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「ハリケーン・カトリーナ「安楽死」事件」

児玉 真美 201105 月刊介護保険情報,2011年5月号

last update:20110611


 ハリケーン・カトリーナ「安楽死」事件

東日本大震災では、多くの施設入所の高齢者や病院の入院患者が逃げ遅れ、津波にさらわれた。過酷な避難生活の中で亡くなった人もある。患者の避難に病院職員が付き添わなかったケースが問題となり、スタッフの避難で手薄になった病院や施設の窮状も報道された。そこには、これから考えていくべき難しい課題がたくさんあるのだろう。
当欄では、2005年に米国ルイジアナ州を襲ったハリケーン・カトリーナの際の安楽死事件と「避難死evacuation death」について、06年9月号と10月号で取り上げた。後者は日本では「災害関連死」と呼ばれている状況に関する報道を、いくつかの角度から眺めてみたものだ。前者は、避難が困難な4人の入院患者に致死量の薬物を注射して死なせたとして医師と看護師が逮捕された事件。逮捕されたアナ・ポウ医師(事件当時49歳)は患者が苦しまないよう手助けしただけだと主張し、07年に不起訴となった。極限状態の病院に最後まで残って患者のために尽力した人道的医師として、その後も英雄視され、災害時のトリアージの専門家として発言を続けている。
この事件について、ネットメディアProPublicaが09年に長文の記事「死の選択:カトリーナ後のメモリアル医療センター(Deadly Chices: Memorial Medical Center After Katrina)」を書き、作年のピューリッツァ賞を受賞した。非公開記録を入手し、ポウ医師を含む多くの関係者にインタビューを重ねるなど、詳細な調査を行って事件の全容解明を試みたもの。8月29日のカトリーナ襲来を乗り切ったはずのメモリアル医療センターに、洪水が押し寄せ病院が電気を失い、やがて予備の発電機も停止する中、患者の避難を巡って病院スタッフはどのように行動したのか――。最後の患者がヘリコプターに乗せられた9月1日午後9時までの4日間が詳細に検証されている。
この記事を読むと、この事件が世間で思われているほど単純な性格のものではないことがよくわかる。詳細は拙ブログの関連エントリー(http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61941303.htmlUP: 20110611 REV:
安楽死・尊厳死 euthanasia / death with dignity ◇災害と障害者・病者:東日本大震災 ◇全文掲載 
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