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私たちは、生命維持に必要な治療を拒否するための法案上程に対し、反対いたします。

長尾 義明・岡部 宏生・橋本 みさお→尊厳死法制化を考える議員連盟 2012/01/31


  平成24年1月31日
  尊厳死法制化を考える議員連盟殿

  日本ALS協会会長 長尾 義明
  日本ALS協会副会長 岡部 宏生
  日本ALS協会名誉顧問 橋本 みさお

  私たちは、生命維持に必要な治療を拒否するための法案上程に対し、反対いたします。
私たちALS等神経筋疾患患者は病いの進行に伴い、いずれは常時人工呼吸器を装着し、経管等で水分や栄養の補給をすることになりますが、これらの治療法の確立のおかげで長期生存が実現しています。
  しかしながら、現在の日本において1日24時間、1年365日をカバーする公的介護保障が確立されていないために、長期生存につながる経管栄養や人工呼吸器の治療の開始と継続は、実質的には世話をする家族の犠牲的覚悟に委ねられています。
それゆえALS等の難病患者が家族に遠慮することなく、治療を受けたい、生きていきたいという気持ちを自由に表明できる環境はないに等しく、家族の同意なしには呼吸器の装着が叶えられず、医師にも社会にも見捨てられ、無念のうちに亡くなる患者は後を絶ちません。
  難病患者とて命にかかわる治療に関しては自分の意思で決定したいと思っていますが、ALS等の進行性疾患の場合、早期の事前指示書の作成により治療を断念する方向に誘導されてしまうことが多々あります。重度の身体障害を併せ持つ難病患者が家族に頼らず、個人で生き延びるための保障はいまだ皆無に近い状況にあるため、事前に治療を断って死ぬ覚悟を患者自らが表明してしまうと家族も医師も安心し、呼吸器装着を勧めてくれなくなります。もし、治療を断るための事前指示書やリビングウィルの作成が法的に効力を持つようなことになれば、ますますこれらの患者は事前指示書の作成を強いられ、のちに治療を望む気持ちになってもそれを伝えることが困難になるため、書き換えはことごとく阻止され、生存を断念する方向に向けた無言の指導(圧力)を受け続けることが予想できます。このたび「尊厳死法制化を考える議員連盟」で検討されているという「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」は、その内容から難治性疾患患者や重度障害児者、遷延性意識障害者、頸椎脊椎損傷者、精神疾患患者、また貧困のために医療や介護の自己負担に耐えられない社会的弱者に対して、冷たく自己決定による治療の断念を迫るものであります。
  この法案は患者の権利を謳いながら、実はこれらの予備軍であるすべての国民から生存のために必要不可欠な治療や救急医療を受ける権利をはく奪するものであります。私たちは法案提出に反対する意見をここに表明いたします。
  「誰の尊厳のための死なのか。優先されるべきは当事者の意見と尊厳であることはいつの世も変わってはならない」と人工呼吸器療法も20年目のALS患者は考えています。


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UP: 20120227 REV:
日本ALS協会  ◇ALS  ◇安楽死・尊厳死 2012  ◇全文掲載 
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