日本のODAは、1954年、ビルマとの間に「日本・ビルマ平和条約及び賠償・経済協力協定」を結び、戦後賠償としてスタートした。現在、日本は、年間約1.2兆円を拠出しているが、これは日本のODAは過去最高だった1997年の半分である。日本の保健医療分野のODAは予算全体の2.1%である。これはDAC加盟国合計の15.5%と比較すると極めて少ない。保健医療分野の中でも、精神保健分野は、誤解やスティグマが根強く、多くの国や国際社会全体においてもタブー、もしくは非優先分野として周辺化されてきた。精神障害は、地域、国境、人種、文化を越えて存在するが、一般的に開発途上国における精神保健は困難度が高い。JICAにおいても精神保健分野のプロジェクトが実施されたことはなかった。それでも、2016年に、Global Alliance for Chronic Diseases(GACD)の開発枠組みの中に、精神保健が追加されたことを皮切りに、AMED研究費「地球規模保健課題解決推進のための研究事業」にも、はじめて精神保健分野が追加された。近年、急速に注目される国際精神保健分野の現状を報告する。