HOME > 全文掲載 > 安楽死・尊厳死 2012 >

「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」に関する声明

NPO法人医療的ケアネット→尊厳死法制化を考える議員連盟 2012/08/03 [MS Word版]


2012年8月3日
NPO法人医療的ケアネット
京都市南区吉祥院石原上川原町21
理事長 杉本 健郎
理事・監事一同

尊厳死法制化を考える議員連盟
増子 輝彦 会長

 わたしどもNPO法人医療的ケアネットは、痰の吸引や経管栄養(胃瘻等)を必要とする重い障がいのある人々が「当たり前に暮らせる社会」を実現するために、具体的な政策提言、支援者養成、さらに様々な調査・研究に取り組んでいる団体です。
 今回、「尊厳死法制化を考える議員連盟」によって国会上程を予定されている「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」(以下「法案」)について、当NPO法人としての意見および懸念を示し、法案の撤回を希望する旨をお伝えいたします。
 法案における「終末期」の定義については「二人の医師の判断」で行うとなっていますが、それではなにをもって「終末期」とするのかは、それぞれ医師の「主観」に左右されることとなり、大変曖昧なものであると言わざるをえません。根拠が曖昧である判断を「法律」の中で認めることについて大変疑問を感じます。
 またこの法案によって「人工呼吸器を使って生きる」、「胃瘻や経管栄養で生きる」という重い障がいのある人々にとっては「当たり前でかけがいのない生」を、「尊厳のない生」としてしまう危険性をはらんでいるということも指摘しておかねばなりません。当法人ではどのような様態であろうと、いかなる年齢であろうと、当然に存在する「尊厳ある生」を保障するために活動しており、ある特定の状態を「尊厳のない生」とされることには断固反対いたします。 
 当法人で「医療的ケア」と称しているこれらの「生きる術」によって、安楽に幸せに暮らせる社会をつくりだすことこそが、多様な生を認める「より豊かな社会」であることは、国連の「障害者権利条約」を持ち出すまでもなく自明のことです。
 「治療の不開始」の背景に「治療しても重い障がいが残るなら治療せずともいい」という発想がある以上、到底認められるものではありません。また「延命措置の中止」という言葉が終末期の定義の曖昧さとともに、医療的ケアを必要とする重い障がいのある人々に、日常的に「生きるに値しないいのち」であるかのような重圧をかけることにもなりかねません。必要なのは「治療の不開始」や「治療の中止」ではなく、「尊厳ある生」を保障するために介護や医療がきちんと保障されることです。
 法案には「障害者への配慮」という文言もありますが、この法案が「治療の不開始」に触れている以上、それは、この国に暮らす人々に対する医療が「他者の判断によって、選択的に行われないこともありうる」ということを意味しています。上述のような理由で「治療の不開始」とされることは、重い障がいのある人々の「存在の否定」につながる可能性のあることを厳しく指摘せねばなりません。
 これらの点から、この法案が、障がいのある人々への十分な配慮に基づいて提案されたとは考えにくく、法案の撤回を求めます。


UP: 20120815 REV:
安楽死・尊厳死 2012  ◇全文掲載 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)