HOME > 全文掲載 >

「尊厳死」法制化に反対する緊急アピール

DPI(障害者インターナショナル)日本会議→尊厳死法制化を考える議員連盟加盟議員2012/02/29


尊厳死法制化を考える議員連盟加盟議員 ○○○○様
2012年2月29日

「尊厳死」法制化に反対する緊急アピール

DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 三澤 了

  貴職におかれましては、日頃より障害者施策の拡充にご尽力いただいていることに対し、心より敬意を表します。
  私たちDPI日本会議は、種別を超えた障害当事者主体の87団体が加盟し、1986年の結成以来、自立と社会参加、権利保障を確立するための活動を進めてきています。近年は2006年に国連で採択された障害者権利条約の批准に向けて、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議などを通じて、さらにその取組みを強化しています。とりわけ、どんなに重度の障害があっても地域での自立した生活の権利の実現を目指して活動を進めています。
  さて、貴議員連盟が法制化を検討している「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」につきまして、私たちは強い危機感を持って受け止めています。なぜこのような法律が必要なのか、誰のために必要なのか理解できません。洋の東西を問わず、歴史上、障害者は生存を脅かされ、厳しい差別と偏見、排除の中で過酷な生活を強いられてきました。21世紀の今日においてさえ、障害者の人権が確立したとは到底言える状況ではありません。
  障害があっても他の人々と同等の、当たり前の暮らしが出来ること、重い病気であっても、必要な医療や介護を受けながら、その人らしい尊厳ある生を保証することこそが、国の責任ではないでしょうか。人間の生死に関わる重大な法制度が、国民的な議論もないまま法案が作成され、国会に上程されようとしていることは断じて許されません。
  以下、現在示されている内容について、私たちの見解を表明するとともに、2点の要望をいたします。

○医療現場における医師と患者あるいは家族との関係は、医師の側に優位性があると言わざるを得ず、対等性を担保するための実効性のある施策の整備がまず必要である。

○「終末期」の認識は個々人によって異なるものであり、一律に法律などによって決められるものではない。

○「延命措置」という表現は、マイナスイメージとして使用されており、必要のないものという認識が前提となっている。人工呼吸器、栄養補給、人工透 析などは、「生きるための必要不可欠な手段」である。「生存期間延長」のための行為はなぜ必要ではないと言い切れるのか不明である。

○「呼吸器は使用しないで欲しい」、「はずして欲しい」という声は現場ではあるかもしれない。大切なことはなぜそうした声が上がってくるのかということだ。その思い、背景を十分に検証しなければならない。手続きとしての「延命措置の差し控え」は、軽々に語るべきことではない。

○免責条項で医師の心理的負担は軽減するであろうか。本条項が法律案の肝であるとすればまさに本末転倒と言わざるを得ない。

○昨年の通常国会で全会一致で成立し8月より施行されている改正障害者基本法では、その第3条に「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」と規定されている。また、基本法改正施行直後にまとめられた障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会の「総合福祉法に関する骨格提言」では、地域で生活する基本的権利として「障害ゆえに命の危険にさらされない権利を有し、そのための支援を受ける権利」の保障を求めている。

  このように障害者権利条約の批准に向けた障害者制度改革では「尊厳にふさわしい生活を保障される権利」を求めているが、現在進められようとしている法制化は、こうした動きと逆行するものと言わざるを得ない。



1.障害者、患者、家族等、当事者・関係者の意見を十分に聴取すること。
2.現在進められている法制化を白紙撤回すること。

特定非営利活動法人 DPI(障害者インターナショナル)日本会議
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5F
Tel: (03)5282-3730 Fax: (03)5282-0017
e-mail: officeアットマークdpi-japan.org

 [MS Word版]
 [PDF]

UP: 20120229 REV: 20120303, 0614
安楽死・尊厳死 2012  ◇DPI(障害者インターナショナル)日本会議  ◇全文掲載 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)