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「尊厳死」の法制化に断固反対する声明

日本脳性マヒ者協会「全国青い芝の会」 2013/09



尊厳死法制化を進めようとする各位 様

  私たちはこの健全者社会にはびこり続ける障害者差別と長年にわたり闘いつづけてきました。それは、私たち障害者を「本来あってはならない存在」と位置付け、この世に生きること自体を否定する優生思想との闘いでもありました。
  それは親による障害児殺しから始まりました。障害者を不幸と決め付け、「死んだほうが幸せなんだ」という思いからの犯行だという事ですが、この我が子を殺した親に同情し、地域の住民からは減刑嘆願運動が沸きあがりました。
  こういったことを許すことは、私たち自身の命を私たち自身が否定することであり、障害者の生を否定していく社会が近づくことであると、社会に対し鋭く問題提起を行なってきました。この「子殺し事件」は今も後を絶たないし、減刑嘆願運動という社会現象も後を絶たない現状です。
  このように親が障害児を殺す背景には健康で元気な子を産むのが当然だという社会の暗黙の優生思想の圧力もあり、また障害児を育てていく社会環境があまりにも無かったことに大きな原因があると言えます。その意味では殺す親も被害者だと思われるのです。
そんな立場で私たちは運動を進める中で障害者を合法的に生まれないようにしようとする動きは、旧優生保護法を始めとし、最近では出生前診断がより科学的に着床前診断、遺伝子診断という形で行われてきています。更には重症の患者を「死体」と判断し殺していく  「脳死・臓器移植法」の拡大も行われました。
このように人間の命の価値を社会的な一定の能力で決定する社会は、ますます強化されようとしています。それを更に露骨に現すものとして出てきたものが、「尊厳死」の法制化の動きです。福祉の切り捨ては一番弱いとされる存在から始めるのが今までの国家の常道です。何時かまた来た道を転がっていくような事があってはならないのです。
  しかし現実に起こっていることは私たち障害者を始めとする社会的に「弱い」とされる人間を抹殺しようとするこの動きは、「人間の定義」を健全者に置き、社会的に価値のある人間、つまりは「社会的労働力のある者」が生きていく価値のある人間で、それ以外の者は「人間」ではない、「無駄な命」なのだといわんばかりのものであると受け止めています。またこれは、国の財政難を理由に医療費等の財出削減をもくろんでいるようにも思われます。これは福祉や医療に予算を割かずに済む方法として「役立たずの状態になった者には死を」という政策法作りであるといえます。
  そもそも人間の生のあり方を尊厳のある状態と尊厳のない状態に分けて考えること自体が障害者差別につながるものです。人に死を選択させ、死を強要するように考えさせる社会は、命の選別を合法的に行う社会であり、許されません。
人間は命を守るために社会をつくってきたのであり、誰もが安心して生を全うできる社会を目指していくべきだと思います。
  私たちは、このような考えから、どんな状態の者であろうとも人間として認め、命を尊重する立場から、また殺される側として、この「尊厳死」の法制化に断固反対します。
現在、与野党の国会議員で「尊厳死法制化を考える議員連盟」が100人以上で過去に「金のかかる者は早く死んだ方が良い」と言わんばかりの発言をした麻生太郎氏を最高顧問にして法制化を目論んでいる事は私たち重度障害者は凄く恐ろしいものを強く感じています。絶対に認められない事をここに声明します。

2013年9月  日
日本脳性マヒ者協会「全国青い芝の会」
                 会長 金子和弘
                 山口県周南市周陽2-2-55
                 TEL 0834-51-4798


UP: 20130619 REV: 
青い芝の会  ◇安楽死・尊厳死 2013  ◇安楽死・尊厳死  ◇全文掲載 
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