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ひょうせいれん第3次声明

7.26障害者殺傷事件

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 8月10日から、厚労省の相模原事件についての検証会議が始まっています。朝日新聞の記事によれば「「事件が二度と起こらないよう差別や偏見のない社会をめざし、再発防止策として提案していくことが重要だ」。検証・再発防止検討チームの初会合で、塩崎恭久厚労相は強調した。〜第三者の精神保健指定医13人が今回の措置入院や解除の判断について評価した文書を議論。会合では「(Uは)脅迫状を出したが、他害行為を起こしていないなかで、精神科救急として何ができたか冷静に議論する必要がある」「措置解除後のフォローでは、薬物の影響もあった患者ということを踏まえる必要がある」などの意見が出たという。検証・再発防止検討チームの主な焦点・植松容疑者に対する措置入院から解除までの判断の是非・措置入院解除後の継続的なケアの仕組み、自治体や地域との連携のあり方・行政や警察間などの情報共有のあり方・福祉施設の「地域に開かれた施設」と両立する防犯体制のあり方」とあります。
 この検証会議は二重に許し難いものです。
 一つは、容疑者が「精神病者」であると確定しておらず、むしろ優生思想の確信犯による犯行と思われるのに、「精神病者」を対象とした検討会とすることで、世間一般にあたかも「病者」による犯罪=「精神病者」は恐ろしいという印象を与えるキャンペーンにすり替えていることです。優生思想の確信犯と思われる犯行に対する怒りの表明を安倍政権の誰も一切行っていません。それは安倍政権のしょうがい者観とUのしょうがい者観が何ら変わらない物であるからなのではないでしょうか。安倍政権はしょうがい者を一生施設や病院に閉じ込めることで社会から抹殺し、Uは文字通りに抹殺したという違いだけしかないのですから、政権とUの親和性は隠しようもありません。政権は、政権の優生思想への怒りに世間の目が向かないように、「「精神病者」による恐ろしい犯行」「こんな犯行をするのは「精神病者」だ」というキャンペーンを張っているのです。
 もう一つは検証会議の結論が目に見えていることです。「兵庫方式」というものがあります。昨年兵庫県下で起きた措置入院経験者による殺人事件を受けて、措置解除後も行政などが関わり続ける方法を兵庫県が決めたものです。現行の精福法の下では「これ以上ない」厳重な対応を決めています。しかし、精福法が、現実には反して建前上は「本人のための医療を施す」ということになっているために、本人が関わりを拒否したらそれ以上はどうしようもないというのが「兵庫方式」なのです。それではだめだという結論になるのは火を見るより明らかです。精福法を根本的に改悪するか、刑法を改悪するか、新法を作るかして、「本人のための医療」という建前をなくし、強制が可能なものにするということが追求されていくことでしょう。「心神喪失者等医療観察法」に続く、保安処分の新設です。
 私たちには、「心神喪失者等医療観察法」を迎え撃った以上の構えが求められています。何よりも、「しょうがい者抹殺」が実行された社会に私たちが叩き込まれたからです。ナチスを過去のこととして批判していた時代とは違うのです。直ちにUに続くものが現れるということではないかもしれません。しかし、政権が優生思想を一切糾弾しないという中に、政権の優生思想がはっきり表れているのです。また殺されたのがしょうがい者であるということから、しょうがい種別を超えた連帯が直ちに創り出されているわけではないということにも注意を払い、しょうがい種別を超えたしょうがい者の連帯で保安処分新法を許さぬ世論を創り上げる必要があると思います。
 私たちひょうせいれんは、検証会議に「良い結論を出して欲しい」と求めるのではなく、検証会議を許さない闘いを行っていきます。


UP:20160812 REV:
7.26障害者殺傷事件 
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