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「「生存学」創成拠点事業推進担当者より (13)」

栗原 彬 20110823 「生存学」創成拠点メールマガジン第17号.

last update:20110909

グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点では、事業推進担当者として教員計17人が活動しています。今回は本学COE推進機構特別招聘教授(「生存学」創成拠点)、栗原彬のメッセージを掲載します。


東日本大震災の被災地で、よく沈黙に出会う。被災の状況が雄弁に語られるときでさえも、沈黙の声が低く聞こえている。

被災者のKさんは、被災後、夜空の星と話をする。「星が出ている」のでなく、「自分のまなざしが星を出している」ように思うというKさんの不思議な物言いに、私が更なる説明を求めると、Kさんは、はっと両手で顔を覆ってうつむいて「そのことを話すには何日もかかります」と早口で言われて、沈黙に入られた。

沈黙は生存をめぐるいくつもの断層の露頭のように思える。そこでは、社会、制度、国民の善意の正しい声と人間のまたいのちの声とがせめぎ合っている。
「がんばれニッポン」「強い国日本」というCMと黙々と亡き人を探す人々。
「前へ」「前進」というメディアの括り方と3月11日で時間がとまったままの人々。「復興」の掛け声と「死者を思え」という低声の祈り。ビルや道路の「復興」の宣言と生存やつながりの回復を求める声。

被災者に寄り添い、祈りを共にするとき、被災地に脈々と息づいている「被災者起点」と「共助」(『河北新報』論説主幹鈴木素雄)がはじめて私たちの視野に開かれてくる。


◇栗原 彬(くりはら・あきら)。本学COE推進機構特別招聘教授(「生存学」創成拠点)。『やさしさのゆくえ──現代青年論』(1981)、『管理社会と民衆理性──日常意識の政治社会学』(1982)、『歴史とアイデンティティ──近代日本の心理=歴史研究』(1982)、 『政治の詩学──眼の手法』(1983)、『政治のフォークロア──多声体的叙法』(1988)、『やさしさの存在証明──若者と制度のインターフェイス』(1989)、『人生のドラマトゥルギー』(1994)、『〈やさしさ〉の闘い──社会と自己をめぐる思索の旅路で』(1996)、『「存在の現れ」の政治──水俣病という思想』(2005)など多数。

◇関連リンク
・個人のページ(本拠点内)
http://www.arsvi.com/w/ka01.htm
・拠点事業推進担当者の一覧
http://www.arsvi.com/a/s.htm





*作成:大谷 通高
UP: 20110909 REV: 更新した日を全て
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