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「あいさつ」
障害学国際セミナー2017 於:韓国・順天郷大学

増田 英明 20171024

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last update:20171103

みなさまこんにちは

日本の京都からきました増田英明です。宜しくお願いします。
ご挨拶に変えて何故パーソナルアシスタントを導入しているかを少し話させていただきます。
私はこの10月26日で74歳になります。ALSの宣告を受けたのは2004年で60歳のときでした。病院で人工呼吸器を着けましたが、そこでの生活は天井を見てばかりで、車いすに移乗ができず、一時は呼吸器を着けたことを後悔しました。しかし、その後に、リハビリ診療所のデイケアに通い、車いすで外出できるようになりました。しかし、そこでの集団生活では、自分の思うことやりたいことができず、自宅で過ごす生活を選びました。自宅では介護保険を使い、事業所からのヘルパー派遣により生活していましたが、その生活にも違和感を感じていました。そこから、重度訪問介護という障害福祉サービスを活用してパーソナルアシスタントを使い、今は自分の思い描く生活をしています。そういう方法があれば、どんなに身体を動かせなくても、コミュニケーションが難しくても、自分のしたい生活ができる可能性がぐんと広がります。

私の目標は2つあります。
1つは、文字通り痒い所に手が届く専属のヘルパーを育てる
1つは、若い人たちにALSを知ってもらい社会に生かして欲しい
私の様に四肢が動かないひとには自分の命がかかっているので信頼関係がとても重要です。

実際の生活については、午前中のポスターでも報告しています。
私は見ての通り、人工呼吸器を装着していて話すことができませんから、介助者に文字盤を読み取ってもらったり、機器を操作して自分の思いを書いて伝えています。
ポスターを見てくださった方、会場にいるみなさんとたくさん話したいと思っているのですが、コミュニケーションに時間がかかってしまいます。
だから、ここで、私が国際セミナーに参加して思ったことを述べさせてください。

私はALSという難病を持ち、そのためにほとんど身体を動かすことができません。昨日の報告に合わせて自分自身を表せば、患者であり障害者であり、高齢者である。ということなります。だけど私にとって、病気か障害かなどの区別、ポストモダンなどは、生活をするうえではさほど重要なことではありません。
いろいろなテーマがあってよいとは思いますが、私のような重度障害者がどうやって生きていくのか、ということは、そうしたテーマの最も重要な部分だと思っています。
そして、今、そこがゆらいでいるために、私のような人工呼吸器を装着した重度の障害者は、安楽死や尊厳死に一番近い存在に置かれてしまい、生きることそれ自体が認められずにいます。
韓国で尊厳死法が成立したと聞きました。来月から施行され、これで、人工呼吸器を外すことが認められてしまいました。
このことをみなさんは、どう思いますか。
私は本当に悔しくてなりません。
多くのALSの人たちは、私のように人工呼吸器を装着するという選択をしません。
これは日本だけではありません。アジアそして世界で共通している状況です。
なぜ人工呼吸器を装着しないのか。これは決して自己決定の結果ではありません。

生きる手立てを考える。どうすれば生きられるのか。そのためには、安楽死や尊厳死など生命倫理のテーマも意義があると思うし、もっともっと各国の介護の制度や実際の具体的な報告や議論も必要だと思います。
このセミナーのよいところは、研究者だけのものではないことだと聞きました。私たちの現実をもっと見て、一緒に考えてほしいと切に願います。
そしてこのセミナーがもっと意義のある場になることを願っています。

最後に、この国際セミナーに参加することができて本当にうれしく思っています。
主催者の先生方にも大変お世話になり、心から感謝しています。
ここに来るまでの道のりは、とても大変で、まさに命がけの挑戦でした。
人工呼吸器を装着してから初めての海外だったので、何から何まで手探りで、機内の移動では移動手段がなく、床にビニールシーツを引き、ひきずりながら移動し、傷もできました。
それでも、介助者の手をかりて、ここまで来ることができました。

私たちの生きづらさは、誰かの手によって解決できることがたくさんあります。
そうした生きるための手立てをもっともっと知りたい。もっともっと広めたい。
そう決意した、今日は私の誕生日でした。

ありがとうございました。

増田


*作成:青木 千帆子
UP:20171103 REV:
増田 英明  ◇ALS  ◇全文掲載
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