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「他の者との平等の観点から支援された意思決定を考える」

長谷川 唯岡部 宏生西田 美紀桐原 尚之
 20160922 障害学国際セミナー 2016
於:立命館大学大阪いばらきキャンパス内コロキウム

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last update:20160917


◇日本の現状
★成年後見制度を前提とする意思決定支援
・成年後見制度
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分である者を保護するために、本人の生活を支援する者を選任する制度。
・成年後見制度の利用の促進に関する法律
2016年4月15日に公布、同年5月13日に施行。
「医療・介護における意思決定」の支援のあり方について検討を加え、必要な措置をとることを明記。
★代理人、つまり後見人がその人に成り代わり意思決定をする代行決定の制度。

◇ALSというインペアメントを有する身体
★自分の意思を自ら発信することができなくなる
・徐々に身体を動かせなくなり、意思疎通も難しくなる。
・相手に読み取ってもらわなければ、意思を表明することができない。
・症状の進行とともに、コミュニケーション方法が奪われていく。
★相手(読み取る側)の裁量に任せるしかない状況がある。

◇ALSと成年後見制度
意思表示ができない。

法的能力の行使ができない。

その支援として、成年後見制度による法定代理が必要とされてしまう。

◇障害者権利条約
支援された意思決定
・本人の意思決定を法的に有効とみなしたうえで結果としての法的能力の行使の平等に向けた支援。
・多様なコミュニケーション方法の開発
・事前計画

◇ALSの人たちを取り巻く状況
意思があるにもかかわらず、意思を読み取ってもらえない状況に置かれることが多い。

代理人や家族によって
・財産の処分
・本人の意思に反した入院や転居
・生命にかかわる治療の拒否

○人工呼吸器装着についての事前の意思確認書
「人工呼吸器の装着を拒否します」
→選択の問題とされることで、他の者との不平等を形成する。

まとめ
・身体の状態によっては、様々のことが決定できても、それを伝える方法や、その決定の変更を伝える手段がなく、相手に決定を委ねざるを得ない。
・日本の成年後見制度の枠組みを採用したままでは、支援された意思決定を目指しても、ALSの人たちの生命や生活が「尊厳死」という道で閉ざされてしまう。
・成年後見制度の枠組みを廃止し、第10条や第19条に根差した支援の充実により、生存の保障がなされなければならない。




*作成:長谷川 唯
UP:20160917 REV:
精神障害/精神医療 障害学国際セミナー 2016  ◇全文掲載
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