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「精神保健福祉法『改正』案に対する学会声明」

日本臨床心理学会, 20170330,[外部サイト]

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last update:20170403


精神保健福祉法「改正」案に対する学会声明

2017年3月30日
日本臨床心理学会
会長亀口公一

日本臨床心理学会は、1964年の創設以来、科学的心理学における「臨床」のあり方を批判的に検証しつつ、心理支援を必要とする子ども・障害者・当事者と呼ばれる人たちと「共に生きる」学会として歩んできました。
その立場で、今回の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の一部改正に関する法律案(以下、「改正」案)に反対します。
「改正」案は、2016年7月の相模原市「津久井やまゆり園」事件後、塩崎厚生労働大臣の「再発防止の検討を早急に行いたい」「措置入院後のフォローの充実が必要との指摘も当然ある」との発言に端を発し、8月8日に厚生労働省が設置した「事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告を受けての「改正」案であり、当事者や精神保健医療福祉関係者の要望に基づく本来の改正案ではありません。
2017年2月28日に厚生労働省が発表した改正の概要では、「相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通り実施され、多くの被害者を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行う。」とし、「医療の役割を明確にすること−医療の役割は、治療、健康維持推進を図るもので、犯罪防止は直接的にはその役割ではない。」とありました。しかし、今回の「改正」案は、相模原事件は措置入院後の精神障害者の犯罪であるとされ、「二度と同様の事件が発生しないようにする」犯罪防止のためのとしか考えられません。「相模原事件は措置入院後の精神障害者の犯罪」としていますが、起訴前鑑定では「医療で治療可能な精神疾患を持たない者」で全責任能力ありとしていることからも、精神疾患による犯行ではないということになります。
この様に精神障害=凶悪な犯罪者との偏見を前提とした「改正」案には、以下の問題があり反対します。即時、白紙撤回を要望致します。
1)措置を行った都道府県・政令市が、措置入院中から退院後支援計画を作成し、退院後は、患者の帰住先の保健所設置自治体が、退院後支援計画に基づき相談指導を行う点については、病状が改善されていても、退院後支援計画の作成に手間取れば退院ができない可能性がある。(現に医療観察法でも裁判日程が優先されるために、病状が改善していても、退院できずに入院が長引いている問題が指摘されている。)
2)他の自治体への転居時に転居先自治体に退院後支援計画の内容等を通知されることになる。医療観察法であっても、通院処遇終了後に転居時に転居先自治体に医療観察法で得た情報が通知されることはなく、措置入院退院者の人権を侵害している。
3)自治体が設置する「精神障害者支援地域協議会」には地元の警察が加わることになっている。精神疾患の一つの症状の「妄想」では、警察官に監視されるといった内容が語られることがある。今回の法改正で「精神障害者支援地域協議会」が設置され警察官が加われば、症状としての「妄想」が「現実」となるため、病状が悪化することも考えられる。
4)精神保健指定医制度や医療保護入院の入院手続の見直しについては、2013年の「改正」時から検討が要望されていたことであり、今まで十分な検討を行わず今回の改正に便乗している内容としか言えない。
以上のことから、今回の法「改正」案を、即時、白紙撤回を行い、法改正を行う時には、障害者権利条約の精神に則って、今回の検討会のように、構成員30名の一割の当事者・家族3名という構成ではなく、当事者を中心とした検討会とし、その中で、障害者権利条約に抵触している措置入院等の廃止を含めた改正案を作成するようにしてください。


*作成:伊東香純
UP:20170403 REV:
精神障害/精神医療:2017  ◇障害者と政策:2017  ◇介助・介護  ◇病者障害者運動史研究   全文掲載
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