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「意見書――2月28日に閣議決定された精神保健福祉法改正に対して」

大阪府障がい者社会参加促進センター気付・大阪精神障害者連絡会(ぼちぼちクラブ), 20170306,http://www.bochibochi-club.com/ikensyo.htm.

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last update:20170318


2017年3月6日
意 見 書
――2月28日に閣議決定された精神保健福祉法改正に対して

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿
〒574-0072
大阪市天王寺区生玉前町5?33
大阪府障がい者社会参加促進センター気付
大阪精神障害者連絡会(ぼちぼちクラブ)
    代表  山 本  深 雪
      TEL/FAX 06-6796-9297
http://bochibochi-club.com/

私たちは、「ひとりぼっちをなくそう」のスローガンをもとに、1993年に発足以来活動している、精神障害者のネットワーク団体です。 私たちは、2月28日に閣議決定された精神保健福祉法見直案に対し、以下の4点の意見を申し入れます。

1 相模原事件は、障害者の生きることへの憎しみを確信とするヘイトクライム事件です。この繰り返しを防ぐ為に国会で障害者へのヘイトクライム防止法(案)に関する議論を行って下さい。

2 そうした核心を抜きにした、措置入院制度の強化の方向について抗議します。
今回U被告の起訴前鑑定では「医療で治療可能な精神疾患を持たない者」とし完全責任能力ありとしています。にもかかわらず、精神保健福祉法改正の趣旨として、「相模原事件を受けての法改正」と挙げています。これは起訴前鑑定の結果を待たずに出した厚生労働省の相模原事件検討会での議論に問題があり、実際の事件と齟齬のある結論だと言わざるを得ません。

措置入院という仕組みは、精神に障害があり、切迫した自傷他害のおそれがみられる時に、都道府県が指定医2名の判断で該当するか否かを決める仕組みです。今回は、指定医本人が指定医の手続きを正式に行っておらず、かつ本人に「切迫した自傷他害行為」が見られたわけでもありません。
このような中で治安維持を目的としたといわざるを得ない精神医療の利用は認められません。
今回の見直し案は、措置入院になると、支援計画の作成や退院後の支援が行われるということですが、症状が改善もしくは消失していたとしても、計画の作成のための一連の流れが滞っていたら、それを理由に入院期間が長期化するでしょう。退院は、自傷他害のおそれがなくなった時点で速やかに解除されないといけません。
他に、退院後に、保健所の設置自治体が退院後支援計画に沿って支援全体を調整をするということが盛り込まれていますが、そこが大きな問題です。どこに住むか、誰といるか、何をするかというのは、個人の自由のはずです。まして、転出してもずっと引き継ぎがされるというのでは監視をされていると感じ、苦痛を感じます。これでは、人権が尊重されているとは思えません。 事件の再発防止だといって精神科医療を治安の維持の道具に使っていては、「共生社会の推進」どころではありません。

3 アドボケーター(権利擁護者)の仕組みを入れて下さい。
私たちは、強制入院の手続法として存在する精神保健福祉法には納得できません。しかし、その上で、少なくとも日本に強制入院の仕組みが存続する中においては「権利擁護者」制度が盛り込まれるべきと意見を述べてきました。しかし、今回の法見直しにおいて、措置入院の強化や医療保護入院の見直しに終始していることで除かれてしまい、疑問を抱いています。
障害者総合支援法で、個別給付の仕組みを使って、アドボケーターを検討しているようです。
しかし、市役所に電話を入れることの困難さが、踏まえられていません。非常に使いにくい絵を描いているというしかありません。入口の強制力を強めるばかりで、中に入った時の権利擁護の設計図は、使いやすい仕組みとするべきです。
私たちは症状の波が揺れている折は、電話連絡をすること自体が困難なのです。
そうした障害特性に配慮し、本人の意思に基づかない強制入院となった折には、自動的に権利擁護者(法律家や入院経験者やソーシャルワーカーなど)が地域から面談にやってきてくれるアメリカ等の仕組みが最低、必要です。

入院者にとって権利擁護者(アドボケーター)は、信頼できる存在であってほしいのです。が、今、厚生労働省が検討しているような、アドボケーターが面接後に病院に報告する仕組みでは、面談者は入院者ではなく病院の立場に寄ってしまい、信頼関係が築けなくなってしまいます。特にピアの立場から病院に入ると、入院者と病院の間の板挟みで苦しむ結果となるでしょう。ピアが、いくら研修を積んでも、立場上こういった矛盾を孕んでいます。
私たちは、病院から独立した、権利擁護機関によるアドボカシーを望みます。

4 まずは長期入院の解消に予算を付けて下さい。
私たちは、精神障害者が地域で暮らせる社会を望んでいます。そのためにまず必要なのは、病院に30万人も入院している仲間たちが、人権を尊重され、障害が重くても地域で暮らす場が確保され、長期入院から解放される社会の仕組みです。福祉:医療の予算バランスを改めて地域移行にきちんと予算をつけてください。
私たちは、隔離収容主義が真に改善されることを望みます。
               以 上


*作成:伊東香純
UP:20170318 REV:
精神障害/精神医療:2016  ◇障害者と政策:2016  ◇介助・介護  ◇病者障害者運動史研究   全文掲載
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