのかな、この6。

髙阪：十分お答えになって、ご貴重なご証言でありがとうございます。それと、最後ですね。

青柳：7のところは、僕が余計なことを言った話なんだけれども。

髙阪：そうなんです。ここに載っていたので、ものすごく気になりましてね。このご証言が。

青柳：ただ、これは障害が一番顕著に出ていると思うけれども、老齢年金でも同じ問題がありましてね。僕は、問題意識として持っているのは、結局介護保険や医療保険、老人医療の保険料や、それから自己負担。保険料は今、年金天引きじゃないですか。自己負担も1割から2割になり、3割になるという。それは、なんでそんなに負担を増やせているかというと、年金をみんなもらえるようになっているんじゃないの、という議論があるからです。だけど、その年金の水準はいくらだったらば、いくらまで保険料とってもいい、あるいは自己負担をしてもいいという議論になるのと。もう1回水準論に戻るはずなんです。水準がこうだから、これだけの負担が求めていいという議論になるはずなのね。その水準論を全部すっ飛ばして、年金があるから求めてもいいよね、という議論になっている。おかしいと思っているんですよ、僕は。

髙阪：現物給付があって、現金給付というのがあって、そこの関係性というのか。

青柳：だからそれは、平成11年の改正までは、少なくとも年金局は、このくらいの年金、標準的な年金なり基礎年金、夫婦2人分だと、老後の費用のうちこのくらいはカバーできるよ、ということを一生懸命、事後的に説明していたんですよ。今は一切しないのよね。できないんです。

髙阪：できないっていう。なるほど。

青柳：それは、老齢の場合には、確かに人によっていろいろばらつきがあるから、平均のところの議論でしかできないかもしれないけれど、障害の場合にはほとんど定額じゃないですか。

髙阪：定額ですよね。

青柳：そうすると、障害年金こそ、その議論が一番露骨に出るはずなんですよ。しかも、総合支援法でほとんど骨抜きになったとはいえ、ちゃんと自己負担を求めるという世界になったわけでしょう。

髙阪：なりましたね。

青柳：そうすると、それって何なのっていうのをちゃんと議論しなきゃいけないよねと思っているんだけれども、少なくとも障害者のサイドでもしないですよね。

髙阪：しないですね、そこの部分はね。

青柳：どこかでしておかないといけないんじゃないかと。

髙阪：一度出来上がってしまったものをまた崩すっていのが、本当難しくなってきているのかなとも思うんですけれどね。基礎年金としても、定着してきたものを、これを崩すというのは。

青柳：だけど、それは別に今の、例えば厚生年金でいう18.5パーセントを、負担の上限として意味のある数字なわけじゃなくて、当時の16年の改正したときに、要するに50パーセントの平均的な厚生年金の水準を、所得代替率を維持できるためには、保険料をどこまで下げられるかって、18.5だったというだけの話。18.5がどういう意味があるものかということを誰も説明しないわけですよ。これをちゃんと説明したうえで、水準はこうしかないというならわかる。そうじゃないんだからね。逆に水準としては、これだけ絶対に必要だと。じゃあ、これだけの負担を求めなきゃいけない。それは、じゃあ保険料とまとめて国庫負担でどれだけ求めるのか、という議論をしていかなきゃいけない。

髙阪：それ、そういう背景が、ご発言の背景にあったわけなんですね。

青柳：僕は、ちょっと非常に物足りないと思っているところでもあるので、ついつい言っちゃったんですけれどね。

髙阪：ありがとうございます。ぜひ、問題意識としても。ありがとうございます。本当、いろんな貴重なご証言をいただきまして。


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＊作成：岩﨑 弘泰
UP: 20220324　REV:
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