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「聾児童を持つ聾親(Deaf Children of Deaf Parents)の養育経験に対する質的研究――言語選択を中心に」

クァク・ジョンナン,ソ・ヨンラン,リ・ジョンオク 20110331 『特殊教育ジャーナル――理論と実践』12(1): 329-349

last update:20110419

■目次

I. 序論
II. 研究方法
 1.研究参加者
 2.面談内容
 3.資料収集過程
 4.結果処理
III. 結果
 1. 聴覚障害に対する反応
 2. 人工内耳手術に対する聾親の態度
 3. 聾児童の手話習得過程
 4. 手話を通したリテラシー指導
 5.聾学校教育に対する願い
W.結論

■一部抜粋

III. 結果
1. 聴覚障害に対する反応
聾児童の聴覚障害に対する聾親の否定的な状態は固定されているわけではない。 聾親の態度は子供を育てながら変化する。その変化の中心には手話がある(p.335)。

2. 人工内耳手術に対する聾親の態度
子供のころ、お母さんは私にずっと口話教育をさせました。 手話を禁止して口で話せるだけでした。 言い方が間違えたら、口を殴られました。 口話教育を心配して 高校の時代、聾学校に行くことになりました。その時、手話を使うことになって良かったです。 でも、お母さんの前では口で話をして、手話はこっそりとしました(両親Aの話)(p.336)。
手術したら、幼いころはあまり問題ないけれども、社会生活は違いますよ。 なぜなら、社会生活では完ぺきに100%健聴者と過ごすのに、人口内耳は70〜80%程度だけ健聴者ようにできるからです(両親Bの話)(p.337)。

3. 聾児童の手話習得過程
子供に手話を教えたことがありません。 夫と毎日、手話で会話するから子供はそれを見て自然に学びました。 子供の面倒を見る時、ただ面倒を見ることはないでしょう。 子供にぶつぶつ手話で話して、お腹すいたの?ご飯食べる?と話を掛けますよね(両親Bの話)(p.339)。

4. 手話を通したリテラシー指導
先にママが本を手話で読んくれるから、幼稚園に行たら先生に会話がよく通じました。 子供が本を読んで分からない時はママが手話で説明すれば、大分わかるようになります。聾者が分からない時は聾式が必要です(p.342)。

5. 聾学校教育に対する願い
聾学校に手話が上手な先生がいないです。 みんな健聴者のように手話をするから、 私の娘も聾学校に入学したら、先生との会話が難しくなると思います。 聾先生もなくて、 健聴者のように手話をする先生に学ばざるを得ない子供たちを考えると希望がないです。手話をしっかりするのが一番、大事です。それで聾学校に送ることを反対して、普通学校に行かせる場合もあるけれども、また、聾学校に戻る子供たちが多いです。普通学校は寂しいし、面白味もなかったと言っています。そのような話を聞くと、重要なものは教育的な支援だという気がします(両親Dの話、pp.343〜344)。

■引用

"おめでとう! あなたは今日から二つの言語、文化を知ることになるんですよ。そしてこの子は少なくともバイリンガル、バイカルチャーになるでしょう。この子はろう児です。 お子さんと供に歩むことで、あなたの世界も広がり、いろいろ出会いや発見が待っていますよ。さあ、お父さん、お母さん、頑張って手話を覚えて下さいね。 子と心ゆくまでお話できるようにね。聞こえなくても大丈夫。 ろう児は視覚がとても発達します。 もし、心配だったら実際にろう者に会ってみるといい。 きっと安心できますよ"(岡本、2001:207).

■参考文献

岡本 みどり 2001 「インテグレーション、龍の子学園、そしてろう学校」 金沢 貴之 編 2001 『聾教育の脱構築』 東京: 明石書店,201-233



*作成:クァク・ジョンナン
UP: 20110419 REV:
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