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【メモ】TBSドラマ『おかあさん』(第2シリーズ):実相寺昭雄演出6作品

村上 潔 2016/12/09

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last update: 20161209


■kiyoshi murakami @travelinswallow

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」「汗」「鏡の中の鏡」「あつまり」:共通するのは、ホワイトカラー/有産階級世帯の驕り・欺瞞・虚無・メランコリーと、それに抗い自身の生を取り戻そうとする兆候。突きつけられる冷酷な現実と、ヒューマニズムを追求する姿勢の双方が交錯して描かれる。
__posted at 2016年12月06日19:21:23
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806081092792958976]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」:冒頭、池内淳子の顔が闇から眩しい光線に晒されて輝き、笑みを湛えながら街頭を歩く(スタジオ撮影)彼女の表情を中心に据えて追いかける演出は、強烈な印象を残す。一点の曇りもない純真。話が進んでもそれは保たれるが、徐々に光を闇が侵食していく。
__posted at 2016年12月06日19:32:40
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806083934584913924]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」:続→“おかあさん”という一つの言葉だけですべてを信じられる主観の絶対性と、それを裏切り続けることによって成り立つ社会関係の相対性。その双方が絡み合う様態が描かれていて、非常に示唆的。大島は階級性を強調したかったのだろうが、そこよりも。
__posted at 2016年12月06日19:41:28
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806086148439228416]

実相寺昭雄『おかあさん』>「汗」:団地の空間性と断絶した関係性のメタファーとして随所で現れる壁=区切りの強調と、団地内の迷路の遊具が示唆する生き方の迷いの表現が印象深い。姉妹の世代差・価値観の差。世間の規範と生への渇望との葛藤。入り乱れ、衝突し、「産み」を介した和解と承認に至る。
__posted at 2016年12月06日19:48:46
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806087984109928448]

実相寺昭雄『おかあさん』>「汗」:続→“あんたが産まれた日も暑い日だった。日本が戦争に負けた日よ。”“関係ないわ”“そりゃそうね”という姉妹のやりとりは印象深い。女の生と性は社会的なモメント・転換にかかわらず規定され続けてきた。それを痛いほど知った女たちの、再生産からの通底感覚。
__posted at 2016年12月06日19:55:54
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806089780819656704]

実相寺昭雄『おかあさん』>「鏡の中の鏡」:物質としての鏡は予想するほど多用されない。むしろ親子・兄妹(義理を含む)という親密圏の関係そのものが、様々な角度に反射する鏡の機能をもっていることを強調しているようだ。主役の雪路自身も他者を映し出す鏡の役割を担い、父母らの声を引き出す。
__posted at 2016年12月06日20:06:45
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806092511676502016]

実相寺昭雄『おかあさん』>「鏡の中の鏡」:続→雪路の義母=父の後妻役は、やっちゃん。当時38歳(設定はたぶん少し上)。ひときわ低い声のトーンで、幾重にも抑圧された立場性と、葛藤を必死に押し殺す意志を表現している。後半での短いながらも一気にまくしたてるモノローグはインパクトあり。
__posted at 2016年12月06日20:13:58
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806094324949663744]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あつまり」:前半、画面に被り鳴り続けるオーネット・コールマンのフリージャズの印象が強烈。話の内容・構成自体は新鮮味がないので、音楽の力で成り立っている感は大きい。依存から自立へと巣立つ主人公を演じるチヤ子は、シンプルな演技ながら爽やかなイメージを残す。
__posted at 2016年12月06日20:26:31
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806097483415830528]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」「汗」「鏡の中の鏡」「あつまり」:ロカビリー・流行歌・クラシック・ジャズといった音楽が、通常のTVドラマでは考えられないほど(BGMの機能性を超えた)大きな音量で使われているのが印象的。人物の発話内容よりも音のインパクトを重視した演出。
__posted at 2016年12月06日20:34:08
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806099402624335872]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」「汗」「鏡の中の鏡」「あつまり」:映像面では、一つの画面のなかに二人の人物がいて、その前後の関係(後ろの人物をぼかす)、左右の関係(間に仕切りを挟む)、上下の関係(1階と2階)から意味を読み取らせる演出が多く用いられていた。対称と差異。
__posted at 2016年12月06日20:38:59
[https://twitter.com/travelinswallow/status/806100622797746177]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」:2度目の鑑賞。やはり冒頭の淳子さんを斜め前方からアップで追いかける流れがすばらしい。特に、口に指をあてて喜びをかみ殺す約2秒間は白眉。眩い光の効果で、まさに白昼夢のような印象。これほどの表情は25分中ここだけ。鮮烈にして怖さも覚える。
__posted at 2016年12月09日16:23:06
[https://twitter.com/travelinswallow/status/807123389210951680]

実相寺昭雄『おかあさん』>「あなたを呼ぶ声」(2度目の鑑賞):続>煙を吐く工場の煙突、ドラム缶に囲まれた空き地で遊ぶ少年、長屋など、いかにもネオレアリスモ的な描写はあるが、それは明確にとってつけた道具感を観客に抱かせるもので、むしろ鑑賞後には「中流的価値観」だけが強く印象に残る。
__posted at 2016年12月09日16:28:20
[https://twitter.com/travelinswallow/status/807124707493281793]

実相寺昭雄『おかあさん』>「生きる」:悪ふざけの効いたナンセンス・スラップスティック密室喜劇。狭い空間そのものを最大限おもしろく見せようと、様々な角度からカメラが狙う。不自然・不可解な台詞回しと役者の表情は、「新劇に対する茶化し」のように感じた。主演の山本学は当時劇団新人会所属。
__posted at 2016年12月09日16:35:51
[https://twitter.com/travelinswallow/status/807126597769641984]

実相寺昭雄『おかあさん』>「さらばルイジアナ」:まるで吉田喜重監督作品のような露光・背景・画面構成。白壁を背景にした人物のゆっくりとした平行移動。そしてフランス・アヴァンギャルドな過剰なモンタージュ。脚本は信仰・観念・倫理を見据え、映像はそれを反映しているようで、最後に転向する。
__posted at 2016年12月09日16:43:05
[https://twitter.com/travelinswallow/status/807128420991700992]

実相寺昭雄『おかあさん』>「さらばルイジアナ」:続>ラストの1シーンは見慣れた町の往来と風景(台地の上から眼下に広がる町を見下ろす)を捉える16ミリ別撮りの映像。端的に言えば「聖から俗へ」を象徴するように思えるが、聖の世界の矛盾・葛藤を描いた後の描写だけに、逆のベクトルも見える。
__posted at 2016年12月09日16:48:51
[https://twitter.com/travelinswallow/status/807129870903844864]


■各回データ
◇「あなたを呼ぶ声」(1962/06/14)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-6102
◇「汗」(1963/08/08)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-7121
◇「鏡の中の鏡」(1963/01/10)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-6670
◇「あつまり」(1962/09/13)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-6295
◇「生きる」(1962/08/02)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-6201
◇「さらばルイジアナ」(1963/02/14)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-6734

cf.
◆【実相寺昭雄没後10年/生誕80周年記念企画】鬼才・実相寺昭雄 映像の世界――ウルトラマンから仏像まで
 (京都文化博物館フィルムシアター)
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_film/schedule/

◆No.293−テレビ番組放送枠の変遷−TBS系木曜21時枠の変遷T(1960〜1971・前編)
 (Ryu's Diary =TV・MUSIC・LANDSCAPE=|2011/02/11 12:00)
http://ryusin02.blog101.fc2.com/blog-entry-293.html

◆実相寺 昭雄 Akio Jissoji 研究会
https://www.facebook.com/AkioJissoji/


*作成:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
UP: 20161209 REV:
全文掲載
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