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業務進行に不利益を与えないための受け身の検証

古込 和宏 2016/03

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業務進行に不利益を与えないための受け身の検証

2016年3月 記※
※ワードファイルは2016/03/08 5:47に作成保存されている

とある日の深夜勤帯 AM 5;00〜
深夜勤メンバー Aチームリーダー看護師(不明)、Bチームリーダー看護師(50代)、フリー看護師(30代・入社1年目)、介助員(20代)

この日の私の業務(日課)経過 AM 5:55
Bチームリーダー看護師が様子を見に来て、「どこまで行った?」と進捗具合を確認したので、「なにをすればいいでしょうか」と私は回答。「薬飲んだ?飲む?」と聞かれたので「あのぉ…座薬まだ入れてないんですが…」と回答すると、「ちょっと待って、もう1人見てくるから」とリーダー看護師。

AM 6;04 別の患者の用事から戻ってきて、「座薬入れるのってリーダー業務ですよね?」と私が確認を求めると「資格があれば誰でも入れられると思いますが」と冷静さを装われる。そんなやり取りをしながら座薬挿入し、テルミールをセットしてもらい飲み始める。「座薬ってAM7:30 じゃなかった?」というリーダー看護師の言葉には、雑談を終わらせたい私としては反応する必要もない。よく職員は今、患者がどのような状況かも確認をせず「順番に回るのでお待ちください」とコール対応するが、私は心の中で「オイオイ、順番に回りますって言うわりには忘れるんだな」って私は思う程度にして、もう無駄に反応もしたくない。

AM 6:24 テルミール終了。この時間になると少し私の心の中に焦りのようなものが出てくる。

AM 6:40 過ぎには朝食の配膳があり、そのまま食事介助へと業務はなだれ込むので、その前に便器を挿入しないと私が流れに支障をきたすことになり迷惑をかけるので遅れた時間を巻き返すため、ここからナースコールを押して受け身から積極的働きかけに切り替える。「人を確保できたら便器をお願いします」と依頼。

AM 6:30 二人介助で便器挿入し、その流れで挿入しながら服薬。私は薬を飲ませてもらいながら、リーダーが「指示板に AM 5:30って書いてあった、ごめん」という言葉に続けて「でも、そんなこと言ってたら(業務)回らんわ…」という(おそらく業務役割分担のこと)を聞きながら「意味不明な発言、知るかよそんなこと」と冷たく私は思いながら、ソリタ水のコップを替えてもらう。結局、忘れることはあるから業務の進行を(それは患者の日課でもある)遅らせないためにも患者はナースコールを押す必要がある。この状況を患者か職員の責任にしても誰も幸せにはなれない。

AM 6:39 ソリタ水を終了して、なんとか配膳前に終わらせて、ここから約1時間は誰も呼ばずに済む。

AM 7:28 排便終了。「人を確保できたら便器を外してください」と依頼。

AM 7:42 便器撤収・右側臥位。

 以上、この日の深夜勤帯の私の業務は終了したが、今日は受け身から積極的な職員への働きかけに切り替え、約25分の遅れを取り返した。AM5:10〜5:20座薬挿入の業務役割分担は明確ではないため、積極的働き掛けで座薬挿入を要請する。だいたいAM6:20過ぎると、フリー業務のナースはAチームをサポートするためAチームに移動し、Bチームはリーダー看護師と介助員とで業務を回す。その前のタイミングでフリー看護師に頼んでも入れてもらえず、リーダー業務が座薬を入れることが多い。どちらかといえばリーダー看護師が入れるという認識の職員が多いように感じる。この日のリーダーは人によって対応が違うように思われるが、ベテランにありがちな傾向だと思う。
 もちろん満床50の病棟の毎日は刻々と変化して業務は流動的であり、患者も職員も平穏な時間はない。しかし、この日は重症患者がいるような空気は感じられなかった。この日のリーダーは普段から、どの業務も後輩に次々指示を飛ばすか無言で仕事を回すが、同年代の同僚ならそのようなことはなく自分から動く印象がある。このことを特に若い職員は口に出さずとも少し不満に感じ快く思っていないかもしれない。しかし判断力に優れた頭のキレがあり仕事が早く出来る。
 仕事が早く出来るという意味には2つの側面があり、1つは本当に仕事が早く出来て、もう1つは要領良く手を抜く方法を知っている。患者の場合は処世術として職員の特徴や職員間の人間関係を観察し把握し、その日の職員の組み合わせで自分に及ぶ影響を考えて立ち回れれば良いが、要領を得ず無用な反応をしたりすれば摩擦が起きる。当然、職員も人間なので忙しさの忘れることもあるし、独断で緊急性を判断することもあるが、この対応に私は怒りを表出させていた。
 しかし本当に来れない場合が多い。気の弱い患者は遠慮気味に遅さを指摘すると、「ごめん、ごめん忘れている事もあるし呼んでね」と切り抜けるナースもいるが、ベテランナースともなると患者を選び逆ギレして自らの言動不一致を無条件に受け入れされる。多くの患者が起床後に鼻マスクを外さず着けたまま顔拭きを済ませ(朝の歯磨きはない)、座薬または浣腸、便器挿入の業務になだれ込む時間帯でもあり、ある職員は「魔の便器ラッシュ」と呼び、大きな流れ作業のベルトコンベアに患者を載せないと業務が回らない実情があり、適正な負荷を超え病棟が稼働させているのが日常である。

 特定の個人や病院を批判するものではないと前置きするが、病院という名の強制収容所に障害者を必要以上に押し込め、社会が作った巨大な虐待装置の中で死亡退院するまで不幸の歯車はギシギシ音を立てながら無慈悲に回り続ける。患者に最も身近な人間が気付かないうちに動力源になっているのだから悲劇でしかない。

 患者は経済動物として飼い殺され社会の片隅で命を消していく。


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古込 和宏  ◇こくりょう(旧国立療養所)を&から動かす  ◇筋ジストロフィー生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇病者障害者運動史研究  ◇全文掲載 
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