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レビュー:《Velvet Moon vol.122》Bridget Scott+森定道広

村上 潔 2016/04/26

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last update: 20160426


 コピー的に演じられる能の所作。どこか外在的で、形式化された動き。
 やがて身体がその規格動作に適応できなくなる。誤作動としてのブレ・揺らぎが生じる。
 その誤作動としての動きが、時とともに人間らしい自然な動きとして定着してくる。
 しかしそれは突然、パソコンを前にしたデスクワークの動作にとってかわる。当然、見るからに不自然な身体のありようだ。不条理ささえ感じさせる。
 案の定、身体はその規格動作に耐えられず、また誤作動を起こす。そして、時間をかけて動きを変質させ、身体の安定性を取り戻していく。
 最後は何かを包み込むような、しなやかで穏やかな動き。Bridgetは冒頭からずっと表情を変えず、つまり内面を見せずに身体を動かしてきた。ここで包み込まれていたのは、疎外されてきた(不特定の人々の)内面・精神ではなかったか。
 時代と場所を越えて繰り返されてきた、絶えざる人間の規格化の試み。必然的に引き起こされる不適応。そこでまず生じるのは、生物的なリカバリーの現象だ。必死でバランスをとろうとする身体。それによって取り戻される精神性。このパフォーマンスでは、その自律的な回復過程の意味とリアリティが、きわめてプラグマティックに、フィジカルに示されていた。マテリアリズムとヒューマニズムのあいだを探求するBridgetの志向のエッセンスが、簡潔に表れていたように思う。


◆『Velvet Moon vol.122』
(2016/04/25 at UrBANGUILD)
・今貂子+庄田次郎
・Bridget Scott+森定道広
・酒井エル+Jerry Gordon
http://www.urbanguild.net/event/events.html


*作成:村上 潔
UP: 20160426 REV:
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