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熊本・八代・水俣地域における女性たちによる自律的地域活動の事例調査

村上 潔 2010/11/05-08 実施
(「地域社会におけるマイノリティの生活/実践の動態と政策的介入の力学に関する社会学研究」フィールド調査)

last update: 20121112

■調査について

 この調査は、「地域社会におけるマイノリティの生活/実践の動態と政策的介入の力学に関する社会学研究」(2009・2010年度グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点院生プロジェクト)の「熊本県共同フィールド調査」の一環として実施するものである。
 調査者は、村上 潔(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)である。

■調査費用

◇立命館大学2010年度研究推進プログラム「若手・スタートアップ」
 課題名「戦後日本社会における批判精神の連続性――もう一つの高齢者医療福祉をめぐる歴史」(代表者:天田 城介

■趣旨

 調査者は、生存学センター報告14号所収論文で、「「主婦によるオルタナティブな労働実践」の岐路――ワーカーズ・コレクティブはどう変わっていくのか」というテーマに取り組んだ。しかしこれはワーカーズ・コレクティブの全体像を扱ったものであり、内実の具体的な検証には至らなかった。
 そこで、実際に熊本県内で「高齢者支援」・「子育て」・「まちづくり」に関する活動をしているワーカーズ・コレクティブの代表者に話を聞き、その活動実態や組織のありかたを調査する。熊本県は、九州内では福岡県に次いで〈グリーンコープ〉(1988年設立)が大きく展開しており、〈ワーカーズ・コレクティブくまもと連絡協議会〉の存在からもわかるように、ワーカーズの活動もさかんである。
 またこの調査では、あわせて県内で男女共同参画推進に関わる活動組織を運営している代表者にも話を聞くことで、その現状を把握するとともに、ワーカーズの主婦たちの理想・利害との差異・共通項を明らかにすることを試みる。
 今回の調査では、前者・後者それぞれ2つ、合計4つの団体を対象とする。代表者へのインタビューだけでなく、それぞれの組織に関する資料提供を受ける。また、別に県・市の施設を訪問して、自ら資料収集も行なう。

■調査成果の公表について

 インタビューのデータはすべて文字起こしし、被調査者の了解を得たうえで、本拠点サイト内に掲載する。
 提供を受けた/収集した資料は、すべてコピーをとりファイリングして、生存学書庫(創思館416)に収蔵する。

■行程/訪問先

━━ 11月5日(金):八代市内 ━━

◆NPO法人やつしろ配食サービスワーカーズ パセリ
 ・ 小田 信子さん[前理事長]+森下 恵子さん[現理事長]
 ☆インタビュー(於:同事務所)
【参考】
http://www.danjyo.pref.kumamoto.jp/char/style/02npo/020oda/oda.htm
[PDF] http://greencoop-kumamoto.jp/greentime/pdf1004_112/w2010.04-112.pdf(p.6)
http://www.greencoop.or.jp/fukushi/workers_syokuji.htmlhttp://www.greencoop.or.jp/fukushi/workers_syokuji_list.html
http://greencoop-kumamoto.jp/green_fukusi/index.htm

◆八代市人権政策課男女共同参画推進室(八代市役所内)
 ☆資料提供を受ける
【参考】
http://www.city.yatsushiro.kumamoto.jp/div/div_list.phtml?divid=10152000

◆八代市男女共同参画社会づくりネットワーク(八代みらいネット)
 ・ 古閑(コガ) 啓子さん[会長]
 ☆インタビュー(於:古閑氏経営の店舗内)
【参考】
http://www.danjyo.pref.kumamoto.jp/char/style/03group/033koga/koga.htm
[PDF] http://www.danjyo.pref.kumamoto.jp/char/jouhou/dantai/dantai_list/68.pdf

━━ 11月6日(土):水俣市内 ━━

◆グループ・よっといで
 ・ 園田 史子さん[代表]+谷口 真由美さん[指導員]
 ☆インタビュー(於:同スペース)
【参考】
◇[PDF] https://furusato-shigotonet.jp/uploadfiles/all_work-life-balance.pdf(pp.21-22)
[PDF] http://www.danjyo.pref.kumamoto.jp/char/jouhou/dantai/dantai_list/39.pdf

◆水俣市立水俣病資料館
 ☆展示見学/資料購入
【参考】
http://www.minamata195651.jp/

━━ 11月7日(日):熊本市内 ━━

◆熊本市男女共同参画センターはあもにい
 ☆資料収集
【参考】
http://www.city.kumamoto.kumamoto.jp/content/web/asp/kiji_detail.asp?LS=132&ID=2904&pg=1&sort=0http://www.harmony-mimoza.org/

◆熊本県男女共同参画センター
 ☆資料提供を受ける
【参考】
http://www.parea.pref.kumamoto.jp/center/01/0103.html
http://www.danjyo.pref.kumamoto.jp/

━━ 11月8日(月):熊本 ━━

◆グリーンコープ生活協同組合くまもと 子育て支援ワーカーズあ・は・は
 ・ 田口 純子さん[代表]+高森 拡美さん[コーディネーター]
 ☆インタビュー(於:同事務所)
【参考】
[PDF] http://greencoop-kumamoto.jp/greentime/pdf1004_112/w2010.04-112.pdf(p.6)
http://greencoop-kumamoto.jp/green_fukusi/kosodate.htm
http://greencoop-kumamoto.jp/green_fukusi/index.htm

■調査を終えて

 調査を通して得られた知見を以下に挙げる。
@〈パセリ〉でのインタビューから
◇生協運動から地域の運動(代理人運動)へ、そしてワーカーズの立ち上げへ、という流れを個人の経歴に沿って具体的に確認することができた。
◇地域の産業状況とワーカーズの事業展開との関連について。パートの選択肢が少ないため、一般にパートよりも賃金が低いワーカーズでもそれなりに人が集まる。「競合」の条件が大都市近郊とは異なる。
◇「扶養の範囲内で働く主婦」以外のスタッフが入ったときに生じる問題について。過去に、厚生年金をどうすべきかなど、議論はあったが、現実的な対応はなされなかった。基本的には主婦としての制度的立場を基準として運営している。
A古閑さんへのインタビューから
◇高齢者の多い地方都市において「男女共同参画」を進めていくうえでの問題について。運動団体の主張の調整――先鋭的な議題を前面に出さず、理解を得やすい構成にまとめる――に重点を置いていること。
◇「男女共同参画」という枠を利用していかに「まちづくり」を進めていけるか、という問題意識がある。
◇「男女共同参画」を目指す取り組みに、シングルマザーのような「マイノリティ」女性が入っていないことの問題点。
B〈グループ・よっといで〉でのインタビューから
◇自治体(県・市)の担当職員のパーソナリティが地域の運動の展開を左右すること。
◇近隣地域の先進的な事例を参照して、身の丈にあった活動を設定している。
◇活動を自分たちのコミュニティの外に「開いていくこと」の難しさ。
C〈あ・は・は〉でのインタビューから
◇生協のシステムの中で、活動主体として「養成」されてきた経緯。
◇ワーカーズ同士のフレキシブルな協力関係の実態。
◇生協の枠内での活動から、その枠外――一般家庭の託児――に展開してきた過程と、今後の展望(家事支援の拡充)。
 全体を通して、(a)「主婦」として働く女性たちの取り組みが、地域における「女性の働きかた」にどのような影響を及ぼしているのか、(b)福祉の側面を担うワーカーズの当事者たちは、どのような現実をふまえて、またどのような「やりがい」のもとに活動に従事しているのか、(c)「男女共同参画」の概念は、地域においてどのように理解され、現実的な展開をしているのか、を考える際の貴重なデータを得ることができた。
 それぞれ、当事者のなかでもはっきりとは意識されておらず、場合によっては本来の理想・理念とズレたり矛盾するようなかたちで現実に動いている。たとえば、ほかの「母親の自立支援」のために自らの母親経験を生かした子育て代行サービスを提供するという構図や、そうした「自立支援」をする女性の側は扶養の範囲内で働く主婦であること、といった問題がある。しかしこの「矛盾」は簡単に解きほぐせるものではないし、またたんに「解消」すればよいものでもない。
 それもふまえて、地域における女性の自律的な労働(協働)実践はいかなるかたちで融合・発展可能なのかを考えていかねばならない。たとえば、「主婦」と異なる利害をもった女性が入っていける「働きの場」――活動できる主婦の主導による――の条件はどう具体的に設定できるのか、といったことは、今後当時者・運動体・自治体・研究者が共同で検討を進めなければならない重要な課題である。その際、「男女共同参画」という理念・活動の枠組みはいかに機能するのか/させるべきなのか/いかなる修正が必要なのかも問われてくるだろう。
 今回の調査のように、地方都市の現実的課題の分析を進めることは、いわゆる中央の「政策」や学者主導の「理念」の実効性を相対化するうえでも必要なことなので、今後も積み重ねていきたい。


*作成:村上 潔
UP: 20101115 REV: 1117, 1124, 1125, 20121112
全文掲載  ◇地域社会におけるマイノリティの生活/実践の動態と政策的介入の力学に関する社会学研究  ◇ワーカーズ・コレクティブ  ◇男女共同参画・2010
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