日本には「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的とした優生保護法が1948年から96年までありました。「不良な子孫」とは障害者を指します。障害をもつ人には、人工妊娠中絶や優生手術(優生上の理由で行う不妊手術)が行なわれていました。優生手術は、本人の同意を得ることなく、時には強制的に実施されました。被害者は、公的な統計だけでも16,477人いたことがわかっています。約7割が女性でした。
その一人、飯塚淳子さん(仮名、宮城県在住)は、16歳のときに何も知らされないまま受けた優生手術によって妊娠することができなくなり、苦しい想いを抱いてこられました。長年にわたり国に謝罪と賠償を求めてきましたが、当時は合法だったとの回答しか得られず、2015年6月23日、日本弁護士連合会に「人権救済申し立て書」を提出しました。
去る2月22日、日本弁護士連合会は「旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶に対する補償等の適切な措置を求める意見書」を公表しました。意見書は触れていませんが、飯塚さんの申立が端緒であると、私たちは認識しています。
意見書は、優生思想に基づく不妊手術と中絶は憲法違反であり、被害者の自己決定権と「性と生殖の健康・権利」を侵害したと指摘し、国に対し、被害者に対する謝罪、補償等の適切な措置を行うよう求めました。同時に、資料の保全と速やかな実態調査の実施を求めています。私たちはこの意見書を高く評価します。
優生手術強制に対して、国連の規約人権委員会(1998年、2014年)、女性差別撤廃委員会(2016年)からも、日本政府に被害者への謝罪と賠償が勧告されています。かつて、優生手術強制の歴史があったドイツ、スウェーデンでも、すでに被害者救済が行われました。世界の流れを受けて、国は直ちに優生手術の実態解明と被害者救済を行って下さい。議員の皆さんのご理解と行動を、願ってやみません。