津久井やまゆり園で多くの人の命が奪われ、多くの人の心身が傷つけられてから、1 年余りが過ぎました。この間、この事件をめぐって様々なことが語られてきました。また、精神保健医療のあり方や施設の立替に関する議論のように、大切な課題がリアルタイムで進行してもいます。
一方で、この事件に大きなショックを受けた人たちにとってのこの1 年は、「雄弁さ」と「沈黙」が奇妙に同居する状況でもあったように思います。「支援」編集委員会は、それぞれの委員が、それぞれの視点からこの出来事を「人事ではない」問題として受け止めつつも、それを明瞭な言葉として語るには少し時間がかかると感じてきました。それは、「雄弁」にこの出来事を語る語り口の中に、私たちが「人の生(命)」をめぐって考えようとしてきた大切なことを捨象してしまう何かを、直感的に見出していたからかもしれません。
そうした思いのもと、「二元論的な『善/悪』の図式に安易に回収することなく、また現実的な『問題解決』の方法論の話に一足飛びに進むこともしないで、それぞれにとっての『人事ではない』問題に向き合うための言葉を、読者の皆さんとともにじっくり考えていければと思っています」と書きました(『支援』7 号「津久井やまゆり園で起こったことについて」)。
このトークセッションでは、その第一歩として、知的障害や自閉の人の生をめぐって研究と実践を重ねてきた猪瀬浩平さんと岡部耕典さんのお話を通じて、あの出来事から1 年余りを経過した今改めて私たちが受け止めるべきことは何なのか、考えてみたいと思います。具体的には、「知的障害」のまなざされ方、「地域」と「施設」の関係、「家族」と「当事者」という立場性についてなど、テーマは多岐にわたると思います。その他、会場の皆さんからのご意見も交え、これから私たちに求められる思考と実践について、皆さんと一緒に考えたいと思います。