T.研究内容等および「生存学」創成拠点にもたらす効果
@研究内容、目的、意義
「歴史は物語( ナラティヴ) である」との視点に立ち、歴史記述に関する独特な批判的研究を展開し、歴史学のみならず、物語論に対して大きな影響を与えたヘイドン・ホワイトの歴史=物語論を吟味検討する。またホワイト招聘に携わるとともに、ホワイトに対する批判的言説を含めた歴史=物語論を研究する。
A「生存学」創成拠点にもたらす効果
2008 年度のアーサー・フランク氏特別公開企画に代表されるように(生存学研究センター報告5)、生老病異の当事者たちの「語り」から導き出された知識を集積し歴史化することは「生存学」創成拠点の主たる課題の一つである。歴史と語りの連続性を指摘したホワイトの言説を吟味することは、そのような生老病異の近現代史の捉え直しとしての「生存学」の諸研究に理論的方法論的な層をもたらすことが期待される。また、具体的な成果としては生存学研究センター報告の発行、生存学HP の「ナラティヴ」http://www.arsvi.com/d/n08.htm ページの増補が挙げられる。
U.研究計画・方法・研究成果発表の方法
・2009 年6 月中からヘイドン・ホワイト関連文献を中心にした研究会を、隔週で開催するとともに、歴史理論文献の検討を進める。具体的にはホワイトの主著であるMetahistory: The Historical Imagination in NineteenthCentury Europe や、“The Value of Narrativity in the Representation ofReality”(=「歴史における物語性の価値」)などを用いてホワイトの理解を深める。またホワイトに関連する講師を招聘し、事前勉強会を行なう。・先端総合学術研究科ならびに先端総合学術研究科公募研究会「歴史社会学研究会」と共催で「ヘイドン・ホワイト特別講義」の開催(2009 年10 月22 日予定)に携わる。この講義は先端総合学術研究科教員の吉田寛の表象論史の授業(5・6 限)の一貫として行なわれるが、一般にも公開された企画であり、100 人から200 人のオーディエンスを見込んだ企画となる。さらに本企画には、東洋大学人間科学総合研究所の岡本充弘氏にも協力していただく予定であるので、立命館大学のみにとどまらない他大学との連携も想定している。
・ホワイトから事前に提出される基調報告のペーパーや指定質問など「ヘイドン・ホワイト特別講義」の内容を整理深化させるとともに、それまでの研究成果を中心にした諸成果を「生存学」センター報告等への投稿のかたちで公表していく。
■メンバー
代表:櫻井悟史(立命館大学大学院先端総合学術研究科・公共領域3 回生)
事業推進担当者:天田城介(立命館大学大学院先端総合学術研究科・准教授)
岩田京子(立命館大学大学院先端総合学術研究科・共生領域1 回生)
大谷 通高(立命館大学大学院先端総合学術研究科・公共領域5 回生)
岡田清鷹(立命館大学大学院先端総合学術研究科・共生領域2 回生)
小川 浩史(立命館大学大学院先端総合学術研究科・OD)
金城美幸(立命館大学大学院先端総合学術研究科・共生領域6 回生)
篠木涼(立命館大学衣笠総合研究機構・PD)
中田 喜一(立命館大学大学院先端総合学術研究科・公共領域4 回生)
西嶋一泰(立命館大学大学院先端総合学術研究科・共生領域1 回生)
廣瀬太介(立命館大学応用人間科学研究科)
松田有紀子(立命館大学大学院先端総合学術研究科・共生領域2 回生)
村上潔(日本学術振興会特別研究員・PD)
山口真紀(立命館大学大学院先端総合学術研究科・公共領域4 回生)
吉田寛(立命館大学大学院先端総合学術研究科・准教授)
◆第1 回研究会 2009/06/25 於:創思館414 18:00 〜 22:00
ゲスト:岡本充弘教授
テキスト
◇ White, Hayden, 1973, “Nietzsche: The Poetic Defense of History in the Metaphorical Mode” in Metahistory: the Imagination in Nineteenthcentury Europe, The Johns Hopkins University Press(=1998 田中祐介訳「歴史への意志」[『メタヒストリー』所収]『現代思想』青土社 26(14):59-83).
発表者:櫻井悟史
◇ White, Hayden, 1980, “The Value of Narrativity in the Representation of Reality” Mitchell, W.J.T. ed. On Narrative, The University of Chicago
Press(=1987 原田大介訳「 歴史における物語性の価値」海老根宏・原田大介・新妻昭彦・野崎次郎・林完枝・虎岩直子訳『物語について』平凡社 15-49)
発表者:中田喜一
◆第2 回研究会 2009/07/09 於:創思館416 18:00 〜
テキスト
◇野家啓一, 2005『 物語の哲学』岩波書店.
・第一章:「物語る」ということ――物語行為論序説
発表者:小川浩史
・第七章:物語り行為による世界制作
発表者:西嶋一泰
◆第3 回研究会 2009/07/23 於:創思館416 18:00 〜
テキスト
◇上村忠男, 1994「表象と真実――ヘイドン・ホワイト批判に寄せて「『歴史家と母たち――カルロ・ギンズブルク論』未來社 156-207.
・発表者:篠木涼 一〜三
・発表者:大谷通高 四〜六
◆第4 回研究会 2009/08/10 於:存心館706 15:00 〜
村上享子氏セミナー
・タイトル:「元英兵捕虜和解問題を通して戦争の想起について考える」
(“Social Organisation of Remembering and Reconciliation: A Case of Former British Prisoners of War”)
◆第5 回研究会 2009/08/26 於:創思館416 18:00 〜
◇上村忠男,1994 「表象と真実――ヘイドン・ホワイト批判に寄せて」『歴史家と母たち――カルロ・ギンズブルク論』未來社 207-230.
・発表者:岩田京子 補論「アウシュヴィッツと表象の限界」
◆第6 回研究会 2009/09/03 於:創思館416 18:00 〜
◇White, Hayden , 1992,“ Historical Emplotment and the Problem of Truth,” Saul Friedlander ed., Probing the Limits of Representation: Nazism and the “Final Solution”, Harvard University Press, 37-53.(=1994, 上村忠男訳「 歴史のプロット化と真実の問題」ソール・フリードランダー編 上村忠男・小沢弘明・岩崎稔訳『アウシュヴィッツと表象の限界』未來社 57-89.)
「ヘイドン・ホワイト氏特別講義研究報告についての発表」(仮)
・発表者:金城 美幸
「日本の国民的歴史学運動について」(仮)
・発表者:西嶋 一泰
◆第6.5 回研究会 2009/09/04 於:創思館416 13:00 〜
・ヘイドン・ホワイト氏特別講義に向けての対訳表作り
担当者:小川浩史・金城美幸・篠木涼・松田有紀子・村上潔
◆第7 回研究会 2009/09/14 於:創思館416 13:00 〜
「《ホロコースト》をどう呼びうるか?――言語・政治・歴史的想像力」
・発表者:金城美幸
「歴史は誰がなぜどう描くか――国民的歴史学運動と生活記録運動に即して」
・発表者:西嶋一泰
「ポストモダニズムと歴史叙述 Postmodernism and Historiography」翻訳検討
・岩田京子・岡田清鷹・金城美幸・櫻井悟史・篠木涼・西嶋一泰・松田有紀
子・村上潔・吉田寛
◆第7.5 回研究会 2009/09/18 於:創思館416 13:00 〜
「ポストモダニズムと歴史叙述 Postmodernism and Historiography」翻訳検討
◆第8 回研究会 2009/10/02 於:洋洋館960 ゲスト:岡本充弘教授
再検討「《ホロコースト》をどう呼びうるか?――言語・政治・歴史的想像力」(英語・日本語)
・発表者:金城美幸
再検討「歴史は誰がなぜどう描くか――国民的歴史学運動と生活記録運動に即して」(英語・日本語)
・発表者:西嶋一泰
◆第9 回研究会 2009/10/16 於:創思館415
“Another Limit of Representation: Language, Politics, and Historical Imagination”
・発表者:金城美幸
“Why and How Is History Drawn?: Based on Japanese People’s History and Life Record History”
・発表者:西嶋一泰