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「改めて尊厳死の法制化に強く反対します」

 人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会) 会長 大塚 孝司 20120712

last update:20120712

2012年7月12日
尊厳死法制化を考える議員連盟
会長 増子 輝彦 様

人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)
会長 大塚 孝司

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改めて尊厳死の法制化に強く反対します


 国会議員のみなさまには、2012年3月13日付で、当会から意見書「尊厳死の法制化に反対します―バクバクっ子『いのちの宣言』とともに―」を配布させていただきました。その中で、私たちは、日常的に人工呼吸器、経管栄養などを必要とする子どもたちとともに歩んできた立場から、次のようにお伝えし、尊厳死法制化への懸念を表明いたしました。

 法案では、「適切に治療しても患者が回復する可能性がなく、死期が間近と判定された状態を『終末期』と定義」されているようですが、人の命とは、専門家といえども簡単に推し量ることなどできないことをバクバクっ子たちが証明しています。
 バクバクっ子のほとんどは、当初、医師より生命予後不良との宣告を受けたものの、それらの予測を大きく覆して、それぞれの地域で様々な困難に直面しながらも、年齢に応じた当たり前の社会生活を送りたいと願い、道を切り拓いて来ました。医療によって命を救っていただき、サポートしていただいたからこそ、彼らの「現在」があります。
 その生き抜く彼らの姿から、生きても仕方のない命など一つもないことを私たちは教えられました。さらに、彼らの未来を阻む最も大きな障壁は、彼ら自身の障害や病気などではなく、わたしたち家族を含めた社会の「重い障害や病気を持って生きることは尊厳がない」という決めつけであることにも気づかされました。

 日本尊厳死協会副理事長の長尾和宏医師でさえ「末期を定義するのは非常に困難だと思う。死んでからしか分からない。死んだらあの時が末期だったということです。」(7月3日東京弁護士会主催シンポジウム)と認めています。さらに「法律を作りたいわけではない。平穏死ができれば法律はどうでもよい。」(同)、「在宅の現場で尊厳死、平穏死、自然死は普通に行われている現状にある。」(3月22日議連総会)と発言しています。

 このような現状にあって、法案の名称こそ「患者の意思の尊重に関する法律案」となっていますが、定義ができない「終末期」をわざわざ定義し、治療の不開始や中止を認めようとする法律をつくることの本当の目的はどこにあるのでしょうか。たとえ「障害者等の尊厳を害することのないように」との一文が入ったとしても、法律が出来てしまえば、人工呼吸器や経管栄養の助けを借りて生きている人たちに対して、『「自己決定」のもと「尊厳死」を選択している人がいるのに、なぜそうまでして生きているのか、なぜ死なせないのか』という社会の無言の圧力がかかることは必至です。
 患者の意思を尊重した医療の実現のために必要なのは、尊厳死の法制化ではなく、どの様な選択をしても医療・福祉・介護による支援が保障されることと、患者や家族に対する十分な情報提供です。

 私たちは、ここに改めて、尊厳死法制化に対し強く反対いたします。

*作成:櫻井 悟史
UP: 20120712 REV:
全文掲載  ◇安楽死・尊厳死 euthanasia / death with dignity 2012 
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