マイク・オリバーは障害者団体を登場の順序によって5段階に分けている1)。
第一に、政府機関とのパートナーシップを基にして障害者たちを支援するスポンサー、慈善団体が最初にできる。第二に、障害者の経済的な問題に関連して議会を説得するロビー団体が登場する。このような団体は大体、非障害者らが組んでコントロールする「障害者のための団体」(organizations for the disabled)である。第三に、1970年代初めから消費者主義を基にした障害者の自助団体が登場する。第四に、民衆主義を基にした活動家の組織が現れ、第五には消費者主義および民衆主義組織などが連帯した傘型組織が出てくる。オリバーは自助団体の段階からは「障害者当事者の団体」(organizations of the disabled)に分類し、このような団 体らが障害者運動を新社会運動に導いたと主張している。
韓国障害者運動の場合、欧米とは異なり、1980年代半ばの民衆主義を指向する性質が強かった青年障害者運動組織が先に結成されてから10年くらい過ぎ、保護組織を指向する団体(韓国DPI)が登場する。
また、自立生活センターなど消費者中心主義団体らは2000年以降になってから登場する。このような発展の様相は韓国障害者運動の特徴を表している。少人数の運動の脈絡からスタートした欧米の障害者運動とは違って韓国のそれは1980年代の非障害者─民衆運動の影響下から始まったので、最初から〈障害─民衆主義〉の伝統が強かった。
韓国の民衆運動がいわゆるPD(民衆民主派)─NL(民族解放派)対立の歴史なら、障害者運動は〈障害─民衆主義〉と〈障害─当事者主義〉の対立として説明できる。〈障害─民衆主義〉というのは障害者運動を民衆解放運動の一つの道として認識し、これを土台にして実践する理念を合わせた〈暫定的〉概念である。この主張に同調する団体にはノドル障害者夜学、全国障害者自立生活センター協議会に所属する複数の自立生活センター、女性障害者の共感、全国障害者父母会などがあり、すべて2007年に全国障害者差別撤廃連帯として結集した。この連帯には障害者の団体だけではなく、(旧)民主労働党、(旧)進歩新党、社会党、行動する医者会、全国教育者組合なども参加していた。
一方、〈障害─当事者主義〉は障害問題に対するスペシャルリストの介入に抵抗し、障害者運動の理論、実践、組織を障害者自らが判断し、決定し、統制するべきだという主張がある。もっと具体的に言うと、「障害者の政治的な連帯を通じて障害者を抑圧する社会環境とサービス供給システムの不平等な権力関係を批判、牽制することで障害者の権限、選択および評価が重視された障害者の福祉を追求し、その結果、障害者の権利、統合と独立そして自助と自己決定を達成しようとする障害者主導の発展された権利運動」である2)。当事者主義を掲げた団体としては韓国DPI韓国障害自立生活センター総連合会に所属する複数の自立生活センター、韓国障害者人権フォーラム、女性障害者ネットワーク、韓国精神障害者協会、肢体障害者協会などがあり、彼等は韓国障害者団体総連合会と韓国DPIを中心に連帯している。
韓国障害者運動から障害─民衆主義グループと当事者主義グループはそのルーツが同じであるにもかかわらず、1990年末から様々な事をめぐっていまだに対立し続けている。
本報告は上記の二つのグループが登場してから発展していく過程を追いながら韓国障害者運動の歴史を整理し、最近の障害者運動の危機的状況について言及したい。したがって、この研究は韓国障害者運動史を総評し、その回答を出そうとする試みではなく、あくまでもっと多くの論争の為の問題提起だと言えるだろう。