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震災を受けた場合、在宅看護で万が一の為の日頃の備えについて
障害をお持ちのお子さんを在宅で育てているご家族の皆さんへ

近藤 達郎* 201107 「18トリソミーの会」会報 第32号 pp.1-2
*医師、みさかえの園むつみの家、18トリソミーの会賛助会員

last update:20110819

 18トリソミーの会の皆様、重症心身障害児・者施設 みさかえの園むつみの家に勤務している近藤達郎です。小児科医で臨床遺伝というあまり聞き慣れない分野を専門としております。先日、「震災など万が一の為の日頃の備えについて」のお話をというご依頼を受けました。この寄稿が何かのお役に立てば幸いです。
 この題を進める前に、先ずは今回の東日本大震災で被災された方々の御冥福とともに一刻も早い復興をお祈り申し上げます。
 さて、本会の会員の方々の状況を考えた場合に、かなり濃厚な医療的内容を在宅に持ち込まれている方も少なくないと思っております。思いつくままに、日常生活上どのような問題を持ちうるかを考えてみますと、以下のようなことがあると思います(重度な状況のみを列挙しております)。


(1) 呼吸関係:簡易型人工呼吸器使用(この場合は気管切開されておられる方が多いと存じます)、呼吸をサポートするアンビュー・バック、痰を吸引する吸引機、在宅酸素

(2) 栄養:胃瘻増設術を受けておられる方は胃瘻チューブからの経管栄養、経鼻チューブ(鼻から胃へのチューブ)からの経管栄養

(3) けいれん:けいれんが長く続く場合などに座剤(ダイアップ座薬、エスクレ座薬、ワコビタール座薬など)

(4) その他の様々なお薬(内服薬、点眼薬、軟膏類、座薬)の管理

(5) お子様が通常の日常生活を送る上での様々なサポート  などなど


 今回の震災で多くの皆様が究極の状況に追いやられ、ご家族ご自身の心身の健康状況を保つのも難しいのではないかと思います。その場合には、医療的内容が濃厚なお子様であればなおさらのこと、何とか良い状態で病院に入院することも想定された方が良いように感じます。そのためには、受け入れ可能病院に連絡がとれて対応していただくまでをしのぐことが大切です。先ずは1-2日を乗り切る準備が必要だと思います。


上記の(1)〜(5)で、具体的には何が必要かと考えると、以下のようなものが挙げられます。

(a) 簡易型人工呼吸器、吸引機などについては電気が不可欠。
(b) 吸引チューブ、酸素のチューブ、経鼻チューブなどのチューブ類とチューブ
を清潔に保つアルコール綿や生理食塩水や滅菌水に湿らせている包装されたガーゼ類など。
(c) 経管栄養物(1-2日分)
(d) 各種お薬
(e) 生活必需品(水、懐中電灯、ラジオ、保存食など)

 (b)-(e)については、とにかく数日分を目指して何かがあった時にすぐに持ち出せる準備が必要と思われます。電気については、簡易型人工呼吸器には予備電源がついていると思いますが、それも長くもつとは思えないので、何らかの策が必要です。場合によっては、下記記事のように、車のシガーソケットを使用できれば良いかも知れませんが、その為には、シガーソケットが使用できるケーブルが必要と思われます。最近は蓄電式ハイブリッドカー等の中には100Vの通常のコンセントが配備されているものも出ているようです。
 東日本大震災に伴う停電は、在宅の重症心身障害者にとって死活問題。濃密な医療的ケアが必要で、電動医療機器が手放せないからだ。
 釜石市甲子町の菊池裕子さん(27)は、家族や周囲の懸命の支えで、震災発生から6日間の停電を乗り切り、笑顔を取り戻した。裕子さんは施設に入所せず、自宅で父俊二さん(63)、母紀子さん(61)との3人暮らし。電動たん吸引器が欠かせない。
 3月11日の地震発生時、俊二さんは日課の散歩中。家にいた紀子さんは、大きな揺れに驚き体をこわばらせた裕子さんに覆いかぶさり、ぎゅっと抱きしめ続けた。同市甲子町地区は内陸で津波被害は免れたものの、停電に。走って帰宅した俊二さんが機転を利かせ、車のシガーソケットから電源を確保し、たん吸引器を作動させた。
 車に残っていたガソリンは半分以下。1日たっても、2日たっても停電は続く。裕子さんが体調を崩しても病院に連れて行くのは難しいため、2人は暗闇の中、付きっきりで裕子さんに寄り添った。周囲がそんな日々を支えた。ヘルパーや訪問看護師、主治医は自分の家族らが被災しながらも「裕ちゃん、元気?」と訪問。紫波町に住む親戚はガソリンをかき集めてくれた。
 紀子さんは「重症者は周囲の助けがないと生きていけない。裕子は人に恵まれているとつくづく実感した」と感謝。16日夕方、電気がついた時は「思わず拍手しました」。4月7日深夜にまた激しい余震。泣き出した裕子さんだったが、両親が寄り添って落ち着きを取り戻し、8日夜まで続いた停電も乗り切った。
 県重症心身障害児(者)を守る会(平野功会長、会員251人)は震災発生後、同会が把握する陸前高田市から宮古市までの在宅重症者25人の安否確認を進め、全員の無事を確認した。持ち前の無垢(むく)な笑みを広げる裕子さん。その手を握りしめ、紀子さんは「お世話になっている多くの方々が被災し心が痛む。いつの日か被災地に日常生活が戻り、笑顔が戻ってほしい」と願う。【出典:岩手日報】
 次に入院後のことについても少し話を触れます。
 状況によっては行きつけでのお子様の状況を良く知っている病院に入院できるかどうかは分からないことがあります。その際には、医療的な情報が必要です。これは極めて重要と思いますので、お時間がある時に整理しておくと良いでしょう。

例)人工呼吸器をお使いであればその条件(圧、回数など)、気管切開をしていれば気管チューブの大きさなどの詳細、胃瘻をお持ちであれば胃瘻チューブの詳細、栄養(食事)の内容、お薬の内容・量・使用状況など

 以上、思いつくままに書きました。上記をご参考にして、一度主治医の先生とも意見の調整をしておくのが良いと思います。万が一という状況は、もちろん来ない方がよいのですが、備えあれば憂いなしとも言いますので、シュミレーションはしておいても損はないと思います。

注:「18トリソミーの会」会報第32号pp1-2より、近藤先生の許可を得て掲載しています。


*作成:箱田徹
UP: 20110819 REV:
災害と障害者・病者:東日本大震災  ◇全文掲載 
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