HOME > 全文掲載 >

「合理的配慮の提供に際し調整に当たる役割に関する情報の集約と分析」

青木千帆子 20161105 障害学会第13回大会(2016年度) 於:東京家政大学

Tweet
last update:20161105

  ※「合理的配慮の提供に際し調整に当たる役割に関する情報の集約と分析」ポスターはこちら

  1 目的 環境整備や合理的配慮の提供に際し調整に当たっている人・組織について情報を集約する。
  2 背景 障害者差別解消法第14条…相談窓口において紛争に至る前の調整をする役割も期待されていると考えられる。
  3 方法 インターネットや文献資料を通して情報収集し、整理。
  4 結果
 4.1 地方自治体障害者関係主管部署、その他関連部署 担当者
・障害者差別解消法施行に際して、5種類の対応。
a) 障害者差別解消法に基づいて相談窓口を開設した自治体
b) 自治体独自の条例に基づいて窓口を開設した自治体
c) 従来から障害に関連する法に基づいて開設されている相談窓口を活用するため、その一覧を掲載する自治体
d) 障害者差別解消法に関連しての言及はないが、ウェブサイトに相談窓口一覧が掲載されている自治体
e) ウェブサイトからは相談窓口の情報が得られなかった自治体

 4.2 障害者差別解消支援地域協議会
・平成28年6月までに27の都道府県、11の政令指定都市等が地域協議会を設置(内閣府, 2016)。
・自治体担当者や福祉、医療関係者に加え、商工会議所等民間事業者、民生委員、地方法務局といった、福祉の分野を超えた構成。

 4.3 地方自治体の差別禁止条例等で指定されている相談員
・地方自治体の差別禁止条例に基づく相談体制としては3種類の対応。
a) 広域専門相談員・地域相談員配置型:自治体条例に基づき広域専門相談員と地域相談員を配置するパターン。地域相談員は、身体障害者相談員、知的障害者相談員、精神保健福祉相談員が担っていることが多い。
b) 相談窓口設置型:条例に基づき、「あんしん相談窓口」「障害者110番」等の名称で、電話やメールでの相談窓口を開設するパターン。障害者虐待防止法に基づく障害者権利擁護センターが、障害者差別解消法の相談窓口を兼ねる場合もある。
c) 相談機関開設型:「相談室」「相談センター」といった形で、新たな相談機関として独立した形で設置しているパターン。多くは、民間の相談支援事業者に委託。

 4.4 相談支援事業所、基幹相談支援センター、自立支援協議会
・総合支援法に基づく相談支援事業。障害別に営む事業所が多く、三障害対応には困難がある(玉木, 2014)が、自立支援協議会等を通して情報共有が進められている。
・4.1-4.3で述べた障害者差別解消法に関する相談への対応を、基幹相談支援センターや自立支援協議会が委託されている事例が多い。

 4.5 障害関連法に基づく各種相談対応窓口
■都道府県障害者権利擁護センター、市町村障害者虐待防止センター
・「虐待と差別とは密接・不可分な点も多く、市町村の相談窓口は虐待防止センターとの一体的な運用が効果的」であるといった記載(地域協議会モデル事業千葉県の報告)。

■身体障害者更生相談所、身体障害者福祉センター、福祉事務所
・障害者差別解消法施行に際して地方自治体が開設した相談窓口業務を受託している相談所も複数見受けられる。
・4.3でa)広域専門相談員・地域相談員配置型と分類した自治体では、地域相談員を身体障害者相談員が担っている場合がある。

■知的障害者更生相談所、福祉事務所
・4.3でa)広域専門相談員・地域相談員配置型と分類した自治体では、地域相談員を知的障害者相談員が担っている場合がある。

■精神保健福祉センター、保健所
・4.3でa)広域専門相談員・地域相談員配置型と分類した自治体では、地域相談員を精神保健福祉相談員が担っている場合がある。

■難病相談・支援センター
・難病相談支援員は当事者が担う場合が46%、医療職など専門職が担う場合が54%である。ピアの割合が高いのが特徴の一つ(高畑, 2012)。

 4.6 地方法務局 人権擁護委員
・ボランティアで、地方法務局に設置されている常設相談所にて面接や電話による相談に応じている。地域で様々な職につき退職した人が委嘱され対応。
・年間2000件以上の相談が寄せられており、うち、差別待遇については平成26年度75件、平成27年度78件、平成28年度45件の相談(法務省ウェブサイト)。

 4.7 特別支援教育コーディネーター
・合理的配慮の基礎となる環境整備として「校内委員会の設置」や「特別教育支援コーディネーターの指名」が進められている。
・小・中学校に在籍する特別支援教育コーディネーターと、特別支援学校に在籍する特別支援教育コーディネーターが存在。現場の教師が指名される。
・養成研修は、国立特別支援教育総合研究所、都道府県・政令指定都市の教育委員会、教育系大学院で実施。
・実際に特別支援教育コーディネーターを経験したり養成したりした者の報告によると、その役割が論じられてきた経緯から、対応を発達障害児に限定していると認識されがちである。(例えば、小野; 2010、石丸; 2015、村松・武田; 2016)

 4.8 教育委員会 合理的配慮協力員
・平成25-27年度文部科学省「インクルーシブ教育システム構築モデルスクール事業」で登場した役割。特別支援教育コーディネーターへの指導や特別支援教育支援員の研修等の校内体制整備、保護者等からの教育相談対応の支援等を行う者であるとされている。
・特別支援教育コーディネーターは教師が指名されるが、合理的配慮協力員は、外部の者が委嘱される。例えば新潟県では、合理的配慮協力員として校長経験者が教育委員会から派遣されたと報告されている(坂井, 2014)。

 4.9 障害学生支援コーディネーター
・障害学生支援担当者の配置状況は、障害のある学生が所属する学校の90.8%。担っているのは、大学職員が82校、コーディネーターが51校、教員が48校、カウンセラーが28校、支援技術を持つ教職員が10校、医師が7校(日本学生支援機構, 2016)。
・日本学生支援機構が研修会を実施、支援ガイド等をウェブサイトで公表している。また、障害学生支援において先駆的な役割をはたしてきた大学と連携し「障害学生修学支援ネットワーク」を形成し、相談支援を実施している。

 4.10 ジョブコーチ
・障害者が雇用されている職場に支援者が介入し、事業主・障害者双方に対し支援を提供する役割。
・「協力機関型」「訪問型」は民間福祉施設等に所属し、「配置型」は障害者職業センターに所属し、「企業在籍型」は企業に所属している。
・障害者の就労支援において、日常生活面や健康管理面における支援が必要な場合があり、「配置型」「企業在籍型」の手が及ばない生活面に関する支援を、「協力機関型」が補完することになっている。

 4.11障害者就業・生活支援センター
・雇用、保健福祉、教育等の関係機関の連携拠点として、就業面及び生活面における一体的な相談支援を実施している。

 4.12 障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センターと連携し、障害者に対する職業リハビリテーション、事業主に対する雇用管理に関する助言等を実施。
・合理的配慮の提供に関しては、職業カウンセラーや配置型の職場適応援助者が対応している。また、障害者職業センターはジョブコーチの養成を行っている。

 4.13 ハローワーク(公共職業安定所)
・就職を希望する障害者に対し、専門職員や職業相談員が障害の種類・程度に応じた職業相談を実施している。

  5 課題と展望
課題1:障壁を経験している全ての人々+日常生活及び社会生活全般に関する分野への対応
・これまで支援の対象になってこなかった可能性のある多様な障壁の解決にどのように対応するのか。
・教育・福祉・労働と分かれて営まれてきた事業が、どのように所管分野以外の相談に対応するのか。
・事業者から相談窓口が見えにくい。 →例:兵庫県は「合理的配慮アドバイザー」を一般事業者に派遣

課題2:専門家とセルフヘルプグループの協働
・当事者の持っている情報の方が幅が広いが、専門職とセルフヘルプグループの間に摩擦があることも多い。
・アメリカにおける議論では、両者の協働は実践場面で不可欠という結論(岩間, 2000)。

課題3:既存の相談窓口が従来対象とする範囲を超えて相談対応するためには、新しい知識の習得が必要。
・障害者差別解消法は、「新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を図ること」と規定。ならば、そこには各相談事業を営む根拠となっている法やその所管分野を超えた取り組みを支える、何らかの仕組みや予算によるバックアップが必要。

⇒紛争に至る前に調整する役割やガイドラインを充実させるために、
@各相談窓口が根拠としている法の所管分野を超えた取り組みを支援するルールや仕組み
A従来対象とする範囲を超えて相談対応するための新しい知識の習得支援について、引き続き国内外の状況を調査し、充実させる方法やその方向性について構想する。

  6 引用文献
石丸利恵・苅田知則・八木良広2015「愛媛大学教育学研究科特別支援教育コーディネーター専修の養成カリキュラムに関する現状と課題」『愛媛大学教育実践総合センター紀要』33: 127-142.
岩間文雄2000「セルフヘルプ・グループと専門職の協働のために」『関西福祉大学研究紀要』2: 141-154.
村松勝信・武田篤2016「インクルーシブ教育時代における特別支援教育コーディネーター研修の在り方と方向性: 研修受講者アンケート調査をとおして」『秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要』38: 175-180.
内閣府 2016「障害者差別解消支援地域協議会の設置状況(平成28年4月1日時点)」http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/pdf/kyougikai/jokyo_updated.pdf (2016年10月13日アクセス)
内閣府 2016「障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業(モデル会議)」http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/model/index.html (2016年10月13日アクセス)
内閣府 2016「平成27年度障害者の社会参加推進に関する調査研究 合理的配慮提供に際しての合意形成プロセスと調整に関する国際調査」
日本学生支援機構 2016 「平成27年度(2015年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査」http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/chosa_kenkyu/chosa/2015.html (2016年10月13日アクセス)
小野學 2010「特別支援教育コーディネーターから見た多職種連携の課題 (特集:特別支援教育時代における多職種連携)」『SNEジャーナル』16 (1): 26-35.
坂井育男 2014「学校における合理的配慮の取組 : インクルーシブ教育システム構築モデルスクールの実践 (特集 インクルーシブ教育システム構築のため、特別支援教育をどう推進するか) 」『Synapse:教員を育て磨く専門誌』(31), 24-28.
高畑隆 2012「難病相談支援センターと相談支援員――現状と課題」http://www.nanbyo.jp/betusite/120310kenkyukai/takahata.pdf (2016年10月13日アクセス)
玉木幸則 2014「障害者総合相談支援センターにしのみやの取り組みについて (特集 相談支援事業の現状と課題)」『ノーマライゼーション: 障害者の福祉』34 (6): 21-23.


*作成:青木 千帆子
UP:20161105 REV:
全文掲載
TOP HOME (http://www.arsvi.com)