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「「生存学」創成拠点事業推進担当者より (5)」

サトウ タツヤ 20101123 「生存学」創成拠点メールマガジン第8号.

last update:20110801

グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点では、事業推進担当者として教員計17人が活動しています。今回は、2010年度本拠点事務局長を務めるサトウタツヤのメッセージを掲載します。


生存学。生きて在るを学ぶ。心理学者にとっては決して考えつかない発想であり名称である。しかし、心理学にとって決して居場所がないというわけでもない。心理学は、19世紀半ば頃に成立した比較的新しい学範(ディシプリン)である。自然科学の方法を人間の心に当てはめることで「人間の普遍的な性質」を明らかにしようとした野心的プログラムである。結果として人間の多様性を 顧みない学問体系となってしまっている。
それどころか、心理学者たちは知能検査のようなツールによって人間の能力を測定したと僭称し、知能検査の点数が低い人は生きる資格がない、とさえ言い切った。
そして、これは過去の話ではない。QOL(生活の質)の数値(効用値)の中にはマイナスのQOLというものが存在する。形はかわっても、数値化によって人間を切り捨てる仕組みがいまだに続いているのだ。
ただし、数値主義だけというわけでもない。社会構成主義や文化心理学の影響をうけて、個々人の生活・意味づけを重視する立場も活発になってきた。心理学の院生たちの中にも病を得た人のナラティヴやマイクロな文化の理解に挑んでいる人たちがいる。勉強しているというよりは患者さんたちに教わっていると言う方が正確であり、まさに、生きて在るを学ぶ、ということになっているのだなぁと実感している。

◇サトウタツヤ(佐藤達哉) 本学文学研究科教授。専攻は社会心理学・心理学史。単著『日本における心理学の受容と展開』(2002)『IQを問う』(2006)。共編『質的心理学講座3 社会と場所の経験』(2008)など多数。最近は傷痍軍人や軍事保護院関係の資料集成(復刻)を出版するために奮闘中。


◇関連リンク
* 拠点事業推進担当者の一覧 http://www.arsvi.com/a/s.htm
* 個人のページ(本拠点内) http://www.arsvi.com/w/st11.htm




*作成:大谷 通高
UP: 20110801 REV: 更新した日を全て
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