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■障害者権利条約中華民国 (台湾) 初回報告総括所見
解説・仮訳 長瀬修
台湾を統治する中華民国政府は国連を1971年に脱退しているため、障害者権利条約の通常の批准手続きや、障害者権利委員会による審査を受けられない。そのため、国内法で独自に障害者権利条約を2014年に「批准」し、実施を進め、その一環としての国際審査を2017年秋に台北で実施した。同政府に委嘱された国際審査委員会メンバーはアドルフ・ラツカ(スウェーデン)、ダイアン・キングストン(英国)、ダイアン・リッチラー(カナダ)、マイケル・スタイン(米国)、長瀬修(日本)である。全員が個人の資格で参加した。互選によって私は委員長を務めた。国連の障害者権利委員会においても、審査の中心的役割を果たす国別報告者(country rapporteur)は、近隣の国の委員が務めることが多い。実際、漢字を読めることは、政府訳で「優生保健法」の「優生」が正確に訳されていないことを第17条関係等で指摘する際に役立った。
審査に当たっては、障害者組織をはじめとする市民社会からのパラレルレポートの情報が重要であり、事前質問事項の作成においても、非常に有用であった。そして私たちが事前質問事項を作成する際には、最終的な勧告内容をすでに念頭に置いていた。最終的な勧告内容と密接に関連する形で、質問を作成したのである。
2020年の日本審査に向けて、私たちがパラレルレポート作成を進めるうえでも、障害者の権利を守る条約の実施のために、どのような勧告を私たちが必要としているのかを常に意識して作業を進めることが肝心である。日本の審査に向けて、以下85段落から構成される台湾の総括所見(長瀬仮訳)が参考になれば幸いである。
■障害者権利条約中華民国(台湾)初回報告総括所見・国際審査委員会、2017年11月3日
T. 序論
- 2014年8月、中華民国(台湾)の立法院は、障害者の権利に関する条約の施行法を可決した。施行法は2014年12月に発効し、障害者権利条約の国内調和の枠組みを提供する。
- 行政院は、施行法に基づき、2016年12月に国家報告を提出し、その英語版を2017年3月に公開した。台湾政府は、初回国家報告を検討するため、国際的専門家を招聘し、国際審査委員会を設置した。ダイアン・キングストン(英国)、長瀬修(日本:委員長)、アドルフ・ラツカ(スウェーデン)、ダイアン・リッチラー(カナダ)、マイケル・アシュリー・スタイン(米国)である。メンバー全員が障害者の権利の専門家とみなされている。
- 国際審査委員会は台湾の初回報告を検討し、2017年7月24日に事前質問事項を提出した。国際審査委員会は、障害者組織を含む市民社会組織からパラレルレポートと事前質問事項向けの質問案の形式で情報を受け取った。政府は2017年9月8日に事前質問事項への詳細な回答を提出した。国際審査委員会は、国からの回答に関して、障害者の代表組織からのものを含め、市民社会から多数のインプットを得た。
- 双方向の対話を含む審査は、台北のNTUH(国立台湾大学医学院附属病院)国際会議場で、2017年10月30日から11月1日まで開催された。国際審査委員会は、この総括所見を採択し、2017年11月3日に発表した。
- 国際審査委員会は、障害者権利条約を台湾において実現するための真剣かつ誠実な努力を行っている台湾の政府および人々に深い感謝を表明する。多くの政府当局者が出席したこの審査における政府との建設的対話は、障害者権利条約を完全に実施するという政府の決意を証明した。市民社会、特に障害者とその代表組織の積極的な参加は、第4条3および第33条3に不可欠であると共に両項に則ったものであり、継続的実施が成功するために必要である。
- 国際審査委員会は、国際審査委員会に内容的と運営面での支援を提供した保健福祉省、特に障害者権利条約チームに感謝の意を表す。
II. 肯定的側面
- 国際審査委員会は、国に関して、以下を評価する。
- a) 障害者権利条約及びその他の人権条約の国際審査過程に自主的に参加する決定。
- b) 障害者の権利に関するキャンペーンを実施し、意識を高めるための初期的措置を講じ、障害者権利条約に違反する分野の把握を開始していること。
- c) 台北市の地下鉄(MRT)など都市部での物理的なアクセシビリティを提供するための初期的措置を講じていること。
- d) 障害者権利条約を実施するための法律、規則及び行政措置の見直しのための標準運用手続の確立。
III. 主要な懸念分野と勧告
A. 一般原則と一般的義務(第1条−4条)
- 国際審査委員会は、侮蔑的な用語や侮蔑的な言葉の一部の変更にもかかわらず、国の法律は主に、障害者を権利保有者ではなく保護の必要性がある人と認識していることを懸念する。
- 国際審査委員会は、障害者をすべての人権と基本的自由の完全な保有者として認識するパラダイムシフトを可能にするために、国が法律、政策、慣行における用語とアプローチの見直しを迅速に行い、そうした見直しの完了までの予定表を提供することを勧告する。
- 国際審査委員会は、国が世界保健機構の機能、障害および健康に関する国際分類(ICF)を用いて障害を判定するための医学的アプローチを利用し、固有の個人的または医療的機能障害から生じる状態に焦点を当てていることを懸念する。国は障壁としての環境要因を見過ごし、障害者権利条約における、発展する概念としての障害を認識することができていない。それは事前質問事項への回答において変化への抵抗が示されていることによってもさらに明らかである。
- 国際審査委員会は、すべての障害者の人間としての尊厳と、他者との平等を基礎とした社会への十分かつ効果的な参加を妨げるさまざまな障壁との相互作用を強調する、障害の人権モデルの概念を国の法律で導入することを国に勧告する。
- 国際審査委員会は、ユニバーサルデザインの意味と適用に関する法的定義と理解の欠如を懸念する。
- 国際審査委員会は、国が法律の改正を行い、ユニバーサルデザインの定義と、教育、保健、交通、司法手続の利用の機会、建築環境(公的および私的)のような分野でのユニバーサルデザインに関する規制方法を法律に含むことを勧告する。
- 国際審査委員会は、国が、すべての法律、政策および慣行において、障害者権利条約第3条に定められた原則の効果的な実現を確保するための十分な措置を講じていないことを懸念する。
- 国際審査委員会は既存の政策と慣行の修正や改革を含む形での障害者権利条約第3条の包括的な実現と適用を確保するための法的枠組みの確立を国に勧告する。
- 国際審査委員会は、法律の起草に関して障害者組織との協議が欠如していることと、障害者の全国組織と地方組織に対する国の条件付きでない支援の水準について懸念する。
- 国際審査委員会は、障害者およびその代表組織が地域レベルおよび国レベルで効果的に参加するための公式のメカニズムを国が確立することを勧告する。効果的な参加には、家族を基盤とする組織、女性、子ども、先住民およびその他の周辺化されている障害者の組織が含まれ、すべての障害種別が含まれていなければならない。国は、自律と自己決定を確実にするために、生活に関係する決定に影響を及ぼす法律、公共政策、予算策定、行動計画の設計、実施、監視において、障害者組織と有意義な協議を行わなければならない。
- 国際審査委員会は、「アクセシビリティ」および「合理的配慮」という用語を含め、障害者権利条約の中国語繁体字への翻訳が不適切であることを懸念する。
- 国際審査委員会は、国が「アクセシビリティ」および「合理的配慮」という用語をはじめとする障害者権利条約の翻訳を更新することを勧告する。
- 国際審査委員会は、障害者権利条約の義務を地方自治体および地方の行政機関に移譲する計画および/または約束の欠如を懸念する。
- 国際審査委員会は、障害者権利条約の規定が国のすべての地域で制限または例外なしに尊重されていることを確保するために、国が地方自治体と地方行政機関に障害者権利条約の義務を移譲する計画の策定を勧告する。
B. 個別の権利(第5条-30条)
平等及び無差別(第5条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- a) 現在の障害法は、実質的平等を確保するための国の積極的な義務を適切に定めていない。
- b) 国は、合理的配慮を明示的に定義していない、さらに合理的配慮の否定が差別を構成すると法的に定義されていないことを事前質問事項への回答で確認している。
- c) 障害法の遵守を監視するための独立した仕組みがない。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- a) 障害に基づく差別を禁止する法律を制定し、複合的で交差性のアイデンティティを持つ個人を含むすべての障害者の実質的平等を確保する。
- b) 障害者権利条約第2条に沿って、すべての分野における合理的配慮の原則を国内法令と規則に定めるとともに、合理的配慮の拒否が差別の一形態であるという法的認知を確保すると共に、公的および民間セクターにおけるその適用を確保する。
- c) 障害者が救済と適切な補償を求めることを可能にすることを含め、障害関連の法令遵守のすべての側面を監視する効果的な仕組みを確立する。
障害のある女子(第6条)
- 国際審査委員会は、障害のある女性や少女(特に交差する形態のアイデンティティを持つ)の権利を促進するための計画(積極的差別是正措置を含む)の不足を懸念する。
- 国際審査委員会は、国が女性障害者の権利を促進し、生活のすべての面で差別を排除するための積極的差別是正措置を含む効果的なプログラムを企画し実施することを勧告する。
- 国際審査委員会は、国の男女共同参画政策ガイドラインにおける女性障害者の権利を保護する包括的な規定の欠如を懸念する。
- 国際審査委員会は、ジェンダー平等政策ガイドラインを改正し、障害のある女性と女児のすべての必要を他の人との平等を基礎に完全に満たす条項を組み入れることと、ジェンダー平等政策ガイドラインを国連障害者権利委員会による一般的意見第3号に沿ったものにすることを国に勧告する。
障害のある児童(第7条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- a) 包括的な早期療育制度がない。
- b) 障害児の性的虐待は、分離された特別学校で広く報告されており、その対応が遅い、もしくはない。特に知的障害を持つ子どもの場合にそうである。
- c) 障害のある児童の資源の利用可能性には、都市と農村の環境の間に相違がある。
- d) 特定のニーズを持つ子供は、医療的緊急事態に対応する訓練されたスタッフが不足しているため学校に通うことができない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- a) 障害児の多分野にまたがる報告と紹介と、障害児とその家族に対する支援の調整両方のための早期介入の包括的なシステムを確立する。
- b) 障害児の性的虐待の調査、対応、救済措置を講じる。
- c) 農村部と都市部の家族が利用できる資源の区別をなくす。
- d) 特定のニーズ(てんかん等)を持つ子供が直面する緊急事態に対応できるように学校の職員を養成し、こうした子どもが学校生活のすべての側面に参加できるようにする。
意識の向上(第8条)
- 国際審査委員会は、
- (a) 障害者の否定的な画一的見方(ステレオタイプ)とマスメディアにおける差別的言語が存続していることを懸念する。
- (b) 国の公立教育とメディアプログラムが有害な画一的見方(ステレオタイプ)に取り組んでいないし、そのようなプログラムの影響に対処もしていないという懸念を表明する。
- 国際審査委員会は、国に以下を勧告する。
- (a) あらゆる分野の障害者に関する差別的かつ軽蔑的な言葉を排除する。
- (b) 障害者への否定的な画一的見方を具体的に対象とした、公衆の意識啓発プログラムを開発し、実施する。さらに、マスコミ、司法制度をはじめとする公務員、警察、法執行部門、保健・社会サービス、教育、一般市民などの研修を、障害者組織との緊密な連携の下で実施し、その影響評価を実施する。
施設及びサービス等の利用の容易さ(第9条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 国によるアクセシビリティのための現行の法律および施行措置がその場しのぎのものであり、国におけるアクセシビリティの欠如に適切に対処していない。
- (b) オンラインバンキングおよびモバイルアプリケーションが、障害者、特に視覚障害者には利用可能でない。
- 国際審査委員会は国に以下を勧告する。
- (a) 事務所、職場、インフラストラクチャー、歩行者環境、タクシーを含む公共交通機関に関する都市部および地方部の公的および民間部門にわたる統一されたアクセシビリティの実施のために、遵守がない場合の罰則、予定表、および予算を含む、一貫した基準、監視および実施の仕組みを備えた包括的な行動計画を作成する。この計画の実施は、障害者と、その代表組織を含む独立機関によって定期的に評価され、改訂されなければならない。
- (b) 金融監督管理委員会を通じて、そして障害者およびその代表組織と緊密に協力して、公衆に提供されるすべての金融サービスの利用容易化を促進するためのより効果的な実施方法を導入する。
生命に対する権利(第10条)
- 市民的及び政治的権利に関する国際規約と経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の第2回審査の勧告(2017年1月20日)に沿って、国際審査委員会は、国が死刑を廃止していないことに懸念を抱く。国際審査委員会はまた、心理社会的および/または知的障害(精神疾患〔ママ〕)の人の死刑執行を防止する明白な手続保護の欠如を懸念する。
- 国際審査委員会は、国が死刑を廃止することを勧告し、廃止前においては、法務部が死刑執行のためのガイドラインに明確な条項を定め、心理社会的および/または知的障害の人に対して死刑が執行されないようにすることを勧告する。
危険な状況及び人道上の緊急事態(第11条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 防災計画の設計、実施、評価への障害者およびその代表組織の体系的関与と参加の欠如。
- (b) 防災計画に関して、特に知的障害および/または精神障害(心理社会的障害)を有する人、女性、子供および先住民およびろう者および盲ろう者の視点の欠如。
- (c) 自然災害に関する関係機関間の災害情報および対応に関する責任の断片化。(d)人命支援に不可欠な緊急電力供給が保証されていない災害時における、人工呼吸器及びその他の電源による生命維持装置を使用する者の安全。
- 国際審査委員会は国に以下を勧告する。
- (a) 通信目的のアクセシブルな技術の使用を含む防災対策の設計、実施および評価に、障害者およびその代表組織の体系的関与および参加を確保する。
- (b) 防災対策に関して障害のある女性、子供、先住民、特に知的障害および/または精神障害(心理社会的障害)を有する人々、およびろう者および盲ろう者の視点を反映する。
- (c) 仙台防災枠組み2015-2030の枠組みに従って、災害報告や政府と地方自治体との間の調整などの対応調整などを通じて、災害リスク管理のための災害リスクガバナンスを強化する。
- (d) 中央および地方災害救援計画に生命維持装置用の緊急電力供給システム(生命維持装置の使用者のリストの作成、小型発電機および燃料の供給を含む)を含める。
法律の前にひとしく認められる権利(第12条)
- 国際審査委員会は、国連の障害者委員会が一般的意見第1号の解釈に従って、国内法を障害者権利条約第12条に国が調和させていないことを懸念する。これらの国内法の中には、民法、信託法、および関連するすべての法律が含まれる。国際審査委員会は、後見制度の下に置かれた障害者が、自分の意志、選好または自律を表現するための法的能力を否定されるという広範に見られる状況にとりわけ着目する。そのような状況には、婚姻、選挙権、公共サービス、不動産の処分、金融サービスの利用、雇用、不妊・断種を含む医療手続きへのインフォームドコンセントが含まれるが、これらに限定されない。国際審査委員会はさらに、国が法的能力と意思決定能力の概念を混同していることを懸念する。
- 国際審査委員会は、国が関連するすべての法律、政策、手続を修正し、適切な資源の提供を含む、国連障害者権利委員会一般的意見第1号に準拠した、支援付き意思決定制度を導入することを勧告する。法的能力と意思決定能力は別個の概念である。国際審査委員会は、以下の概念に基づいて、裁判官を含むすべての公務員の訓練を勧告する。法的能力は、権利と義務(法的地位)を保持し、その権利と義務(法的主体性)を行使する能力である。意思決定能力とは、人間の意思決定スキルを指す。人間の意思決定スキルは、人によって異なり、環境や社会的要因を含む多くの要因に左右される。
司法手続の利用の機会(第13条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 国が、刑事および民事司法制度のすべてのやりとりにおいて、障害者に対して適切な措置および保護手段をまだ提供していない。
- (b) 性的暴力を受けた者に関して、刑事および民事司法制度双方とのやりとりにおいて、措置および保障措置が不十分である。
- (c) 司法制度が年齢に応じた、もしくは手続面の配慮を提供していない。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- (a) 障害者の人権に関する裁判官、警察官、刑務所職員の義務的訓練を含む、刑事および民事司法制度への平等なアクセスを確保する施策を開発し、実施すると共に、そうした施策に適切に資源を提供する。
- (b) 刑事司法制度と民事司法制度の両方で働くすべての職員を対象とするセックスとジェンダーに関する研修を含む、性的暴力を受けた人の平等なアクセスと保護を確保するための施策を開発し、実施すると共に、そうした施策に適切に資源を提供する。
- (c) 以下をはじめとする施策を実施する。
- 情報の利用と伝達のためのアクセス可能なフォーマットと代替フォーマットの使用、
- 手話通訳
- 支援付き意思決定
- 適切な調整を提供するための司法制度内での障害児の年齢に応じた支援
身体の自由及び安全(第14条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 精神保健法の内容と適用、具体的には現行の強制収容と治療の体制が障害者の人権を全面的に侵害している。精神保健法は、現在、医療機関施設および地域社会における障害者の恣意的かつ強制的な拘禁を認めている一方、そのような拘束の行政的見直しにアクセスするための手続きには不十分なセーフガードしか提供されていない。
- (b) ケア、治療または拘束の必要性が疑われる障害者が危険性の認知に基づいて自由を剥奪されている。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- (a) 障害に基づいた非自発的拘禁が禁止され、個人の自由なインフォームドコンセントの確保をはじめとする法的扶助への即時的アクセスを含む手続上のセーフガードの仕組みが確保されるよう、精神保健法を含むすべての関連法律および政策を修正する。
- (b) 障害者権利条約第3条(a)の原則である自ら選択する自由を守り、実際のまたは認知された障害に基づく自由の剥奪を絶対的に禁止する。
拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由(第15条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 国が、障害者が医療処置および治療に関して、完全なインフォームドコンセントのもとで、決定を下すための適切な支援を受けることを確保するための措置をまだ講じていない。
- (b) 特定の生活施設にいる障害者が、トイレ援助の代わりにおむつ使用を強制されるなど、品位を傷つける非人道的な扱いにさらされている。
- (c) 障害を持つ受刑者は、国の監督下で拘禁されている間、合理的配慮が確保されていない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- (a) 障害者が医学的手続きや治療に関して完全なインフォームドコンセントのもとで、意思決定を下すための適切な支援を受けるための施策を開発し、実施すると共に、そうした施策に適切に資源を提供する。
- (b) 抜き打ちの検査を含む、特定の生活施設の条件の定期的な検査を確保する。(c)障害を持つ受刑者が国の監督下で拘束されている間、合理的配慮の提供を確保するための施策を開発し、実施すると共に、そうした施策に適切に資源を提供する。
搾取、暴力及び虐待からの自由(第16条)
- 国際審査委員会はジェンダーに基づく暴力の広がりと、第16条(1)に沿った適切な監視制度を国が導入していないを懸念する。
- 国際審査委員会は国が関連するすべての法律および政策を修正し、あらゆる形態の搾取、暴力および虐待に対処する監視システムを確立することを勧告する。さらに、国は暴力の問題や関連する報告に関して、法執行機関、司法官、ソーシャルワーカー、医療従事者、教師の研修努力の強化を勧告する。さらに、国家が、ジェンダー平等に関するすべての関係者に研修を行い、援助と保護のための資源を開発する努力を増加させることを勧告する。
個人をそのままの状態で保護する(第17条)
- 国際審査委員会は、優生保健法と精神保健法が障害者の強制的な中絶と不妊手術を認めていることを懸念し、女児・女性障害者、特に知的障害や精神障害の女児・女性への影響に留意する。
- 国際審査委員会は、国が優生保健法と精神保健法を改正し、障害者に対する強制的医療処置を防止するために、自由に受け入れられた意思決定と法的代理人を含む、法的、手続的、社会的保護が整備されるように勧告する。
移動の自由及び国籍についての権利(第18条)
- 国際審査委員会は、障害者およびその家族による台湾への入国および市民権に関する制限があることを懸念する。
- 国際審査委員会は、障害者およびその家族の移動の権利、自由、市民権の取得を制限するすべての法律および条項を国が廃止することを勧告する。
自立した生活及び地域社会への包容(第19条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 障害者が、他の者と平等に地域社会で生活し、地域社会に包容され、地域社会に積極的に参加する権利を拒否されている。さらに、施設収容の率が高く、家族への依存度が高いからことから、個人が居住地の選択を拒否され、特定の生活施設への入所が強制されている。
- (b) 障害者が、日常生活動作への支援を含む地域社会に住んで積極的に参加するための十分な支援を受けておらず、したがって孤立し、隔離され、人間としての可能性を実現することを妨げられている。
- (c) 障害者へのパーソナルアシスタンスサービスの提供が、国連障害者権利委員会の一般的意見第5号を遵守していない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- (a) 入所施設やあらゆる規模の特定の生活施設を段階的に廃止するための期限を切った計画を策定する、地域社会の中で、どこで誰とどのように生活するかを選択する機会を確保する、あらゆる種類のコミュニティベースのサービスをサポートするための適切な資源増を含む、自立生活の促進。
- (b) 障害者が地域社会で生活し、地域社会に積極的に参加し、その孤立と隔離を防止するための十分な支援を提供するための期限を切った計画を策定する。(c)安定性、予測可能性、透明性を確保するために、個別の支援(パーソナルアシスタンス)予算を公的な国家予算に組み込む。個別の支援の提供には以下が含まれる:
- 個人のニーズ評価に基づき、日常生活動作における自立確保と、パーソナルアシスタンスの購入、そして自己負担なしに競争的な賃金で自分のパーソナルアシスタントの雇用に十分な、個人へのダイレクトペイメント
- 個々の要件、生活環境、選好に合うように、アシスタントの募集、訓練、監督に関して、必要に応じて支援付き意思決定も得て、当該個人によるサービスのカスタマイズ
- アシスタントが他のユーザーと共有されていない個人とアシスタントとの一対一の関係。障害者が他人への依存から解放され、完全な人間としての可能性を実現するためには、パーソナルアシスタンスは質と量が十分でなければならない。
個人の移動を容易にする(第20条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 多くの障害者が個人移動装置を含む支援技術の進歩の恩恵を受けていない。これは、1人あたりに付与される支援機器の数(2年間で4個)の制限に加えて、障害者、特に重複した全身性の障害者が自立して地域社会に参加する力に悪影響を及ぼす自己負担の義務から生じている。
- (b) てんかんの人が、運転免許証の申請資格がない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- a) すべての障害者に対して、収入および選択に応じて、負担可能な金額もしくは無料で、支援機器の提供、点検および調整を確保する。
- b) てんかんの人に運転免許証を発行するための規則を改正する。
表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(第21条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 台湾手話言語とろう文化の促進を通じた、ろう者の独自の文化的、言語的同一性に対する認識と支援の欠如
- (b) すべての政府文書および情報、公的および私的なウェブサイト、ニュース放送、緊急事態と災害に関する情報および情報を含む、情報通信技術(ICT)、点字、台湾手話言語、読みやすいフォーマット、デジタル通信へのアクセスの欠如
- (c) 障害者権利条約が読みやすいフォーマットにも、台湾手話言語にも翻訳されていない。
- (d) 特定の生活施設にいる障害者が、そうした特定の生活施設外にいる個人と自由にコミュニケーションできない。
- (e) 台湾手話言語が、ろう児に早期に導入されていない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- (a) 台湾手話言語を公用語として認知し、公的サービス分野での台湾手話言語通訳者の専門的な訓練と雇用に十分な資金を配分し、十分な数の台湾手話言語通訳者を訓練するように設定し、ろう生徒と聴生徒の両方が学校カリキュラムの選択言語として台湾手話言語を学べるようにする。
- (b) すべての種類の障害に適したあらゆる形式と技術でのアクセスを促進するために、すべての公的および私的情報および通信へのアクセスに関する法律を施行するために必要な措置を採択し、講じる。
- (c) 知的障害者と協力して障害者権利条約を読みやすい形式に翻訳し、ろう者社会と協力して台湾手話言語に翻訳する
- (d) 特定の生活施設にいる障害者が、そうした特定の生活施設外にいる個人と自由にコミュニケーションできることを確保する。
- (e) ろう児およびその両親に十分早く台湾手話言語を導入する。
プライバシーの尊重(第22条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 監察院を含む五院(訳注:5権分立の考え方に基づく、立法院、司法院、行政院、考試院、監察院の五院)それぞれにおいて、障害者のプライバシーの保護に関する一般的な意識の欠如。
- (b) 個人情報保護法に基づく障害者のプライバシー保護の欠如、特に、異なる省庁間での個人情報の恣意的な共有。
- (c) 精神障害者のプライバシーを守る精神保健法第24条の執行が不十分であり、その結果、彼らの治療歴が報道機関を含むパブリックドメインで開示されている。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- (a) 国全体と監察院を含む五院それぞれにおいて、障害者のプライバシーの保護に関する意識の向上。
- (b) 個人情報保護法を改正し、障害者のプライバシーを十分に確保するとともに、いかなる個人の情報の共有にも、障害者からの書面による同意の義務づけ。
- (c) 精神保健法第24条を厳格に実施し、治療履歴を含む精神障害者の個人のプライバシー保護。
家庭及び家族の尊重(第23条)
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 障害者の不妊手術の実態に関する実証的データが不足している。
- (b) 障害者、特にろう者または知的障害者のための性と生殖に関する保健教育が欠如している。
- (c) 障害者である親に適切な支援を提供しないため、そうした親の子供が家から引き離されている。
- 国際審査委員会は以下を勧告する。
- (a) 障害者の不妊手術の実態に関するデータを調査し、公表する。インフォームドコンセントの義務に関して医療従事者を教育する。
- (b) 障害者、特にろう者または知的障害者に性と生殖に関する健康教育を提供する。
- (c) 障害者である実親および養親が、両親としての役割を果たし、子供を育てることを確保するために適切な支援を提供する。障害者である親の権利と能力に関して社会サービスの専門家を教育する。
教育(第24条)
- 国際審査委員会は、あらゆる段階における障害者を包容する教育制度(インクルーシブ教育システム)を確保するという意思を国が表明していないことに懸念を表明する。国は、障害者権利委員会一般的意見第4号で提起された、完全に包容的(インクルーシブ)とするための課題、そして、特に排除、分離、統合、および包容(インクルージョン)の違いの識別ができていない。同様に、国は「包容的で質の高い教育」を求める持続可能な発展目標の目標4の含意については言及していない。
- (a) 国際審査委員会は障害者委員会一般的意見第4号に従うように教育制度を変革するための期限を区切った計画がないことに懸念を示す。
- (b) 国が普通学校の普通学級への障害生徒の参加を制限していることと、障害生徒の職業訓練および専門的訓練に制限を課していることに懸念を示す。
- (c) 障害生徒が自分の個別教育計画の策定とモニタリングに参加することを許可されていないことに懸念を示す。
- (d) 通常の教育施設における障害児・青少年・成人の教育が学生生活のすべての学問的および社会的側面におけるユニバーサルデザインの欠如、学習のためのユニバーサルデザイン、合理的配慮の欠如によって妨げられているという懸念を示す。
- (e) 自分の子供が学校に通うために必要な学校関連の支援を多くの家族が提供したり、負担したりしていることに懸念を示す。
- (f) 通常学級で障害生徒を支援するための教員研修の欠如に懸念を示す。
- (g) 教育システムにおける台湾手話言語の教育の欠如に懸念を表明する。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- (a) 障害者及び家族、そして両者を代表する組織と密接に協力して、通常教育と制度と特別教育制度の両方を徹底的に見直し、既存の制度を変革し、統合するための期間を区切った計画を策定することで、国連障害者委員会一般的意見4号に従う。
- (b) 職業訓練または専門的訓練の制限の撤廃を含め、障害生徒の通常学校での通常学級への参加権を直ちに認識する。
- (c) 障害生徒が第7条(障害のある児童)および第12条(法的能力)に則って、自らの個別教育計画の策定とモニタリングへの参加を可能にする。
- (d) 学生生活のすべての学問的および社会的側面におけるユニバーサルデザインの欠如、学習のためのユニバーサルデザイン、合理的配慮によって、通常の教育施設における障害児・青少年・成人の教育を確保する。
- (e) 障害児が学校に通い、効果的な教育を受けるために必要な個人向けの学校関連の支援を提供する。
- (f) 通常学級で障害生徒を支援するために教員養成課程および現任での研修を見直す。
- (g) 教育制度において、台湾手話言語を導入し、促進する。
健康(第25条)
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- (a) 障害者及び家族、そして両者を代表する組織と密接に協力して、通常教育と制度と特別教育制度の両方を徹底的に見直し、既存の制度を変革し、統合するための期間を区切った計画を策定することで、国連障害者委員会一般的意見4号に従う。
- (b) 職業訓練または専門的訓練の制限の撤廃を含め、障害生徒の通常学校での通常学級への参加権を直ちに認識する。
- (c) 障害生徒が第7条(障害のある児童)および第12条(法的能力)に則って、自らの個別教育計画の策定とモニタリングへの参加を可能にする。
- (d) 学生生活のすべての学問的および社会的側面におけるユニバーサルデザインの欠如、学習のためのユニバーサルデザイン、合理的配慮によって、通常の教育施設における障害児・青少年・成人の教育を確保する。
- (e) 障害児が学校に通い、効果的な教育を受けるために必要な個人向けの学校関連の支援を提供する。
- (f) 通常学級で障害生徒を支援するために教員養成課程および現任での研修を見直す。
- (g) 教育制度において、台湾手話言語を導入し、促進する。
- 国際審査委員会は、以下を懸念する。
- (a) 国は、台湾の農村部および都市部のさまざまな施設において、障害者に医療サービスへの平等なアクセスを提供していない。
- (b) 障害を持つ女性および少女は、国連障害者権利委員会一般的意見第3号によって義務付けられている、性的および生殖医療への平等なアクセスが不十分である。
- (c) 障害者は、医学的診断と治療に関するインフォームドコンセントの権利を否定されている。
- (d) 医療従事者を対象とする標準的な訓練コースに障害者への医療提供が含まれていない。
- (e) 保険会社は、障害者に対して、価格と保険範囲において差別している。
- (f) 国家監禁施設における障害を持つ囚人は、医療へのアクセスが不十分である。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- (a) すべての医学的診断および治療において、インクルーシブな設計および装置を、特に障害を持つ女性および少女に対して確保する。
- (b) 国連障害者権利委員会の一般的意見第3号に則って、障害のある女性および少女に性的および生殖医療サービスを提供する際の医療従事者の訓練を増やし、その感受性を高める。
- (c) 障害者が医学的診断と治療にインフォームドコンセントを与えることを確保する。
- (d) 標準医療訓練を改訂して、障害者に医療を提供する方法に関するモジュールを含むようにする。
- (e) 保険会社の料金体系および対象とする範囲を見直し、修正して、障害者が保険に平等にアクセスし、障害者の保険料の額を均等とする。
- (f) 国家拘禁施設において障害を持つ囚人による医療への平等なアクセスを確保すること。
ハビリテーション(適応のための技能の習得)及びリハビリテーション(第26条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 地方の障害者は、リハビリテーションサービスを利用するために個人的な費用で遠距離を旅行する必要がある。
- (b) 地方のすべての年齢の障害者のためのリハビリテーションサービスのためのピアサポートを含む支援策の欠如
- (c) 衛生福利部(保健福祉省)社会家庭局の「遅れのある児童のための地域医療と家庭ケア」の実施の遅れ
- (d) 障害を持つ囚人、特に注意欠陥障害(ADHD)を持つ囚人は、国による拘禁中にリハビリサービスを受けることができない
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- (a) 追加費用なしで、地方の障害者に適切なリハビリテーションサービスを提供する。
- (b) 郊外のすべての年齢の障害者に、仲間の支援を含むリハビリサービスのための適切な支援策を提供する。
- (c) パイロットプログラムを超えて、「遅れのある児童のための地域医療と家庭ケア」のすべての側面を直ちに実施する。
- (d) 国による拘禁施設にいる、障害を持つすべての囚人にリハビリテーションサービスを提供する。
労働及び雇用(第27条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- a) 障害者、特に女性の労働市場参加は、障害のない人よりも不平等に低い。
- b) 労働環境は、障害者に障壁をもたらしているが、国は、職場における合理的配慮の提供を義務付けていない。さらに、合理的配慮を誤って「合理的な空間の配置」と翻訳した。
- c) 障害者は雇用の準備として職業訓練を利用することができない。
- d) 障害を持つ労働者は、障害のない労働者よりもパートタイムまたは雇用機会で雇用されることが多く、専門的職業に従事する比率は低く、賃金は低い。
- e) 障害者は、労働市場における差別に挑戦するのに十分な法的救済策がない。
- f) 長期にわたり障害者雇用政策の中心である雇用率制度は効果がない。
- g) 作業所は、障害者の一般労働市場への移行を容易にしていない。
- h) 障害者は、所得制限のある障害年金を失う恐れがあるため雇用を求めない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- a) 障害者、特に女性の一般労働市場における雇用を促進するための手段を開発し、努力を強化し、十分な資源を配分する。
- b) 職場における合理的配慮の提供を義務付ける。さらに、障害者権利条約において合理的配慮を正確な翻訳に修正する。
- c) 障害者が雇用の準備として職業訓練を利用できるようにする。
- d) 労働市場の慣行を見直し、障害者に対する専門的職業、常勤の雇用、同一労働同一賃金への障壁を撤廃する。インターンシップ、実地体験、支援技術を含む補助金を得た職場調整、およびジョブコーチングなどの手段を通じて、障害を持つ学生および求職者の機会を増やす。
- e) 障害者の雇用の権利を実施すると共に、障害者の雇用権を実施するための市民社会による法的行動のための資源を提供する。
- f) 現行の雇用率制度を分析し、アファーマティブアクション計画を含む代替的選択肢を検討する。
- g) 作業所を段階的に廃止するとともに、作業所で雇用されている障害者の一般労働市場への移行を促進する計画を策定し、実施する。
- h) 所得制限のある障害年金によってもたらされている障害者の雇用への阻害要因を取り除く。
相当な生活水準及び社会的な保障(第28条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- a) 障害者は、一般人口よりも高い率で貧困に暮らしている。
- b) 現行の退職規定および労働保険法は、障害者の退職年金を減額、もしくは、障害者を退職年金の対象外としてしまっている。
- c) 勤労履歴のない障害者は、基本的な食費をカバーするには不十分な国民年金制度の障害年金のみの資格がある。
- d) アクセス可能な住宅は、主に社会住宅であり、公共および民間、新築および古い住宅ではない。さらに、現行の住宅法は、住宅にアクセスしやすくするための既存の住宅の改修を妨げている。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- a) 障害者が財政援助と補助金を得るための資格基準を、家族の収入から切り離すことを義務付ける。
- b) 障害者が退職年金の対象となるように現在の退職規定と労働保険法を改正する。
- c) 国民年金制度を改正し、勤労履歴のない障害者が地域社会における尊厳ある生活を保証するレベルの障害年金を受給できるようにする。
- d) 公共および民間部門において、アクセス可能で手ごろな価格の新しい住宅建設を優先する。既存の住宅をアクセス可能にするために建設補助金を増やすべきである。 公共または民間のすべての居住用新築でアクセシビリティを規定する拘束力のある規制が採用されるべきである。障害者や障害者世帯への実効的な家賃補助金を導入すべきである。アクセシブルにするための既存の住宅の改修を妨げている現行の住宅法の障壁は取り除かなければならない。
政治的及び公的活動への参加(第29条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 障害者の投票権は、後見制度の下に置かれた個人が投票権を行使することを禁じる選挙規則のために侵害されている。
- (b) 国は、障害を持つ候補者に立候補を奨励していない。さらに、国は、公職への立候補者と選挙で選ばれた障害者に関するデータを収集も保持もしていない。
- (c) 障害者の政治的及び公的な生活に平等に参加する権利は、投票前の適切で時宜を得た情報提供不足、アクセスできない投票場所、およびそのような障害者のための意思決定の支援がないことによって侵害されている。
- 国際審査委員会は以下を勧告する。
- (a) 障害者が他者と平等に投票することを可能にすると共に、そのために選挙規則を改正する。
- (b) 障害のある候補者に立候補を求め、障害のある立候補者や当選した障害者に関するデータを収集し、保持する。
- (c) 適切かつタイムリーな情報が投票前にアクセス可能な形式で広く流布され、すべての投票所がアクセス可能となり、支援が必要な障害を持つ有権者に意思決定支援が提供されるように、政策を変更する。
文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加(第30条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 障害者のスポーツへの参加を促進するための予算のついた事業やプログラムがない。
- (b) 利用可能な電子書籍の数が少ないため、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物にアクセスすることが困難になっている。
- (c) 公園、娯楽施設施設およびスポーツセンターによる利用に関する精神障害および知的障害を有する者に対するものを含む、障害に基づく差別的な全国レベル、地方レベルの差別的な規則および慣行。(d)障害児が遊び場を利用するできない。
- 国際審査委員会は、以下を国に勧告する。
- (a) 障害者のスポーツへの参加を促進し、障害者のスポーツへの参加を促進するプログラムおよびプロジェクトを確立するために、障害者権利条約に準拠して国民スポーツ法を改正する。
- (b) 世界知的所有権機関(WIPO)が主管する、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約に従って、アクセシブルな形式での出版物を促進する。
- (c) 障害者権利保護法および民法を含む関連法を強化することにより、公園、娯楽施設、スポーツセンターによる知的障害者および精神障害者を含む障害者を拒否するという差別的な規制および慣行を全国および地方レベルで撤廃する。(d)ユニバーサルデザインに基づく遊び場を開発し、障害児がレジャーやレクリエーションに参加できるようにする。
C. 特定の義務(第31−33条)
統計及び資料の収集(第31条)
- 国際審査委員会は、国勢調査、全国世帯調査、およびデータの分類を含むがこれに限定されない、障害者に関するすべての形態のデータの収集に国が使用している方法に懸念している。現在利用されている方法は、人権に基づくアプローチに従わず、障壁の除去を基準の一部として反映していない。
- 国際審査委員会は、障害者権利条約の実施について正確な情報を提供するために、健康、教育、雇用、政治参加、司法へのアクセス、社会保障、暴力、農村人口をはじめ、あらゆる部門にわたるデータを体系的に収集すると共に、人権に基づく指標を開発することを勧告する。
国際協力(第32条)
- 国際審査委員会は、国が2030アジェンダを実施するための努力を含め、すべての国際協力活動において障害者の権利を促進するための横断的な政策を欠いていることを懸念している。
- 国際審査委員会は、国があらゆる国際協力活動において障害者の権利を促進するための横断的政策を策定することを勧告する。また、国がアジェンダ2030と持続可能な開発目標の実施を目指すすべての努力において、障害者の権利の視点の採用を確保することを勧告する。
国内における実施及び監視(第33条)
- 国際審査委員会は以下を懸念する。
- (a) 障害者権利条約第33条(1)の下で、障害者の人権に関する訓練を受けたスタッフを含む国家的な中央連絡先(フォーカルポイント)の正式な指定の欠如
- (b) 現在、指定調整枠組みとして機能している行政院障害者の権利及び利益に関する推進チームは、国家内又は市民社会においてよく知られていない。
- (c) 5年以上に及ぶ議論にもかかわらず、パリ原則に定められたすべての要件に準拠する、国家人権機関または類似機関のような独立した監視枠組みがない。
- (d) 監視過程における障害者およびその代表組織の関与および参加は、比率割り当てによって制限されている。
- 国際審査委員会は以下を国に勧告する。
- (a) 直ちに国家的な中央連絡先(フォーカルポイント)を正式に指定し、そのような国家的な中央連絡先には、障害者の人権について訓練された職員を配置する。
- (b) 指定された調整枠組みとして、行政院障害者の権利と利益に関する推進チームの役割と責任に関する情報を国家と市民社会の両方において完全に広める。
- (c) パリ原則に規定されたすべての要求事項に適合する、国家人権機関または同様の機関の形で独立した監視枠組みを直ちに確立する。その枠組みは、総統府、監察院、または政府構造の一部ではなく、完全に独立ものであることを義務付ける。
- (d) 障害者組織が、障害者権利条約第33条(3)で要求される監視過程に完全に参加することができるようにする。また、障害者権利条約の全国的な実施と監視に参加できるように障害者組織に十分な財務的および人的資源を供与する。
W. フォローアップと議論
- 国際審査委員会は、障害者権利条約の第35条(2)に基づき12ヶ月以内に、第23(b)項および第81項(c)に記載された国際審査委員会の勧告を実施するために行われた措置に関する情報を公に広報するよう求める。
- 国際審査委員会は、本総括所見に含まれる国際審査委員会の勧告を実施するよう国に要請する。国は、国や地方政府、立法府に属する者、関係省庁、地方当局の職員、教育、医療、法律専門家などの関連する専門家集団のメンバーにも、検討と行動のために配布することを推奨する。メディアにも、現代的なソーシャルコミュニケーション戦略を使用することを推奨する。
- 国際審査委員会は、市民社会、特に障害者組織を定期報告書の作成に関与させることを国家に強く推奨する。
- 国際審査委員会は、本総括所見を広範に周知するよう国に要請する。特に非政府組織および障害者の代表組織ならびに障害者自身および家族の構成員に対して、台湾手話言語を含む、国語および少数民族言語とアクセシブルな形式を通じて、また、人権に関する政府のウェブサイトで利用できるようにすることを通じて周知するよう要請する。
*作成:小川 浩史