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「障害者権利条約中華民国(台湾)初回報告総括所見」

国際審査委員会 2017/11/03
解説・仮訳:長瀬 修
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last update: 20181116


■障害者権利条約中華民国 (台湾) 初回報告総括所見

解説・仮訳 長瀬修

台湾を統治する中華民国政府は国連を1971年に脱退しているため、障害者権利条約の通常の批准手続きや、障害者権利委員会による審査を受けられない。そのため、国内法で独自に障害者権利条約を2014年に「批准」し、実施を進め、その一環としての国際審査を2017年秋に台北で実施した。同政府に委嘱された国際審査委員会メンバーはアドルフ・ラツカ(スウェーデン)、ダイアン・キングストン(英国)、ダイアン・リッチラー(カナダ)、マイケル・スタイン(米国)、長瀬修(日本)である。全員が個人の資格で参加した。互選によって私は委員長を務めた。国連の障害者権利委員会においても、審査の中心的役割を果たす国別報告者(country rapporteur)は、近隣の国の委員が務めることが多い。実際、漢字を読めることは、政府訳で「優生保健法」の「優生」が正確に訳されていないことを第17条関係等で指摘する際に役立った。

審査に当たっては、障害者組織をはじめとする市民社会からのパラレルレポートの情報が重要であり、事前質問事項の作成においても、非常に有用であった。そして私たちが事前質問事項を作成する際には、最終的な勧告内容をすでに念頭に置いていた。最終的な勧告内容と密接に関連する形で、質問を作成したのである。

2020年の日本審査に向けて、私たちがパラレルレポート作成を進めるうえでも、障害者の権利を守る条約の実施のために、どのような勧告を私たちが必要としているのかを常に意識して作業を進めることが肝心である。日本の審査に向けて、以下85段落から構成される台湾の総括所見(長瀬仮訳)が参考になれば幸いである。




■障害者権利条約中華民国(台湾)初回報告総括所見・国際審査委員会、2017年11月3日

T. 序論

  1. 2014年8月、中華民国(台湾)の立法院は、障害者の権利に関する条約の施行法を可決した。施行法は2014年12月に発効し、障害者権利条約の国内調和の枠組みを提供する。
  2. 行政院は、施行法に基づき、2016年12月に国家報告を提出し、その英語版を2017年3月に公開した。台湾政府は、初回国家報告を検討するため、国際的専門家を招聘し、国際審査委員会を設置した。ダイアン・キングストン(英国)、長瀬修(日本:委員長)、アドルフ・ラツカ(スウェーデン)、ダイアン・リッチラー(カナダ)、マイケル・アシュリー・スタイン(米国)である。メンバー全員が障害者の権利の専門家とみなされている。
  3. 国際審査委員会は台湾の初回報告を検討し、2017年7月24日に事前質問事項を提出した。国際審査委員会は、障害者組織を含む市民社会組織からパラレルレポートと事前質問事項向けの質問案の形式で情報を受け取った。政府は2017年9月8日に事前質問事項への詳細な回答を提出した。国際審査委員会は、国からの回答に関して、障害者の代表組織からのものを含め、市民社会から多数のインプットを得た。
  4. 双方向の対話を含む審査は、台北のNTUH(国立台湾大学医学院附属病院)国際会議場で、2017年10月30日から11月1日まで開催された。国際審査委員会は、この総括所見を採択し、2017年11月3日に発表した。
  5. 国際審査委員会は、障害者権利条約を台湾において実現するための真剣かつ誠実な努力を行っている台湾の政府および人々に深い感謝を表明する。多くの政府当局者が出席したこの審査における政府との建設的対話は、障害者権利条約を完全に実施するという政府の決意を証明した。市民社会、特に障害者とその代表組織の積極的な参加は、第4条3および第33条3に不可欠であると共に両項に則ったものであり、継続的実施が成功するために必要である。
  6. 国際審査委員会は、国際審査委員会に内容的と運営面での支援を提供した保健福祉省、特に障害者権利条約チームに感謝の意を表す。

II. 肯定的側面

  1. 国際審査委員会は、国に関して、以下を評価する。

III. 主要な懸念分野と勧告

A. 一般原則と一般的義務(第1条−4条)

  1. 国際審査委員会は、侮蔑的な用語や侮蔑的な言葉の一部の変更にもかかわらず、国の法律は主に、障害者を権利保有者ではなく保護の必要性がある人と認識していることを懸念する。
  2. 国際審査委員会は、障害者をすべての人権と基本的自由の完全な保有者として認識するパラダイムシフトを可能にするために、国が法律、政策、慣行における用語とアプローチの見直しを迅速に行い、そうした見直しの完了までの予定表を提供することを勧告する。
  3. 国際審査委員会は、国が世界保健機構の機能、障害および健康に関する国際分類(ICF)を用いて障害を判定するための医学的アプローチを利用し、固有の個人的または医療的機能障害から生じる状態に焦点を当てていることを懸念する。国は障壁としての環境要因を見過ごし、障害者権利条約における、発展する概念としての障害を認識することができていない。それは事前質問事項への回答において変化への抵抗が示されていることによってもさらに明らかである。
  4. 国際審査委員会は、すべての障害者の人間としての尊厳と、他者との平等を基礎とした社会への十分かつ効果的な参加を妨げるさまざまな障壁との相互作用を強調する、障害の人権モデルの概念を国の法律で導入することを国に勧告する。
  5. 国際審査委員会は、ユニバーサルデザインの意味と適用に関する法的定義と理解の欠如を懸念する。
  6. 国際審査委員会は、国が法律の改正を行い、ユニバーサルデザインの定義と、教育、保健、交通、司法手続の利用の機会、建築環境(公的および私的)のような分野でのユニバーサルデザインに関する規制方法を法律に含むことを勧告する。
  7. 国際審査委員会は、国が、すべての法律、政策および慣行において、障害者権利条約第3条に定められた原則の効果的な実現を確保するための十分な措置を講じていないことを懸念する。
  8. 国際審査委員会は既存の政策と慣行の修正や改革を含む形での障害者権利条約第3条の包括的な実現と適用を確保するための法的枠組みの確立を国に勧告する。
  9. 国際審査委員会は、法律の起草に関して障害者組織との協議が欠如していることと、障害者の全国組織と地方組織に対する国の条件付きでない支援の水準について懸念する。
  10. 国際審査委員会は、障害者およびその代表組織が地域レベルおよび国レベルで効果的に参加するための公式のメカニズムを国が確立することを勧告する。効果的な参加には、家族を基盤とする組織、女性、子ども、先住民およびその他の周辺化されている障害者の組織が含まれ、すべての障害種別が含まれていなければならない。国は、自律と自己決定を確実にするために、生活に関係する決定に影響を及ぼす法律、公共政策、予算策定、行動計画の設計、実施、監視において、障害者組織と有意義な協議を行わなければならない。
  11. 国際審査委員会は、「アクセシビリティ」および「合理的配慮」という用語を含め、障害者権利条約の中国語繁体字への翻訳が不適切であることを懸念する。
  12. 国際審査委員会は、国が「アクセシビリティ」および「合理的配慮」という用語をはじめとする障害者権利条約の翻訳を更新することを勧告する。
  13. 国際審査委員会は、障害者権利条約の義務を地方自治体および地方の行政機関に移譲する計画および/または約束の欠如を懸念する。
  14. 国際審査委員会は、障害者権利条約の規定が国のすべての地域で制限または例外なしに尊重されていることを確保するために、国が地方自治体と地方行政機関に障害者権利条約の義務を移譲する計画の策定を勧告する。

B. 個別の権利(第5条-30条)

平等及び無差別(第5条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
障害のある女子(第6条)
  1. 国際審査委員会は、障害のある女性や少女(特に交差する形態のアイデンティティを持つ)の権利を促進するための計画(積極的差別是正措置を含む)の不足を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、国が女性障害者の権利を促進し、生活のすべての面で差別を排除するための積極的差別是正措置を含む効果的なプログラムを企画し実施することを勧告する。
  3. 国際審査委員会は、国の男女共同参画政策ガイドラインにおける女性障害者の権利を保護する包括的な規定の欠如を懸念する。
  4. 国際審査委員会は、ジェンダー平等政策ガイドラインを改正し、障害のある女性と女児のすべての必要を他の人との平等を基礎に完全に満たす条項を組み入れることと、ジェンダー平等政策ガイドラインを国連障害者権利委員会による一般的意見第3号に沿ったものにすることを国に勧告する。
障害のある児童(第7条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
意識の向上(第8条)
  1. 国際審査委員会は、
  2. 国際審査委員会は、国に以下を勧告する。
施設及びサービス等の利用の容易さ(第9条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は国に以下を勧告する。
生命に対する権利(第10条)
  1. 市民的及び政治的権利に関する国際規約と経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の第2回審査の勧告(2017年1月20日)に沿って、国際審査委員会は、国が死刑を廃止していないことに懸念を抱く。国際審査委員会はまた、心理社会的および/または知的障害(精神疾患〔ママ〕)の人の死刑執行を防止する明白な手続保護の欠如を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、国が死刑を廃止することを勧告し、廃止前においては、法務部が死刑執行のためのガイドラインに明確な条項を定め、心理社会的および/または知的障害の人に対して死刑が執行されないようにすることを勧告する。
危険な状況及び人道上の緊急事態(第11条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は国に以下を勧告する。
法律の前にひとしく認められる権利(第12条)
  1. 国際審査委員会は、国連の障害者委員会が一般的意見第1号の解釈に従って、国内法を障害者権利条約第12条に国が調和させていないことを懸念する。これらの国内法の中には、民法、信託法、および関連するすべての法律が含まれる。国際審査委員会は、後見制度の下に置かれた障害者が、自分の意志、選好または自律を表現するための法的能力を否定されるという広範に見られる状況にとりわけ着目する。そのような状況には、婚姻、選挙権、公共サービス、不動産の処分、金融サービスの利用、雇用、不妊・断種を含む医療手続きへのインフォームドコンセントが含まれるが、これらに限定されない。国際審査委員会はさらに、国が法的能力と意思決定能力の概念を混同していることを懸念する。
  2. 国際審査委員会は、国が関連するすべての法律、政策、手続を修正し、適切な資源の提供を含む、国連障害者権利委員会一般的意見第1号に準拠した、支援付き意思決定制度を導入することを勧告する。法的能力と意思決定能力は別個の概念である。国際審査委員会は、以下の概念に基づいて、裁判官を含むすべての公務員の訓練を勧告する。法的能力は、権利と義務(法的地位)を保持し、その権利と義務(法的主体性)を行使する能力である。意思決定能力とは、人間の意思決定スキルを指す。人間の意思決定スキルは、人によって異なり、環境や社会的要因を含む多くの要因に左右される。
司法手続の利用の機会(第13条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
身体の自由及び安全(第14条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由(第15条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
搾取、暴力及び虐待からの自由(第16条)
  1. 国際審査委員会はジェンダーに基づく暴力の広がりと、第16条(1)に沿った適切な監視制度を国が導入していないを懸念する。
  2. 国際審査委員会は国が関連するすべての法律および政策を修正し、あらゆる形態の搾取、暴力および虐待に対処する監視システムを確立することを勧告する。さらに、国は暴力の問題や関連する報告に関して、法執行機関、司法官、ソーシャルワーカー、医療従事者、教師の研修努力の強化を勧告する。さらに、国家が、ジェンダー平等に関するすべての関係者に研修を行い、援助と保護のための資源を開発する努力を増加させることを勧告する。
個人をそのままの状態で保護する(第17条)
  1. 国際審査委員会は、優生保健法と精神保健法が障害者の強制的な中絶と不妊手術を認めていることを懸念し、女児・女性障害者、特に知的障害や精神障害の女児・女性への影響に留意する。
  2. 国際審査委員会は、国が優生保健法と精神保健法を改正し、障害者に対する強制的医療処置を防止するために、自由に受け入れられた意思決定と法的代理人を含む、法的、手続的、社会的保護が整備されるように勧告する。
移動の自由及び国籍についての権利(第18条)
  1. 国際審査委員会は、障害者およびその家族による台湾への入国および市民権に関する制限があることを懸念する。
  2. 国際審査委員会は、障害者およびその家族の移動の権利、自由、市民権の取得を制限するすべての法律および条項を国が廃止することを勧告する。
自立した生活及び地域社会への包容(第19条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
個人の移動を容易にする(第20条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(第21条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
プライバシーの尊重(第22条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
家庭及び家族の尊重(第23条)
  1. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を勧告する。
教育(第24条)
  1. 国際審査委員会は、あらゆる段階における障害者を包容する教育制度(インクルーシブ教育システム)を確保するという意思を国が表明していないことに懸念を表明する。国は、障害者権利委員会一般的意見第4号で提起された、完全に包容的(インクルーシブ)とするための課題、そして、特に排除、分離、統合、および包容(インクルージョン)の違いの識別ができていない。同様に、国は「包容的で質の高い教育」を求める持続可能な発展目標の目標4の含意については言及していない。
健康(第25条)
  1. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
  2. 国際審査委員会は、以下を懸念する。
  3. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
ハビリテーション(適応のための技能の習得)及びリハビリテーション(第26条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
労働及び雇用(第27条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
相当な生活水準及び社会的な保障(第28条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
政治的及び公的活動への参加(第29条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を勧告する。
文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加(第30条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。

C. 特定の義務(第31−33条)

統計及び資料の収集(第31条)
  1. 国際審査委員会は、国勢調査、全国世帯調査、およびデータの分類を含むがこれに限定されない、障害者に関するすべての形態のデータの収集に国が使用している方法に懸念している。現在利用されている方法は、人権に基づくアプローチに従わず、障壁の除去を基準の一部として反映していない。
  2. 国際審査委員会は、障害者権利条約の実施について正確な情報を提供するために、健康、教育、雇用、政治参加、司法へのアクセス、社会保障、暴力、農村人口をはじめ、あらゆる部門にわたるデータを体系的に収集すると共に、人権に基づく指標を開発することを勧告する。
国際協力(第32条)
  1. 国際審査委員会は、国が2030アジェンダを実施するための努力を含め、すべての国際協力活動において障害者の権利を促進するための横断的な政策を欠いていることを懸念している。
  2. 国際審査委員会は、国があらゆる国際協力活動において障害者の権利を促進するための横断的政策を策定することを勧告する。また、国がアジェンダ2030と持続可能な開発目標の実施を目指すすべての努力において、障害者の権利の視点の採用を確保することを勧告する。
国内における実施及び監視(第33条)
  1. 国際審査委員会は以下を懸念する。
  2. 国際審査委員会は以下を国に勧告する。

W. フォローアップと議論

  1. 国際審査委員会は、障害者権利条約の第35条(2)に基づき12ヶ月以内に、第23(b)項および第81項(c)に記載された国際審査委員会の勧告を実施するために行われた措置に関する情報を公に広報するよう求める。
  2. 国際審査委員会は、本総括所見に含まれる国際審査委員会の勧告を実施するよう国に要請する。国は、国や地方政府、立法府に属する者、関係省庁、地方当局の職員、教育、医療、法律専門家などの関連する専門家集団のメンバーにも、検討と行動のために配布することを推奨する。メディアにも、現代的なソーシャルコミュニケーション戦略を使用することを推奨する。
  3. 国際審査委員会は、市民社会、特に障害者組織を定期報告書の作成に関与させることを国家に強く推奨する。
  4. 国際審査委員会は、本総括所見を広範に周知するよう国に要請する。特に非政府組織および障害者の代表組織ならびに障害者自身および家族の構成員に対して、台湾手話言語を含む、国語および少数民族言語とアクセシブルな形式を通じて、また、人権に関する政府のウェブサイトで利用できるようにすることを通じて周知するよう要請する。


*作成:小川 浩史
UP: 20181114 REV: 20181116
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