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『平成23年度障害者自立支援法第6次アンケート調査報告書・ダイジェスト版』

福島県北地区障がい福祉連絡協議会 201112 24p.

last update:20120221


■福島県北地区障がい福祉連絡協議会 201112 『平成23年度障害者自立支援法第6次アンケート調査報告書・ダイジェスト版』 [PDF], d10

※作業者からのお断り:すみません、グラフの説明が抜けています。できるだけ急いで補填します。ご容赦ください。

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  「平成23年度障害者自立支援法第6次アンケート調査」報告書
  平成22年4月1日施行の低所得(市町村民税非課税)の障害者等の福祉サービス及び補装具に係る利用者負担の無料化のその後及び3・11東日本大震災後の状況について〜

  平成23年12月 福島県北地区障がい福祉連絡協議会


p2
  「平成23年度障害者自立支援法第6次アンケート調査」報告書【ダイジェスト版】
  平成22年4月1日施行の低所得(市町村民税非課税)の障害者等の福祉サービス及び補装具に係る利用者負担の無料化のその後及び3・11東日本大震災後の状況について〜

  平成23年12月 福島県北地区障がい福祉連絡協議会


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  「平成23年度障害者自立支援法第6次アンケート調査」報告書【資料編】

1)障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言(概要)・・・・・・・・・1
2)支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定の仕組み@・・・・・・・・・2
3)支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定の仕組みA・・・・・・・・・3
4)障害者総合福祉法における支援体系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
5)障害者就労支援の仕組みの推移等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
6)障害者総合福祉法における就労支援・日中活動等支援などの関係・・・・・・・・6
7)障害者自立支援法第6次アンケート調査データグラフ・・・・・・・・・・・・・7
  @日常生活における「障がい」を理由とした差別について・・・・・・・・・・13
   どうすれば「障がい」を理由とした差別のない社会になると思いますか?
  Aあなたが障がい福祉に望むことは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
  B震災関連・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
   *震災時どこにいましたか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
   *どこにどれくらい避難しましたか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
   *あの時困ったことは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
   *ライフラインが復旧する前に困ったことは?・・・・・・・・・・・・・・23
   *ライフライン復旧後に困ったことは?・・・・・・・・・・・・・・・・・27
   *誰が安否確認してくれたか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
   *震災に関してのご意見等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
   *原発事故についてのご意見等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
   *震災・原発事故に関する市町村(行政)への要望等・・・・・・・・・・・38
   *その他のご意見等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
8)障害者自立支援法第6次アンケート集計表(施設・事業所用)・・・・・・・・45
9)障害者自立支援法第6次アンケート調査データグラフ ・・・・・・・・・・・53
10)2011年度自立支援法第6次アンケート調査表・・・・・・・・・・・・・・57


p4

  はじめに

 平成23年3月11日午後2時46分、その時を境に私たちの生活は本当に一変した。
 「福島の復興なくして日本の復興なし」という言葉を時の内閣総理大臣から何度聞いたことだろう。今の私たちの状況は、その言葉とは裏腹にいまだに「復興の槌音高く」という状況には程遠い。そして今、私たちに覆いかぶさっている恐怖は、人間の五感を研ぎ澄ましても感じることができない恐怖であり、本当のことを知らされていないのではないかという疑念と全く先が見えないそして明日が見えない不安を極限まで増幅させている。
 今回6回目になる障がい者自立支援法アンケート調査は、千年に一度と言われる大災害時に障がい当事者やその家族、支援者そして施設・事業所がどう行動し厳しい状況を乗り越え生活してきたのかを振り返り、これから何をすべきかを考える機会にすることと新法制定前夜の障害福祉を取り巻く状況と課題を明らかにすることである。
 この調査は「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言−新法の制定を目指して−」(以下、「骨格提言」と表記する。)がまとめられた日の前日8月29日から約1ヵ月間実施したが、前回調査の431名から130名も多く、実に561名の皆さまから協力をいただいた。同時に実施した事業所アンケートも前回調査の24カ所を大幅に上回る40カ所の施設・事業所から回答とご意見をいただいた。
  ※「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言−新法の制定を目指して−」については、その概要版を添付したので参照して下さい。

  目的

 今回のアンケート調査は次のことを明らかにすることを目的としている。
 @2010年4月から実施された利用者負担の軽減措置である低所得(市町村民税非課税)の障がい者等の福祉サービス及び補装具に係る利用者負担の無料化の2年目の効果と課題を明らかにすること。
 A移動支援サービスの抱えている課題を明らかにすること。
 B障がい者に対する差別に関する意見を集約すること。
 C3・11東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故発生後の支援の状況や生活の状況から見えてきた課題を明らかにすること。
 D福島県北地域の福祉サービス利用者の実態及び各事業所の現状を明確にすること。
 E福島県北地域の各市町村の障害福祉計画に反映してもらうべく提言すること。


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  【個人アンケートの部】

  考察
 今回のアンケート調査は、561人の皆様から協力をいただき実施することができた。前回調査に引き続き福島市内の福島市立養護学校、福島県立大笹生養護学校、福島大学附属特別支援学校、福島県立盲学校の保護者の方々138人から協力をいただけたことの意味は大変大きいものがある。

  T.利用料に関すること

 1)2010年4月から実施された低所得(市町村民税非課税)の障がい者等への福祉サービス及び補装具に係る利用料の無料化については、「下がった」と回答した割合が38.7%、「変わらない」と回答した割合が39%【グラフ問2(1)参照】と前回とは割合が逆転した。これは無料化2年目ということが影響していると思われる。また、所得によって利用者負担が無料にならないことについては、「特に何も感じない」が前年度比1.4倍に、「不満だ」が0.7倍という結果になった。このことは「障害者総合福祉法」が目指す「応能負担」という方向が理解されてきたと言えるのではないか【グラフ問2(2)参照】。しかし、配偶者の収入が利用料の算定基礎になることについては「仕方がない」という割合が4.9ポイント増えているが、これは理解されたというよりはあきらめ感があるのではないか【グラフ問3(1)参照】。     
(作業者注:グラフ問2(1)今回の措置で利用料が下がったか)
(作業者注:グラフ問2(2)所得によって利用者分たが無料にならないことをどう感じるか)
(作業者注:グラフ問2(3)あたなの配偶者の収入が利用料算定の基準となることについて)

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 2)障がい児の保護者の収入が利用料の算定基礎となっていることについては、「仕方がな い」の割合が10.5ポイント、「不満だ」の割合が16.5ポイントそれぞれ増えている。このことは、「骨格提言」の中で謳われている「あらゆる分野の活動に参加する機会が保障されるために必要な支援を受けることを障害者の基本的権利として保障する」という考え方が、保護者の皆さんに理解されていることの表れではないか【グラフ問3(2)参照】。
 「骨格提言」では、他の者との平等という観点から、「食材費や光熱水費等の誰もが支払う費用は負担すべきであるが、障害に伴う必要な支援は、原則無償とすべき」としている。前回報告書の「考察」において求めた「保護者や配偶者の収入については算定基礎から除外することが強く望まれる。」ということが「骨格提言」に盛り込まれたことは、このアンケート結果の妥当性を裏付けている。
 3)食費や光熱水費の実費負担については、前回は「払うのが当然だ」と回答した割合より「仕方がない」と回答した割合が11.2ポイント高かったが今回は21.8ポイントも高く、その差が大きくなっている【グラフ問4(1)参照】。このことは「どこで生活していても食べること暮らすことに係る経費は負担すべき」ということは理屈としては理解できないわけではないが、生活の重要な基盤である収入の面や自らが望む場所での生活の保障が十分ではない状況に置きながら、負担は公平に求めることについてどこかに受け入れられないという感覚が消極的な理解として「仕方がない」という割合が高い傾向をより強くしているのではないか。「骨格提言」における他の者との平等という捉え方が、所得が保障されてはじめて平等であるというものではなく食材費・光熱水費という食べること暮らすことのみに平等という観点を持ちこんでいることへの不満感、不公平感として出てきているのではないか。
(作業者注:グラフ問3(2)子どもの福祉サービス利用料査定に当たり両親の収入がその基礎となることについて)
(作業者注:グラフ問4(1)施設や事業所を利用したおt気に給食費などを負担することについて)


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  U.障害者自立支援法の現状

 障害者自立支援法の現状については、@日々の食事など、生活の基礎的な面のお金について、A福祉サービスの利用継続について、B日中活動や仕事の継続について、C外出について、Dこれまでの生活スタイルの継続について、E将来の生活についての6項目すべてにおいて、多少の増減はあるものの傾向としては前回、前々回と同様の結果であるが、@日々の食事など、生活の基礎的な面のお金について、A福祉サービスの利用継続について、B日中活動や仕事の継続について、Dこれまでの生活スタイルの継続については、「とても不安だ」、「不安だ」の割合が減少し「不安はない」、「わからない」の割合が増加するという傾向を示した。しかし、C外出については「とても不安だ」が増加し、E将来の生活については「不安だ」が増加しており、一人ひとりの思いに耳を傾け、「骨格提言」で言っているように地域で自立した生活を営む基本的権利を行使できるようにすることが重要なのではないか【問5(1)〜(6)参照】。
(作業者注:グラフ問5(1)日々の食事など、生活の基本的な面でのお金について)
(作業者注:グラフ問5(2)福祉サービスの利用継続について)
(作業者注:グラフ問5(3)日中活動や仕事の継続について)
(作業者注:グラフ問2(1)外出について)


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(作業者注:グラフ問5(5)これまでの生活スタイルの継続について)
(作業者注:グラフ問5(6)将来の生活について)

  V.移動支援

 移動支援サービスについては、前回の報告書では2010年4月に示された「福島市移動支援事業ガイドライン」に対する課題を提起したが、今回の結果では、その「使い勝手がとてもよい」、「よい」、「まあまあ」を合計すると前回の22.7%から64%へと大幅に改善されている。「ガイドライン」について、市当局と障害当事者団体が福島市自立支援協議会などで丁寧に対話を重ねた結果であると思われる。移動支援サービスだけではなく、あらゆる場面において丁寧な情報提供と合意形成のための努力は不可欠であり、両者のパートナーシップによる不断の努力の必要性を改めて感じることができた事例ではないか【問6(6)参照】。また、利用者の多くが望んでいる「必要な時に利用できる移動支援」「日中活動への参加を保障する移動支援」「行きたい所へ行ける、つまり参加を保障する移動支援」「障がいの種類によって決めるのではなく必要な人が利用できる移動支援」を実現することが前回同様、今後の重要な課題ではないか【問6(7)参照】。「骨格提言」においても「移動の自由の保障が基本的人権に基づく重要な施策であることは判例等でも確認されていることであり、障害者総合福祉法でしっかり明記することが肝要である」としている。その実現を望むものである。
(作業者注:グラフ問6(6)移動支援の使い勝手について)
(作業者注:グラフ問6(7)移動支援に今後期待することについて)


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  W.障がいを理由とする差別

 障がい者差別禁止法の制定に向けた取り組みが始まっており、差別の概念が「不均等待遇(障害又は障害に起因する事由に関連する取扱い又は規定、基準若しくは慣行の適用が、障害者が他の者との平等な機会の享受を妨げ又は不利益を与える場合をいう。ただし、その目的が正当であり、その目的を達成する上で、必要かつ適切な手段である場合はこの限りでない。)」と「合理的配慮を行わないこと(障害者が他の者と平等な機会を享受することができるように、その者の必要に応じて現状を変更することを行わないことをいう。ただし、過重な負担が生じる場合は、この限りでない。)」の2類型に整理されたが、「差別」に関しては2回目となる今回の調査も、定義や意識が十分ではない状況の中で実施したことを前提として考察する。
 結果として「障がいを理由とする差別を感じている」と回答している割合が前回より2.7ポイント多い42.6%となった【問7(1)参照】。障害別では知的が48%、精神が39%、身体が36.8%となっている【問7(1)参照】。
 差別を感じた場面については、
 身体;前回「トイレ、移動、宿泊、就職」  知的;前回「移動、通勤・通学とトイレ(同率)食事」
    今回「就職、移動、トイレ、旅行」     今回「移動と通勤・通学(同率)、旅行、就職」
 精神;前回「就職(52.3%)、その他、移動、宿泊と通勤・通学(同率)」
    今回「就職(76.1%)、通勤・通学、その他、旅行」
になっている【問7(2)参照】。この結果から前回と比較して身体、知的は就職の場面で差別を感じる割合が高くなり、精神は、前回も就職が最も高い割合だったが今回は前回より23.8ポイントも高くなっている。
(作業者注:グラフ問7(1)障害を理由とする差別を感じたことはあるか)
(作業者注:グラフ問7(2)差別を経験した場面は?)


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  X.市町村に望むこと

 前回、前々回と比較して多少の増減はあるものの傾向としては同様で、「福祉サービス、地域の受け皿、利用しやすい料金、相談窓口の順」になっている。特に「利用料金」については、問2〜問4で利用料、利用者負担ということで聞いたが、どの項目も「仕方がない」と消極的な理解を示していた割合が30%以上であった。しかし、ここで「市町村に望むこと」ということになると、「利用しやすい料金」を望む割合が21.7%として表れた。現状については仕方ないが、これからの障害福祉サービスという視点で考えると、当事者の必要とする福祉サービスが地域の中に十分に整備され、利用料を心配することなく利用でき、何か困ったことがあればいつでも相談に乗ってくれる窓口を必要としていることは明らかである【問8参照】。
(作業者注:グラフ問8あなたが住んでいる市町村に望むものは?)
(作業者注:グラフ問12あたなが今後福祉サービスに望むことは?)

  Y.今後、福祉サービスに望むこと

 「負担軽減、福祉サービスの充実、安定運営と配置人員の増員、生活の場の確保、移動支援の充実、医療費の負担軽減の順」になっている。全体的には負担の更なる軽減と生活の場、日中活動の場、安心して地域で生活するためのサービスを求めているということに集約できるのではないか。障がい当事者の一人ひとりが安全に安心して人生を全うできるサービスが必要であり、地域になければみんなでつくっていけるような仕組みを望んでいるのではないか【問12参照】。


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  Z.東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故後の状況

 地震発生時間が午後2時46分ということもあり、身体、知的の方の半数以上は施設・事業所で震災に遭ったが、精神の方は逆に53.4%が施設・事業所以外の場所で震災に遭っている。避難した方の割合も身体、知的と比べると3倍以上になっている【問14(1)(2)‐1参照】。
(作業者注:グラフ問14(1)災害時どこにいましたか)
(作業者注:グラフ問14(2)-1避難はしましたか)

  [.福祉避難所に関すること

 福祉避難所を知っているかという問いに対しては、「知らない」と回答した割合が三障害とも圧倒的に多くなっている【問14(2)-2参照】。しかし、福祉避難所が必要かの問いに対しては、三障害とも圧倒的に「必要」と回答している【問14(2)-3参照】。身体の方は、バリアフリーいなっていない多くの避難所は利用できず、知的の方は周りの避難者に迷惑をかけるから利用せず、精神の方は、大勢の避難者がひしめき合う避難所にはいられない。多くの方々から寄せられた意見からも、これが今回の震災における避難所に関わる状況であったと考えられる。この大震災の前に福祉避難所が指定され、かつ広く周知されていればということを強く感じる。また一方では、一般の避難所がバリアフリーで、高齢者を含めた災害要援護者が安全に安心して利用できるようになっていれば・・・と感じざるを得ない。
 (福島県の事前指定を受けた福祉避難所は2009年12月6日付毎日新聞では59カ所、2011年3月15日付読売新聞では11カ所、2011年5月11日衆議院厚生労働委員会会議録では37カ所とまちまちである。福島市に確認したところ、東日本大震災前に指定した福祉避難所はないとのことであった。)


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(作業者注:グラフ問14(2)福祉避難所は知っていますか)
(作業者注:グラフ問14(2)-3福祉避難所は必要だと思うか)
(作業者注:グラフ問14(3)-2半年後の今ふりかえって必要だと思う支援は)
(作業者注:グラフ問14(3)-2半年後の今ふりかえって必要だと思う支援は)
(作業者注:グラフ問14(3)-1あの時、実際に困ったことはなんですか?)

  \.震災関連

 あの時実際に困ったこと、半年後の今あの時を振り返って必要だと思う支援(復旧前と復旧後)についても調査した。やはり実際に困ったのは食料等であった。半年経過した段階であの時を振り返り何が必要だったのかを聞いたが、ライフラインが復旧する前は、食料、医療・治療、障害当事者への配慮の順だったが、復旧後は、食料等の支援は依然高いが、障害当事者への配慮、助け合い・つながりあいの割合が高くなっている。

【問14(3)-1〜14(3)-A参照】
(作業者注:グラフ問14(4)安否確認はあったか
(作業者注:グラフ問14(5)-1災害時要援護者制度を知っているか)
(作業者注:グラフ問14(5)-2災害時要援護者制度に登録しているか)
(作業者注:グラフ問14(5)-3登録している方へ、この制度で支援を受けたか)


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  ].安否確認

 三障害全体では「安否確認がなかった」という割合が17.8%であり、この現実はやはりきちんと受け止めなければならないのではないか【問14(4)参照】安否確認については、災害時要援護者登録制度が機能していればと思ってしまうが、調査結果でも明らかなように全体で71.5%の人が制度を知らなかった【問14(5)-1参照】。そして全体でも9.3%の人しか登録していない【問14(5)-2参照】。登録者数について割合から算出すると、身体は9人、知的は40人、精神は3人、合計52人ということになるが、実際にこの制度で支援を受けた割合になると、52人中6人の方しか安否確認等の支援を受けていないということになる。【問14(5)-3参照】
(福島市災害時要援護者登録制度は、福島市では2009年に災害時要援護者の実態調査を実施し、2010年に登録申請を行っていた。しかし、今回の地震ではほとんど機能しなかった。ちなみに平成23年5月末現在では登録者13,800人(66.6%)、非登録者6,932人、合計20,732人。平成23年9月末現在では登録者13,821人となっている。災害時要援護者の地域支援体制については、福島市のマニュアルによると地域の消防団、町内会・自主防災組織、民生委員、社会福祉協議会、地域支援者、地域包括支援センターが福島市と連携・協力して支援する体制になっている。しかし、障害福祉分野で言えば、相談支援事業所が地域で生活する三障害の当事者の相談窓口であり、その機能を有効に使う必要があるのではないか。)


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  まとめ

 「骨格提言」が平成23年8月30日に出された。厚生労働省はこの提言を踏まえて平成24年の通常国会に法案を提出するための準備に入っている。障害者自立支援法が施行された平成18年度から、制度を利用している当事者やその家族、そして施設・事業所の皆さまのご意見を毎年報告書としてまとめ福島県北地区の市町村に提言してきたことの多くがこの「骨格提言」に盛り込まれていることは、私たちの地道な活動の成果であると自負するものである。
 加えて今回の調査は、3・11東日本大震災及びその後発生した東京電力福島第1原発事故に係る放射能の影響により、被災直後から厳しい状況に置かれた障害当事者及びその家族の方々、施設・事業所の声を伝えることが大きな目的である。

 1)平成24年の通常国会に上程される障害者総合福祉法が、この「骨格提言」を踏まえたものであることを切に望むものである。 
 2)東日本大震災及び東京電力福島第1原発事故等に係る災害時要援護者に対する支援(安否確認、避難支援等)については、すでに登録している方もいたなかで十分に機能できなかったことは今回の結果からも明らかである。また、障害の種別によって、支援に大きな差が出たが、地域で生活している身体や精神の方は単身での生活であり、知的の方は家族と同居しての生活であることが、この差となって出てきているのではないか。災害時要援護者登録制度の対象者の見直しや登録ということの是非について早急な検証が求められるのではないか。
 3)福祉避難所の周知が不十分であったことは今回の結果から明らかである。福祉避難所を多くの障害当事者やその家族が必要としていることも明らかである。実際は、誰も想定しなかった状況の中で市の職員の方々が障害当事者のために懸命に避難場所を確保したり誘導したりしてくれた。本当に心から感謝しなければならない。しかし、そういう場所に避難できた障害当事者と、避難できずに誰もいない自宅で暗闇と揺れの中で一人不安な時間を過ごさなければならなかった障害当事者もいた。年老いた親と暗く寒い家の中で誰か来てくれるのをじっと待っていた障害当事者もいた。多くの障害当事者及びその家族の方が恐怖の中にいたことは不安事実である。障害当事者やその家族も交え、その悲痛な叫びを誠実に受け止める場、一緒に考える場、そして地域の中で生活する障害者が安心して避難できる場所を早急に整備することを切に望むものである。
 4)障害者権利条約が謳っているICFの概念に基づく活動・参加を保障するための「移動支援」の実現である。何よりもそれぞれの地域の実情に合わせて「活動・参加」を保障するためには何をしなければならないのかを広く議論し、制度として位置付けること


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を切に望むものである。
 5)障害者差別については、障がい者制度改革推進会議差別禁止部会において議論がなされているところであり、差別の類型については「不均等待遇」と「合理的配慮を行わないこと」の2類型とすることで進められている。差別をなくすためには、差別とは何か、合理的配慮を欠くとはどういうことなのかを障害当事者やその家族、福祉施設や雇用先の事業所の従事者、従業員を含めた地域住民すべてが共有することから始めなければならないし、このことを抜きには実現できないことを十分認識し、差別のない社会の実現に向けて取り組むことが必要なのではないか。
 6)障害当事者が地域で自立した生活を営むための基本的権利を享受する社会をなぜ目指さなければならないのか、人と社会の関係性の中で生じる生きづらさ、生活のしづらさをなくすために何をすべきかを明確にし、全ての人々がそのことを共有し実現できる社会を目指すことが必要ではないか。


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  【事業所アンケートの部】

  考察

  T.事業所の現状
 1)全部で40の事業所(福島市31、二本松市1、伊達市8)からの回答があったが、事業としては53の事業がなされている。【問1(1)〜(2)参照】

 2)運営主体は社会福祉法人が16(40%、前年比-6ポイント)、非営利法人が20(50%、前年比+4ポイント)、営利法人が2(5%、前年比-3ポイント)であり、割合としてはほぼ前回と同様、非営利法人・営利法人が過半数を超えた。【問1(3)参照】


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 3)施設・事業所の定員では、25人以下が23事業所、26〜50人が13事業所となり全体の89%(前年比+2ポイント)を占めた。50人以下の事業所の割合が増加した。特に前年45.8%だった25人以下の事業所が今回は57.5%(前年比+11.7ポイント)となり一段と小規模の事業所の割合が増えている。【問1(4)a参照】 

 4)利用契約者数は26〜50人以下が4事業所増えて13事業所となったが、回答があったところの割合では、40.6%(前年比-9.4ポイント)であった。【問1(4)b参照】

 5)年間の稼働日数は「241日以上」の事業所が前年比15カ所増えて75.7%と大幅に増加しいている。特に「281日以上」の事業所が前年の3事業所から12事業所に大幅に増加しており、土日・休日に稼働しなければ運営できない実態が見える。これは、各事業所の報酬が日割り計算になったため稼働日を国の基準並みに増やした事業所が多くなったからと考えられる。【問1(5)参照】


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 6)事業所の職員・従業員は「10人以下」の事業所が前年比10カ所増え26事業所となったが、割合としてはほぼ同じ65%と小規模であり、「非正規雇用50%以上」が前年比6カ所増の14事業所となり、割合も42.4%と多くなった。しかし一方では「10%未満」の事業所も5カ所増え8事業所となっており、二極化が進んでいるのではないか。【問1(6)@、A参照】

  U.新体系への移行状況

 1)旧法施設の新体系への移行時期については、23年度中に移行することが国から求められていることから、回答のなかった2事業所を除いた全ての事業所は24年3月までに移行するという結果となった。

 2)障害者小規模作業所は1カ所で、地域活動支援センターV型への移行を検討している。

 3)地域活動支援センターから自立支援給付の事業への移行については、4事業所の全てが「未定」や「ない」と回答しており、地域活動支援センターからの移行は考えていないことが明らかになった。小規模作業所には設立にあたっての思いが強く、補助金が受けられなくなるのでやむなく地域活動支援センターへは移行したが、自立支援給付の事業への移行には相当抵抗感があるのではないか。「移行できない」のではなく、強い理念、意思を持って「移行しない」と回答していることからも明らかである。

  V.処遇改善助成関係

 1)「処遇改善助成を受けている」のは21カ所で回答した事業所の75%(前年比+11ポイント)である。前年は使いにくい制度であると総括したが、今回は介護職員の処遇改善だけでなく人材確保の観点から事業所が必要に迫られたのではないかと思われる。また、「キャリアパスを伴う申請をした」「これから申請する」を合わせると20カ所で回答し


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た事業所の77%(前年比+7ポイント)と増加していることも同様の理由からではないかと思われる。【問3(1)、(2)参照】

 2)「賃金改善対象の職種以外の職員にも事業所で支払っている」ところは事業所数でいうと前年と同数の12カ所であるが、割合としては54.5%(前年比-20.5ポイント)となった。【問3(3)参照】

 3)「対象職種と対象外職種との改善額に差をつけていない」事業所は4カ所増えて11事業所、割合としては57.9%(前年比-12.1ポイント)であった。手当を原因とする職員間の混乱を防ぐためと考えられる。【問3(4)参照】

  W.事業所の経営関係

 1)「経営が安定している」事業所は35.9%(前年比+2.9ポイント)、「不安定」又は「どちらとも言えない」が64.1%(前年比-2.9ポイント)と過半数を超え、安定した経営とはいえない状況が伺われる。【問4(1)参照】


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 2)経営安定のためにとった対策【問4(2)参照】
@「定員以上の登録人数を増やした」が前年より4カ所増えて18カ所で45%(前年比-32ポイント)で、報酬が日割りであることが理由と思われる。
A「臨時職員やパート職員の割合を増やした」事業所が2カ所増えて6カ所で15.4%(前年比-6.6ポイント)、人件費の削減が目的と思われる。
B「営業日を増やす」が5カ所増えて12カ所で30.8%(前年比-8.2ポイント)であった。報酬額増加のための事業所努力と考えられる。

3)「報酬が上がったらどんなことをしたいか」【問4(3)参照】
  第1位が「利用者サービスの安定供給」の27カ所(67.5%)、第2位が「職員の給与増額」の21カ所(52.5%)、第3位が「新規事業の展開」の8カ所(20%)、第4位が「借入金の返済」と「積立金」の5カ所(12.5%)であった。


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  X.3・11東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故後の影響

1)利用者の変動については、「増加した」が11カ所で27%、逆に「減少した」が5カ所で13%、「変わらない」が22カ所で55%という結果であった。【問5(1)参照】

2)「避難した利用者がいた」事業所は9カ所で22%、「今も避難中の方がいる」事業所は2カ所で5%、「いない」事業所が24カ所で60%という結果であった。【問5(2)参照】

3)職員への影響については、「あった」事業所が19カ所で47%、「なかった」事業所が17カ所で43%であった【問5(3)-1参照】。また、職員への影響のあった19カ所の事業所のうち「家族も含めて県内外に避難した職員がいた」事業所は10カ所、「今も避難中の職員がいる」事業所は3カ所という結果であった【問5(3)-2参照】。さらに「退職した職員がいた」事業所の9カ所あり、影響の大きさを改めて感じる結果となった。


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  まとめ

1)福島県北地区では、社会福祉法人より非営利法人・営利法人の割合が多く過半数の55%を占める傾向が続いている。事業の規模については50名以下の事業所が9割近くを占め増加する傾向がある。特に25名以下の事業所が前年比13カ所増えておりその傾向は顕著である。利用契約者についても11〜25名の事業所が前年比5カ所、26〜50名の事業所が4カ所とそれぞれ増加している。入所から通所へ、施設から地域へという大きな動きの中で、事業者側もより生活に密着した場所での事業展開を図っていることが伺われる。

2)事業所の安定した運営という観点からみると、年間稼働日収が241日以上の事業所が28カ所と回答数の75.7%を占め前年比+20ポイント以上と大幅に増加している。稼働日数を増やすことで事業の安定運営を図ろうとしている状況が見える。同様の観点から職員の非正規化が顕著で、非正規雇用が50%を超える事業所数が前年比6カ所増の14カ所、割合としては42.4%(前年比+4.4ポイント)と増加しており、事業の安定運営のために支援の質に大きく影響する職員の待遇低下をせざるを得ない事業所の状況がより明らかになった。職員の待遇改善による資質の向上、ひいては利用者への支援の質を高めるための職員の正規雇用化へつなげる制度・仕組みが求められる。

3)新体系への移行については、国からの縛りがかけられ平成23年度中に移行することが前提となっている。このような状況の中で未回答の事業所を除き回答した事業所ではすべて新体系へ移行する。第5次アンケート調査報告書の中で私たちが打ち出した「いずれまた障害者総合福祉法へ移行することが求められるのだから、その際に新体系へ移行した事業所だけでなく、移行しない旧法施設からも障害者総合福祉法の事業へ移行できる仕組みが必要ではないか。」という声が届かなかったのは残念である。

4)第5次アンケート調査報告書の中で打ち出した
 @障害程度区分による福祉サービスの利用制限の撤廃
 A事業所の安定的で継続的な高い質を担保するためのマンパワーの正規雇用化の推進
 B地域の福祉力向上のための施策の推進については、いわゆる「骨格提言」の中に盛り込まれた。平成24年の通常国会に上程される「障害者縫合福祉法」の中に具体的に盛り込まれるよう、今まで以上の活動を継続しなければならない。

5)東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故後の放射能の影響は大きく、依然として多くの人々を苦しめるだけでなく、見えない恐怖が、先の見合ない不安が渦巻いている。千年に一度と言われるこの大震災は「想定外のことだったのだから」という言葉を聞く。しかし、もう想定外ということで済ませることはできない。今回寄せられた事業所から


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の貴重な意見をもとに、私たちが経験したことを繰り返さないようにしなければならない。被災時の安否確認、避難誘導、障がい児者も安心できる避難所の確保、食料・水・燃料の供給、相談窓口の設置と有効活用、地域ネットワークの強化等々、早急な対策を進めなければならない。


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発行 平成23年12月12日 

福島県北地区障がい福祉連絡協議会 平成23年度障害者自立支援法第6次アンケート調査委員会
 会 長 阿 部 理 平 (福祉ハウスボネール)
 副会長 二階堂孝四郎 (清心荘)
 副会長 舟 山 信 悟 (静心園)
 委 員 高 久 由 美 (ワークショップろんど)
 委 員 下 釜 裕 一 (ILセンター福島)
 
 福島県北地区障がい福祉連絡協議会事務局
 〒960−0261 福島市飯坂町中野字堰場41 「静心園」内
 TEL(024−542−7213)  FAX(024−542−9811)
 Email;k.seishinen★proof.ocn.ne.jp (★→@に変えてご連絡ください)
 ホームページアドレス http://www7.ocn.ne.jp/~ograji/fsk/fukusyoukyou.htm

■書評・紹介

■言及



*作成:青木 千帆子
UP: 20120221 REV:
全文掲載  ◇災害と障害者・病者:東日本大震災  2012年福島県北地区障がい福祉連絡協議会研修会 
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