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相模原市の障害者施設における殺傷事件について

2016年7月29日 特定非営利活動法人全国精神障害者地域生活支援協議会[あみ]

相模原市の障害者施設で入所者19人刺殺

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相模原市の障害者施設における殺傷事件について
2016年7月29日 特定非営利活動法人全国精神障害者地域生活支援協議会[あみ] 代表 伊澤雄一


 7月26日未明に起きた神奈川県相模原市の障害者施設における殺傷事件は、19名の死亡者と24名の負傷者という未曽有の惨事となりました。不幸にして亡くなられた方々とご家族に深い哀悼の意を表するとともに、負傷された方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。そして、この事件に巻き込まれた施設の利用者ならびにご家族、そして職員、理事者、関係者の方々に安心が取り戻せる日ができるだけ早く迎えられることを願ってやみません。
 当該施設の元職員である容疑者の犯行は、深夜に施設に侵入し、抵抗のできない障害のある人を次々に殺傷していくという、極めて残忍かつ冷酷なものであり、到底許すことはできません。「障害者はいなくなればいい」として障害のある人の存在そのものを否定し、大量殺戮を行った行為は、歪んだ価値観による身勝手な凶行というほかはなく、司法による厳正な裁きを求めるものです。
私たちは、精神障害のある人たちが地域の中で当たり前に暮らし続けられるよう支援活動を行うものとして、この事件のあまりの残虐さに深い悲しみとこの上ない怒りを覚えるとともに、この事件が障害のある人たちのこれからの暮らしに大きな不安をもたらしていることに強い危惧を持ちます。
 私たちが暮らす社会は、障害の有無に関わらず、当たり前に人の命を尊び、認め合うことこそが大切です。しかし、利益を生むか生まないかで人の価値を決める考え方や、特定の人々を排除したり攻撃したりする思想が、世界中に蔓延しており、わが国もその例外ではありません。容疑者が障害者に対して投げつける差別的発言と行動には、そのような社会の風潮の極端な形での反映にも見えます。この事件をきっかけに人々の間に差別意識が広がっていくことがあるとすれば恐怖はさらに深く暗いものになってしまいます。
政府は、この事件の再発防止策のひとつとして、措置入院のあり方について見直しを行う方針を示しました。容疑者が措置入院をしていた経歴に着目してのことですが、犯罪の防止に精神医療を利用するということが果たして適切なのでしょうか。
 「危険な人物は精神科病院に強制的に入院させる」という精神医療の利用は、本来医療を必要とし生活上の支援を求める多くの精神障害のある人を、精神医療の名の下で社会から排除することにつながります。そのような考え方自体が、この残忍な事件を起こした容疑者の「障害者なんていなくなればいい」という差別思想に通底しているともいえるのではないでしょうか。
 私たちは、この残虐な事件を目の前にして整理しきれない悲しみと憤りを抱えたままではありますが、それでもなお、人を排除しない社会をつくっていくことにしか解決の道はないと考えます。一人ひとりの命の尊厳には少しの差もないということをあらためて胸に刻み、これからも精神障害のある人たちの地域生活支援活動をさらに進めていきます。

*作成:桐原 尚之
UP:20160811 REV:
相模原市の障害者施設で入所者19人刺殺  ◇全文掲載
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