女的非所有論――産・自然・再生産
村上 潔 2013/07/26
last update: 20160418
この講義では、「女と非所有」、「女の非所有」という問題について考えてみたいと思います。なぜそんなことを考えるか。女は、母は、主婦は、いったい何を守ろうとしているのか、守るためにいったいどんな行動をとるのか、守ろうとすることでどんな葛藤が生じるのか、を考えようとするとき、この問題がとても重要な因子となるからです。
女の「非所有」の構成要素として、「産」・「自然」・「再生産」の3つが挙げられます。これまで、女性労働と再生産労働との関係は長く議論されてきましたが、それは再生産労働の「価値」(の高さ)とそれを担う女性への対価(の低さ)の不均衡を問題化する、という趣旨によるものでした。再生産(労働)は、市場労働・市場経済という《所有》の領域と切り離せない側面をもつ一方、サブシステンス(生存維持経済)という《非所有》の領域の構成要素でもあります。
「非所有」とは「自然」の規範であり、条件でもあります。産む性である女はなぜ「自然」と結びつけられるのか、女はその結びつきのありようをどのように自ら身体化し、「非所有」の領域を生きる実践を主体的に展開することができるのか。こうした問題を考えてみましょう。
◆京都自由大学2013年度一般講座
2013/07/26(金)19:00〜21:00
講師:村上潔(立命館大学大学院非常勤講師、現代女性史)
https://kyotofreeuniversity.wordpress.com/111-2/
*作成:村上 潔