ADA法の重要な規定は、障害者を選別するか、あるいはその傾向がある適格基準を課したり、適用したりすることを、その基準がサービスの提供のために必要であると示すことができない限り、禁止する規定である。「安全」と「直接的な脅威」は、将来の養親として考慮する際に、個人を選別するために、障害に関連した基準を用いることの正当性を示すのに使われる。しかし、ADA法は、当該の危険と個人がもつ実際の能力・障害を決定する際には、現在の医学的知識あるいは最良の入手可能な客観的証拠をもとに、実際の危険性と合理的な判断に基づいた個別的評価を義務づけている。特定のカテゴリー、例えば、視覚障害、聴覚障害、HIV感染、あるいは薬物の使用と治療歴に基づいて、将来の養親として障害者を拒否することはADA法に違反し、養子縁組斡旋機関は責任を問われることになる。(Freundlich, 2014)養子縁組斡旋機関は、養親候補について障害を理由に一律に不適格にすることはADA法で禁止されている。したがって、例えば、重い変形性関節症の女性であっても、家の中がその女性に完全に適応した状態に整備されており、夫が育児と家庭の管理に積極的にかかわる場合、養親としての適格性に問題はないと判断される。実際にこの政策下で、先天的障害で重いものを持ち上げることが困難な単身女性が、1995年と1998年に年長の女児を養子に迎えた事例が報告されている(Pertman, 2000)。
第1条(目的)同試案において「養親希望者の不適格事由」を定めた第27条では、「日本国内に住居を有しない者」が不適格とされた。現在、国外居住者が来日から数日ないし数週間のうちに、乳児を連れて帰国するケースがある。しかし、こうしたケースでは、試験養育状況の把握や養子縁組の成立確認、縁組成立後の監護状況把握が現実的に不可能であるために規制するものである。
この法律は、不適切な養子縁組あっせんが児童の利益を著しく侵害することにかんがみ、民間あっせん機関の許可などについて定めるとともに、養子縁組あっせんに係る業務について、必要な措置を講ずることにより、児童の保護を図り、あわせて養子あっせんの促進および不適切な養子縁組あっせんの防止を図り、もって児童の福祉の増進に資することを目的とする。
第二十三条締約国は、家族や親族から監護を得られない障害児に対し、「地域社会の中で家庭的な環境により代替的な監護を提供するようあらゆる努力を払う」ことが求められる。また、障害者も養子縁組によって親となることができ、国から適当な援助を受けることができるのである。
…(中略)…
2 締約国は、子の後見、養子縁組又はこれらに類する制度が国内法令に存在する場合には、それらの制度に係る障害者の権利及び責任を確保する。あらゆる場合において、子の最善の利益は至上である。締約国は、障害者が子の養育についての責任を遂行するに当たり、当該障害者に対して適当な援助を与える。
…(中略)…
5 締約国は、近親の家族が障害のある児童を監護することができない場合には、一層広い範囲の家族の中で代替的な監護を提供し、及びこれが不可能なときは、地域社会の中で家庭的な環境により代替的な監護を提供するようあらゆる努力を払うことを約束する。
(外務省の仮訳文より引用)
このように私とナナの日常は、毎日が普通に親子の暮らしです。しかし、同時に里親・里子である私たちは、社会的養護の現場の真っ只中にいるわけです。実親と縁の薄かったナナが、私という里親に出会ったことで、家庭の中で愛され大切にされる暮らしを得ました。そして、多くの人に支えられながら、自分にあった教育を受けてのびやかに成長していきます。一方、私の人生も、ナナとの出会いによって、人間関係も広がり、以前には考えられなかったほど豊かなものになりました。これまで里親制度から障害児は排除され、障害児が家庭環境に恵まれない場合は、家庭に代わる環境として施設で生活することが多かったと指摘される(庄司 2010)。現在、障害児の家庭養育の保障のために、子どもの障害の有無にかかわらない積極的な里親委託、里親への研修や個別的支援、里親と障害児施設や専門家との連携が求められている。
障害のあるナナの子育てでは、もちろん悩むこともあります。血のつながりのない、途中参加の子育てですから、親子の絆が結ばれるまでにも多くの時間が必要でした。けれど、ナナが見せてくれる、毎日のちょっとした成長や満面の笑顔がいつも大きな喜びを与えてくれ、私を支えてくれました。苦労もありつつ、それに倍する喜びもあるいという生活は、どんな子育てにも共通するものでしょう。(鶴丸 2010: 11-12)