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「住宅トラスト・豪介護者支援」

児玉 真美 201012 月刊介護保険情報,2010年12月号

last update:20110517

住宅トラスト・豪介護者支援

 英国で、様々な要支援・要介護者に住宅を提供しているユニークなNPOを見つけた。名前をCentral&Cecile Housing Care Support という。対象者が多様であること、住宅だけでなくケアと支援を一体的に提供していることなどが興味深いので、簡単に紹介したい。
 1926年にロンドンのホームレス女性の実態を見かねた女性ジャーナリストが創設した。ジョージ・バーナード・ショウやメアリ女王など、その理念に共鳴した著名人らが資金集めに協力し、活動は多くのホステルにも広がっていった。世界大戦後は戦争で家や夫を失った女性を中心に、活動対象を高齢者にまで広げていく。その後、数々の住宅トラストを併合したり、ケアホームの株式を取得したり、既存団体の運営に参入しつつ、規模を拡大してきた。現在、ロンドンを中心とした都市部に展開している主な事業は以下の通り。

 ・入所ケアホーム10棟:要介護状態の高齢者が対象。多くのホームに認知症患者用のベッドが確保されている。レスパイト・ケアを受け入れるホームもある。
 ・シェルター住宅16棟:主として50歳以上の自立高齢者が対象で、ワン・ルームまたは1ベッドルームのアパート形式が中心。図書室やラウンジ、洗濯室などの共用施設があり、スタッフが見守り、支援するほか活動やイベントも企画する。
 ・支援付き住宅3棟:精神障害者など、住宅とセラピーによる支援を必要とする人が対象。近隣の専門機関とも連携しながら、日常生活の基本的スキルのトレーニングとカウンセリングを提供する。
 ・ホステル:ロンドンのホームレスに住宅と支援を提供する。4棟のうち、2棟は女性専用。DV被害や精神障害、薬物乱用など、様々な理由で紹介されてくる人たちに、外部機関と連携しつつ、適宜支援を行う。エンパワメントと自立した幸福な生活の再スタートに向け、自尊感情の回復や就労支援を中心にした独自の支援プログラムを持っている。
 ・アイルランド人向け住宅:アイルランド人高齢ホームレスが対象。4棟のうち3棟には常勤の支援スタッフがいる。

 その他にも、低所得者用住宅が3棟。また高齢者向けデイ・ケア・センターを2つ運営している。ケアホーム、シェルター住宅と支援付き住宅の入居者に向けては、映画クラブ、アート教室、体操、アロマセラピー、回想など多彩な活動を提供する。 特に認知症のある入居者向けに、去年2つのケアホームでLadder to the Moonという劇団と連携して試みた、2週間の住み込みプログラムはユニークだ。ケアホームを劇団員らがレトロな高級ホテルにしつらえ、そのホテルのメイドと裕福な客の恋の物語を、毎日午後1時間のパフォーマンスで進行させるという企画。
 火曜日から土曜日までは劇団員がホームに滞在し、それぞれオシャレをした入居者やスタッフを劇中のホテルの客として遇する。物語の進行に沿って、ダンスや婚約祝いのパーティも企画された他、入居者もウエディングのコラージュを作成したりケーキを焼くなどの活動に参加。認知症のある人々も物語の展開に釣り込まれて、自分の人生を回想したり、周囲の人との会話や関わりが増えた。物語は最後に主人公の恋人たちのウエディングでクライマックスを迎え、取り組みは大成功だった。
 支援を必要とする人の生活や人生を支えていこうとする大きな理念の一環に住居の提供を位置付ける姿勢と、多様な人々のニーズに活動を広げてきた懐の深さに、英国に根付くチャリティーの歴史をずしりと感じる。

介護者承認法案が豪議会を通過

 オーストラリア政府は昨年10月に、今後の介護者支援に向けた大きな枠組みを発表した。その一環として、10月28日、介護者の貢献を認め支援を約束する法案 the Carer Recognition Bill 2010がオーストラリア連邦議会を通過した。法案の「介護者」には高齢者、病者、障害者の介護者のみならず、子育て中の親や、孫の子育てをフルタイムで担っている祖父母も含まれる。
 同枠組みのもう一つの重要施策として、保健省は現在、オーストラリア介護者戦略を準備しており、12月5日まで全国の介護者からの意見を募集している。また首都特別区も独自に介護者憲章の準備に取り掛かっている。オーストラリアの介護者支援は大きく動き出したようだ。

UP: 20110215 REV: 20110517
全文掲載  ◇児玉 真美 
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