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各種団体の連携不可欠――識者評論:被災障害者支援

福島 智 2011/04/21 『神戸新聞』2011-4-21夕刊:6,共同通信社より配信


 大震災発生から1カ月余りが過ぎた。生命の危機は乗り越えたものの、各地の避難所で今なお、不自由な暮らしを続けざるを得ない人が約14万人いるという。
 あらゆる立場の被災者が、それぞれの苦悩を抱えている。その中でも、障害者や重い病を抱える人、高齢者らは、二重、三重の苦難を強いられている。
 とりわけ、障害者はその障害の種類や程度、性別、年齢などのさまざまな要因で、多様な困難を抱えているので、支援するにも特別な配慮や知識が必要なことが多い。
 災害時における障害者への支援について、最低限の重要な心得などをまとめた、分かりやすくてコンパクトなマニュアルの作成と普及が今後の課題の一つだ。
 ところで、3月11日は、日本の障害者施策の基本となる「障害者基本法」の改正作業が大詰めを迎えた日でもあった。菅直人首相を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」において、この日の午前中、同法の改正案をまとめたからだ。ところが、同改正案が閣議決定されていない段階で、同日午後大地震が発生した。
 あらためてこの案を読むと、「災害時における障害者支援」という視点に乏しいことに気付かされる。災害情報などを障害者に対して「迅速かつ的確に」伝える施策を国と自治体に求めている条文はあるものの、それ以外、災害時の対応に触れた規定は見当たらない。
 推進本部での協議がなされた同じ日の午後に大地震が発生したのは象徴的だ。今からでも改正案に、災害時における障害者支援施策の充実について盛り込むべきではないだろうか。
 それとともに、現在急ピッチで立案作業が進められている災害関連の各種特別措置法案や関連政省令の制定において、「被災障害者支援」の適切な配慮を求めたい。
 ただ、障害者を含めた被災者への支援は、行政任せだけでは不十分だ。行政と医療機関、各種のNGO、NPO、任意のボランティアグループなどの連携が欠かせない。それぞれに熱意があっても、ばらばらに動いていては、十分な力が発揮できないだろう。
 震災から1カ月を経過しても、各地で余震が絶えない。震災は過去のものではなく、現在進行形だという思いを胸に、私たち一人一人が何をすべきか、いま一度考えたい。

東京大学教授 福島 智氏
ふくしま・さとし 62年神戸市生まれ。専門は障害学。視力と聴力の二重障害があり、全国盲ろう者協会理事も務める。


UP: 20110505 REV:
災害と障害者・病者:東日本大震災  ◇福島 智  ◇全文掲載 
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