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障害者入所施設における殺傷事件に関する見解

2016年7月28日 公益社団法人日本精神保健福祉士協会

相模原市の障害者施設で入所者19人刺殺

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障害者入所施設における殺傷事件に関する見解
2016年7月28日 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠


 このたびの神奈川県相模原市の障害者入所施設「津久井やまゆり園」で発生した事件により、不幸にして亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますとともに、ご家族の皆様には衷心からお悔やみ申しあげます。また、負傷された方々の1日も早いご回復を心よりお祈り申しあげます。

 今回の事件が障害者入所施設で発生し、被疑者が当該施設の元職員であったことは、障害者の生活支援を担う私たち精神保健福祉士をはじめとする関係者に計り知れない衝撃を与えました。
 事件は未だ捜査段階にあり、事実関係は明らかではありません。しかし、多数の犠牲者が出た悲惨な事件として社会的な反響が大きく広がっていることに鑑み、本協会は、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進める専門職能団体として、現段階での見解を表明いたします。

1.被疑者による行為は、人としての尊厳を著しく踏みにじるものであり、いかなる理由を弄しても断じて許されるものではありません。報道を通して知りうる被疑者の断片的な発言に通底しているのは、障害を併せもつ人々に対する根深い偏見や差別意識であり、憤りを禁じ得ません。さらに、ごく一部とはいえインターネットを介して同様の発信がなされており、社会全体に排除や排他の思想が蔓延していくことを危惧し、深い憂慮の念を抱くものであります。

2.今回の事件報道は、2001年に発生した大阪・池田小学校事件をも想起させます。この事件では、犯人の措置入院を含む精神科治療歴や過去の精神病診断歴がいち早く報道されたものの、後に詐病であったことが明らかとなりました。
 いうまでもなく、措置入院の対象は、医学的正当性のある明確な判断根拠に裏付けられた精神病患者です。しかしながら、今回の事件においては、犯行と精神疾患との因果関係は不明であるにもかかわらず、あたかも精神疾患が事件の原因であるかのような印象を与える報道がなされています。このことは、精神疾患のある人は危険であるとの偏見を煽ることに繋がりかねませんし、精神疾患や障害を抱えている人々が受ける精神的苦痛や打撃の大きさも懸念されます。
 報道関係者には、真実に基づき正確かつ慎重な発信を要望するとともに、全ての国民の皆さまには報道に惑わされることのないよう、冷静な反応を切に願います。

 なお、報道によると、厚生労働省は措置入院の制度や運用について、見直しを検討する方針を示しています。精神保健福祉にかかわる専門職団体として本協会は、措置入院制度の問題に関して改めて見解等を公表することといたします。


*作成:桐原 尚之
UP:20160811 REV:
相模原市の障害者施設で入所者19人刺殺  ◇全文掲載
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