日本に暮らす世界各国の女性が集まり、教育・文化活動を続けているボランティア団体CWAJが、主催する奨学金制度の今年度対象者を紹介する集まりを14日、東京都内で開いた。視覚障害学生奨学金(150万円)を受ける2人の男性も会員らの前でお披露目された。
一人は、立命館大大学院先端総合学術研究科博士課程に在籍する中村雅也ナカムラマサヤさん(49)。徐々に視力が低下し、現在は光を感じる程度の中村さん。元高校の国語科教諭で、盲学校での勤務経験も持つ。大学院に在籍して今年が4年目で、障害のある教員の教育実践に当たり必要な支援や社会資源について研究を進めている。教育現場や当事者のニーズを知る立場から研究した成果を社会に発信するほか、後に続く教員や福祉関係者の養成に関わることをこの先の目標にしている。「現場の18年間は生徒や同僚たちから学んだことが多く、仕事をしながら教えてもらったようなものです。現場では貢献できませんが、研究の世界から還元していきたいです」と話す。奨学金については、視覚障害者になると晴眼者より時間と手間がかかるのを実感するといい、これらの課題解決に充てる考え。「研究本体に打ち込めるのは大変ありがたいことです」と話している。
もう一人は、大阪大大学院基礎工学研究科博士前期課程在籍中の岩田翔太郎イワタショウタロウさん(23)。弱視で視野狭窄(きょうさく)がある岩田さんがテーマとするのは、次世代薄型ディスプレイや照明器具に応用される有機ELと呼ばれる電子部材に欠かせない発光性分子の研究。元々から化学の分野に興味があり、視力が下がり対象が限定される中にあっても、自分ならではと見つけたテーマ。将来の照明の発展につながる研究だけに、見えにくさを抱えながら生活する人にも貢献できると考えている。理系の分野で正確なデータの扱い方など研究の在り方が問われていることについては「視覚障害がある分、危険物の扱いなどは細心の注意を払い、万全の準備を整えています。データの信頼性を得るための、精度を高めるのにも役立っています」と話す。