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「精神保健福祉法『改正』に反対する意見書――反対理由の要点」

認定NPO大阪精神医療人権センター, 20170317, [pdf]

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last update:20170321


2017年3月17日
精神保健福祉法「改正」に反対する意見書
反対理由の要点

認定NPO大阪精神医療人権センター

1. 今回の改正法案は,措置入院制度を強化するものであり,強制入院を原則として禁止する障害者権利条約に違反し,脱施設化・地域医療化,任意・自発的医療化に向かう精神科医療の国際的潮流に反するものであり,到底容認できない【反対理由@】(意見書2頁以降)。
2. 精神科医療を治安の道具とみなし,精神科医療の強制化・監視化を強め,精神障害者の人権を侵害し,精神障害者に対する差別と偏見を助長する【反対理由A】(意見書3頁以降)。
3. 今回の改正法案は,障害者に対するヘイト・クライムであるという相模原事件の本質と全く向き合っておらず,相模原事件に対する対応として的外れである。相模原事件は,被告人の思想・自由意思によって引き起されたもので,精神障害による犯行ではない可能性が高く,そうだとすれば,相模原事件は改正法案の立法事実たりえない【反対理由B】(意見書5頁以降)。
4. 今回の法改正は,以下のとおり各論的にも多くの問題点を抱えている【反対理由C】(意見書7頁以降)。
(i) 今回の改正法案は,精神医療に治安維持の目的を持たせるもので,精神障害者本人の利益を図ることを目的とする精神保健福祉法の立法趣旨に真っ向から反する(意見書7頁)。
(ii) 今回の改正法案は,退院後支援計画が作成されなければ退院できないということになりかねず,入院の長期化を招く(意見書8頁)。
(iii) 今回の改正法案は,措置入院者が退院した後も,恒常的に警察を含む行政機関等のネットワークによる監視下に置こうとするもので,措置入院者の個人情報,プライバシーを著しく侵害し,かつ,障害者のプライバシー権を保障する障害者権利条約に違反するものである(意見書8頁)。
(iv) 措置入院者が再犯予備軍として常時監視されることの精神的苦痛,このような扱いを受けることに伴う社会からの差別・偏見の助長,排除の進行など,その弊害は計り知れないものがある(意見書8頁以降)。
(v) 今回の改正法案は,医療関係者に措置入院者の情報提供を求めるものであり,医療関係者の守秘義務と抵触し,医療関係者と措置入院者との信頼関係を根底から破壊する(意見書9頁)。
(vi) 今回の改正法案は,「自傷」と「他害」の根本的相違を無視し,「自傷のおそれ」によって措置入院となった者についても,監視の対象としているのは不当である(意見書9頁)。措置入院の解除は自傷他害のおそれがなくなったことを要件としているのに,既に自傷他害のおそれがなくなったとして退院した者に対して,漠然たる危惧感に基づき,なお「再犯のおそれ」ありとして監視の対象とすることは不当である(意見書9頁)。今回の改正法案は,退院後支援計画は「当該医療その他の援助を行う期間」を定めて作成するとされているが,既に措置解除の時点において自傷他害のおそれがなくなったとされている者に対して,どのような要件がある場合にどのような期間,監視を続けるとするのか不明である。また,医療観察法が通院期間を3年(2年を超えない範囲で延長)と定めていることとの均衡も取れていない。曖昧で科学的に判定不可能な「再犯のおそれ」を根拠に長期にわたり監視を続けられるとすれば,場合によって生涯にわたり永久に監視できるということになりかねない(意見書10頁)。
以 上



*作成:伊東香純
UP:20170321 REV:
精神障害/精神医療:2017  ◇障害者と政策:2017  ◇介助・介護  ◇病者障害者運動史研究   全文掲載
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