HOME

コニー(Conny Van der Mejiden、オランダ)さんへのインタビュー

於:ボストン

Tweet


Conny Van der Mejiden写真20171207-1   Conny Van der Mejiden写真20171207-2

 ※通訳:長瀬修
 ※暫定版です

立岩 お伺いしたいのは、基本的には二つです。一つはこうした国際会議にどういう目的があって参加なさっているのかということが一つ。もう一つはオランダにお住いと聞きましたが、オランダの在宅のケア、制度としてのサービスがどういうふうに使われているのかという。

長瀬 なんだかしゃべりづらいんだそうで、娘さんが介護をしているそうです。(コニーさんがお話したことを、娘さんが言い直し、それを通訳)

コニー わたしはオランダの患者会の理事を務めています。わたしのそのグループはアライアンスのメンバーです。こうした国際シンポジウムに出席してそこで得られた情報を、国のオランダに持って帰ります。新しい、さまざまな情報、たとえば車いすに関する情報、そういったことを持ち帰ります。

立岩 ほかになにかこういう会議でこういう情報は有益である、使えるという風に思われることにはどういうことがありますか。

コニー 呑み込んだり、吸引のときの器具が非常に興味深いです。それは前回の会議で非常に興味深いと思っていました。各国でさまざまなやり方が違うっていうのを、接するということでとてもいい刺激になります。

立岩 オランダの今暮らされているときの、在宅の福祉サービスというのは、どういうものがあって、どういう制度を使っていますか。

コニー まずオランダでは障害者への支援の予算というのは各自治体を通じて提供されます。ですから、障害者個人は、たとえば車いすが必要というようなときには、各自治体に話を持って行くことができます。あと、介助者につきましては、パーソナルバジェット、現金給付という形でもらうこともできます。ただ所得との関係があるので、その部分については、ちょっとよく分からない(コニーさんに、質問する)
 さっきの現金給付ですけど、母の場合は、夫や子どもや、ほかの知人を雇用するということができます。さっき申し上げたことですけれども、父が現金給付で支援者になる場合は、仕事を減らしてその現金給付を受け取る雇用者になるということになりますので、その場合、下手をすると全体的な父の収入が減ってしまうということが起こります。

立岩 ああ、分かりました。彼女はたとえば週でも月でもつければいいですけど、どのくらいの制度のお金を使ったサービスを受けて暮らしているのでしょうか。

コニー 週に30時間です。

立岩 週30時間。それ以外の時間はどうやって日常のサポートを得ているんですか。

コニー 先ほど申し上げたあげた患者会、患者の支援グループのために、昼は働いています。そのときは一人です。活動をしている、仕事をしているときは、パソコンを使っていますし、またフェイスブックもありますから、もしなにか必要があればそういった形で連絡がもらえます。父は仕事をしていますし、わたしは学校へ行っていますし、他の家族も仕事があるので、そういう形で対応しています。今のところ、問題はありません。

立岩 増田さん、なにか聞くことないですか?

コニー 障害者も非障害者と同じ機会がなければいけませんと、母は書いているんです。まずはトイレですけど、朝、彼女がまず手伝ってくれて、昼間の間はずっとトイレは行かなくて、父が帰宅したら、またトイレに行くという風にしています。

女性 すごい大変ですね…。
長谷川 


コニー もう慣れてるから大丈夫ですよ。

立岩 ALSの人たちは病気の人として運動する、主張するという方法と、障害を持っている人その運動というのと、二つの道があると思いますけれども、オランダの人たちは自分たちをどういうふうに、病人であるというのと障害者であるというところの、どちらに問い続けて主張したり、一緒に他の人たちと運動したりしているんでしょうか。

コニー なかなか難しいですね。障害者というふうに考えた時には、フェイスブック等を通じてたくさんのいろんな人と交流することができると考えられます。病気というふうに考えた時には、冬だと寒いから外出がままならないということがあるかもしれない。それはやっぱり気分によって自分がどれだけ元気があるかにも、かかってくるんじゃないか。
わたしは自分のことは障害者だと思っていますよ。

立岩 オランダの協会は主にどういった活動を展開なさっているのか。

コニー 彼女のグループでいいんですか。

立岩 そうですね。

コニー アドボカシーですね。

立岩 具体的にはどういったアドボカシーの活動?

コニー 必要な薬が患者のもとに届くようにする活動です。まず、そもそも必要な薬がオランダに入ってくる、それから保険会社がきちんと支払ってくれる。個人で負担できない場合が多いですから。そういったことをしています。

増田 あなたの国ではALSは何人いますか。

コニー 1400人です。

立岩 あと、難しい問題だと思いますけれども、オランダは "euthanasia" 安楽死について寛容な、積極的な国だというふうに聞いていますけれども、オランダのALS協会としての見解というものはおありでしょうか。

コニー わたしたちのグループとしては、安楽死をオーケーだと考えています。実際に多くの患者たちがそれを望んでいるからです。患者全員が反対ということであれば、わたしたちも反対しますけれども、今は賛成の声が多い。またオランダではそれは合法化されています。

長谷川 人工呼吸器をつけた患者さんの割合はどれくらい?

コニー はっきりとしたことは申し上げられないんですけれども、2%から5パーセントぐらいだと思います。そこまでやろうと思う人たちの数は少ない。だから早めに諦める人が多い。

立岩 そのことについては、それが当然であるというふうに、多くの人たちは受けとめているんですか。

コニー それは選ばないです。

増田 人工呼吸器を積極的に装着しますか?(コニーさん本人であれば)

コニー ALSで、長期的にどういう状態になっていくのか分からないので、あまりはっきりしたことは申し上げられませんが、今の気持ちで言えば、イエスですね。

立岩 ちなみにコニーさんは発症なさってから何年ぐらい?

コニー 18年。

立岩 ゆっくり…?

長谷川 オランダの医療制度について、自分の保険でまかなっているのか?アメリカではぜんぜん医療保険がないとか。

コニー 公的な保険の仕組みはあります。ほかの国からオランダにやって来た場合も、オランダの医療保険の仕組みに加わる義務があります。

立岩 先ほどのような、呼吸器をつけるとかつけないとか、安楽死を望むか望まないことに関して、協会の中で議論というものは殆どないというふうに理解していいでしょうか。

コニー そうですね、あんまり話さないですね。

長谷川 生活していくのに、障害のサービスあるんですか?

(立岩 それはあります。

長谷川 でも、それは受けられるんですか。

立岩 聞いてみてください。受けられるはずではあります。)

コニー 一人ひとりが選択できるという意味です。

長谷川 先ほど週30時間サービスを受けているとおっしゃっていたと思うんですけど、それはどこからサービスを受けているのか、障害サービスを受けているのか、どういう機関のサービスを受けているのか? 他人介護を受けているのですね。 

立岩 障害者福祉のサービスか否かということ?

コニー これは病気も障害も共通のサービスです。

長谷川 両方、受けられる?両方で30時間?

立岩 障害者であるからというのと、病気であるというのと、制度的に違いがないということ。共通の制度だということ、恐らくは。

長瀬 そういう理解だと思います。

長谷川 増田さんは一度、呼吸器をつけることを諦めたんですけれども、それは自分の意志で発信できないことと、家族への介護の負担もあることの二つで諦めたんですけれども、やっぱりお孫さんができて、生きたいと思われ、人工呼吸器をつけました。それからは他人介護でその二つを解消して、生活していて、生きていることが今、すごくいいと思っているんですけれども。そういうふうな理由で安楽死とか望むことが多いですか。家族介護とか介護負担とか、意思決定ができなくなる、意志が表明できなくなるという理由で、安楽死を選ぶことが多いですか?

コニー 男は介助者に依存するのが嫌なんですよね。男は男らしく自立していたいんですよね。

立岩 彼は今、奥さんがいらっしゃいますけれども、基本的に一日24時間、夜も含めて、日本の法律のもとでの社会福祉サービスを得て、暮らしていますけれども、オランダではそういった形で全面的に福祉サービスだけで、ALSの人たちが暮らすということは可能なのでしょうか。

コニー できます、でも難しいです。

立岩 難しい。それは非常に少ないケースなのか、ALSで比較的そういう人はたくさんいらっしゃるのか。それとも…?

長瀬 でもだって、少ないのは、さっきの数ではっきりしてるじゃない。

立岩 ああ、そうだね。それは政府に申請して認められた場合にそういうことが可能な場合もある、ということですか?

コニー まず政府の仕組みとしても家族介護は原則です。それが足りない部分を政府が出すという考え方です。わたしはもう会議に戻らなくてはならないので、ありがとうございました。

 ※立岩は、この日の夕食のとき、コニーさんに安楽死のことで話しかけられた(まわりに人がたくさんいて話をしている中だったので、録音はしていない)。問われて、法制化に反対していること、その理由を述べた。苦痛のことを言われた。それに対して、すくなくともALSの場合に、軽減不可能な極度の苦痛はない、なくすることができるはずだと話した(長瀬さんに話してもらった)。


UP:20171215 REV:
安楽死・尊厳死:オランダ  ◇インタビュー 2017 at Boston  ◇ALS  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇病者障害者運動史研究 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)