新緑の候、ご健勝のことと存じます。
津久井やまゆり園事件により、たいせつな命が奪われて10か月になります。貴職に置かれては、事件後の対応にご尽力されていて、ご苦労をお察しいたします。私たちも、津久井やまゆり園事件の犠牲者への追悼し、そして、あの事件でたいへんな思いをした入所者のみなさんの今後について考えてまいりました。
なによりも、被害者の方々が、尊厳と権利ある人として考慮されることを訴えてまいりました。ここに、私たちとしての提言を改めて示したく参りました。
なにとぞ、犠牲者と被害者があたりまえの人としてあることができるよう、県当局が施策をとっていただけることをお願い申し上げます。
津久井やまゆり園事件は、19人もの人が殺され、23人の人が傷を負いました。
160人の大規模施設において、重度の知的ハンディがある人が、差別思想を持った元職員によって殺傷されたものです。このことを踏まえずして、追悼も再建もあり得ません。伝え聞くところによりますと、津久井やまゆり園は小規模施設として再建される方向であるということです。これでは、事件に対しての反省を踏まえていないし、事件後にまとめられた「ともに生きる社会かながわ憲章」の趣旨に沿っていません。憲章には、「誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します」とあります。津久井やまゆり園の再建は、この憲章の具現化であるべきだと、私たちは考えます。
長年、津久井やまゆり園で暮らしてきた人たちは、地域生活そのものを知りません。これは、重度の知的ハンディがある人たちを地域社会が受け入れてこなかったゆえです。また、行政が、重度の知的ハンディがある人たちが地域生活を営むための施策を十分にとってこなかったためです。
今こそ、津久井やまゆり園に在籍している人たちに、地域生活を体験してもらい、それぞれの人に、支援者があれば地域生活を営めることを理解してもらうべきです。そして、家族のみなさんにも、今日ある日本の制度においても、重度の知的ハンディがある人たちも地域生活が可能であることを知ってもらうべきです。行政としては、津久井やまゆり園の当事者や家族のみなさんに対してこの努力を行う必要があります。
この努力なしに、小規模施設に建替えることは、重度の知的ハンディがある人たちの「いのちを大切にします」「社会への参加を妨げる壁、いかなる偏見や差別も排除します」という憲章は絵空事になります。
今年1月26日の集会のあと、津久井やまゆり園の再建計画は、改めて検討しなおされることになりましたが、その結果が小規模施設化ではいけません。
2月27日には、津久井やまゆり園の跡地をどうすべきかとする具体的な提言をいたしました。
私たちは、あらためてここに、「ともに生きる社会かながわ憲章」を踏まえて、津久井やまゆり園事件後の施策を立てていただくよう提言します。