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「「生存学」創成拠点事業推進担当者より (15)」

林 達雄 20111023 「生存学」創成拠点メールマガジン第19号.

last update:20111111

グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点では、事業推進担当者として教員計17人が活動しています。今回は本学衣笠総合研究機構特別招聘教授、林達雄のメッセージを掲載します。


「生存学」にエールを送る

「生存学」のすぐれたところは「個人」=「自分」の問題にとどまらず、日本社会の問題、そしてグローバルな問題を同時に扱っている点にある。「自分」「日本」「世界」を同じ地平の上で捉えているのだ。それは当り前に見えて、なかなかできることではない。たとえば東日本の震災のケースでは日本人の多くは「自分」ないし、「日本」に終始し、グローバルな問題はほとんど無視されてきた。

震災後、国家予算は「日本」の復興に集中した。しかし、東日本の震災は日本社会にとって大きな問題だが、世界規模の問題ではない。そして「飢え」をはじめとする世界規模の問題の渦中にある地域から、総体として見ればまだまだ豊かな日本に支援が届いたのだ。

近年世界では飢餓人口が10億人を超えた。それも史上最大の収穫量を誇った時期に記録的な飢えが進行していたのだ。その原因は食料がバイオ燃料として使われたり、国際投機の対象になったことによる。これは10億人の被害者が存在する問題であり、世界中に加害者が存在する問題である。

「がんばれ日本」というメッセージを聞くたびにある種の抵抗感を感ずる。それは被災者、あるいは原発事故の被害者に対して無神経なメッセージである。がんばろうにもがんばれない人にがんばることを強いている。一方、このメッセージは身勝手で他を顧みない国家としての日本を示している。日本だけが激励を受ければそれでよいのか?国際的にみればずっと規模の大きな問題の渦中にいる人々が尊重されず、国家としての日本だけが一人歩きしている。

一人歩きする日本を感ずるとき、もっとアフリカと友人になったらよいのに思う。彼らは困難な状況に遭遇しても、今を楽しむことができる。そして、貧しい者どうしが助け合う。アフリカ各国の言葉に「相互扶助」や「人間性」を表す言葉がある。たとえば、ズ─ル語ではウブントゥというといい、尊敬すべき価値となっている。今回の震災をウブントゥを日本が学ぶ機会としたい。

◇林 達雄(はやし・たつお)
愛媛大学医学部卒。日本国際ボランティセンターを通して、アフリカ、アジアで医療協力に従事。その後、同団体代表。2000年からアフリカをはじめとする世界のエイズ問題に取り組む。ジョハネスバーグ持続的開発会議(リオ10)日本政府代表団顧問。(特活)アフリカ日本協議会現代表。著書岩波ブックレット「エイズとの闘い」など。





*作成:大谷 通高
UP: 20111111 REV: 更新した日を全て
全文掲載  ◇アフリカ ◇災害と障害者・病者:東日本大震災
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