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「人工内耳をめぐる親の選択に関する質的研究」

クァク・ジョンナン 201006 「人工内耳をめぐる親の選択に関する質的研究」『特殊教育ジャーナル――理論と実践』11(2): 251-279

last update: 20110419

■目次

T. 序論

U. 研究方法

V. 人工内耳選択を巡る医療界の影響
 1. 早期診断
 2. 人工内耳手術に対する医療保険適用
 3. 手術時期

W. 人工内耳選択を巡る両親の認識
 1. 聴力低下に対する不安感
 2. 手話に対する両親の認識
 3. 聴覚障害に対する両親の認識
 4. 養育の中心にある聞くと言うこと

V. 人工内耳を巡る社会的な影響
 1. 人工内耳をすすめる社会
 2. 他の選択:日本の聾親運動

Y. 結論

参考文献

■一部抜粋

* 研究参加者: 人工内耳手術を受けた子供を持つお母さん4人

V. 人工内耳選択を巡る医療界の影響
1. 早期診断
月分娩件数20件以上の産婦人科病院755個所を対象に聴覚選別検査施行の有無を確認した結果、273個所の病院(37.5%)で新生児聴覚選別検査が実施されている。257個所耳鼻咽喉科修練病院および総合病院の中52個所(応答病院の72.2%)が聴覚選別検査を実施(オ・スンハ 外[2007])(p.258)

保健福祉部では2007年7月から全国16個市道示範地域を対象に'新生児聴覚選別検査モデル事業'を実施。 出産直後1ヶ月以内に無償で検査を受けられる、検査結果、再検査が出れば2次協力病院で精密検査を受けて、確診後、補聴器と人工内耳手術などのリハビリ治療を受けるようになっている(p.258)

聴覚障害で確診を受けた期間は平均5.2ヶ月であり、88%の子供たちは医師の勧誘によって聴覚選別検査を受ける(チェ・ユンヒ、ユン・ミション[2007])(p.258)

* 医師の話
95dB越えたよ、手術しましょう。 手術したら、よく聞けるよ、手術すれば、わたしたちように聞こえて話せますよ(両親B)(p.257)。
専門家としての医師の話は権威を持っている。 医師が提示する解決策は両親がお願っている「聞いて話すこと」と一致している(p.258)。

2. 人工内耳手術に対する医療保険適用
人工内耳手術費用はおよそ2千 5百万ウォン〜3千万ウォン。 手術希望者らには手術費に対する経済的負担が加重され、医者たちを中心に人工内耳医療保険適用に対する要求が提起されました(ホ・ミョン ジン、イ・ドボラ[2009]).
2005年1月15日から人工内耳手術に対して医療保険が適用(保健福祉部告示第2004 93号)。手術費の20%を負担すれば人工内耳手術が可能(p.260)。

3. 手術時期
医者たちは「どのくらい早めに手術をするのか、どのくらい早めに聴覚リハビリを始めるのか」が人工内耳手術の成否を左右すると話す。 結局両親の選択は医者たちが提示する「この時期」を過ぎてはいけない(p.262)。

W. 人工内耳選択を巡る両親の認識
1. 聴力低下に対する不安感
2. 手話に対する両親の認識(pp.265-266)
今、気づくと、それは聞こえる側からの話しか聞いていなかったように思う。その上、最初に植え付けられた、聞こえない人と手話のイメージがあり、聞こえないが声を出す人の話は聞くが、手話を使っている人の話を聞こうとしない自分が、そこに居たのではないか?そして、後に気づく、手話で会話し、元気に生きている聞こえない人々の姿を見ようともしなかったのである(佐伯[2001]:260)。

3. 聴覚障害に対する両親の認識
* 遺伝子についての会話
両親A: 少しでも聞こえるようになったら、これからも心配。母親たちは娘の結婚した後の子孫までも気にします。
両親B: これが遺伝子のためであるかも知れない. それで私は遺伝子を選別して良い遺伝子を選んで子を生むことができるようにしてあげたい. それでお金をもっと儲けなくちゃいけないと思っている。
両親A: 病院で研究する目的として遺伝子検査をしてくれます。本来50万ウォンですよと言いながら(p.267)

補聴器を開発したアレクサンダー・グラハム・ベル (Alexander Graham Bell)は聴覚障害者たちが結婚すれば聴覚障害児童を産めるために聴覚障害者の間の結婚を防がなければならないと主張した。 そして、ベルは寄宿制聾学校を通じて手話が伝えられて、聴覚障害者間で会って結婚をすることになるから寄宿制の聾学校自体を廃止しなければならないと主張した(Lane[1999]:214)(p.268)。

V. 人工内耳を巡る社会的な影響
1. 人工内耳をすすめる社会
"人工内耳は耳鼻咽喉科手術の花で、声を聞くことができない患者らが希望の声を得て世の中と交感するようにしてくれる"としながら"さらに多くの聴覚障害者らが障害を克服することができるように今後も最善の努力をつくす"(聯合ニュース、2010.04.08)(p.270)。
"もう、家の子も歌を歌うことができます。 幼稚園にも行くことができてよ。" … 子供 が生まれて初めて他の人の前で歌を歌うことになりました。 それも数百人が見守る公開行事で歌うことになりました(朝鮮日報、2004.09.13日付、30面)(p.270)。
聞こえない子供だった。 話すことができない子供だった。 だが、今はすべての声が聞こえるわけではないが、話すことも聞こえることもできる。 子供がこの程度にできるまではおしゃべり屋さんのパパの涙が出る努力があった。今でもその努力は続いてる(KBSドキュメンタリーミニシリーズ人間劇場"パパはおしゃべり屋さん")(pp.270-271)。

2. 他の選択:日本の聾親運動(pp.271-273)
* ろう文化宣言"(木村、市田、1995)
* 2002年10月 全国聾児童を持った両親会 "聾児童の人権宣言"を発表(あベ やすし、2003)
* 2003年5月 日本弁護士連合会'聾児童の人権救済要請'を提出、2005年2月 日本弁護士連合会は'手話教育の忠実を要求する意見書'を発表
* バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センターのこれまでのながれの沿革
 http://www.bbed.org/summary/history.html


参考文献

あベ やすし 2003 「聾者の言語的権利に対する社会言語学的研究」 修士学位論文、韓国テグ大学校大学院
保健福祉部告示第2004 93号
チェ・ユンヒ、ユン・ミション 2007 「早期診断を受けた聴覚障害児童の早期言語仲裁実態に関する研究」 『言語治療研究』16―2:173-187
ホ・ミョン ジン、り・トゥボラ 2009 「国内人工内耳移植変遷に対する小考」 『言語治療研究』18―2:123-144
金沢貴之 2006 「聾教育という空間」 ましこ ひでのり編著 2006 『ことば/ 力/差別』三元社, 217-234
KBSドキュメンタリーミニシリーズ人間劇場、"パパはおしゃべり屋さん shttp://www.kbs.co.kr/1tv/sisa/human/vod/1352622_1278.html
キム・ユミ記者(記事作成日2005.12.28) エイブルニュース. 人工内耳手術なぜ賛否論議起きるか
Lane, H, L. 1999 『The Mask of Benevolence: Disabling the Deaf community(2nd)』New York: Dawn Sign Press
オ・スンハ、パク・スギョン、ソ・ミョンファン、シン・ションブン、キム・ソンヒ、リ・ガンジン、ホ・ドング 2007 『新生児難聴早期診断事業の妥当性研究および管理体系構築方案研究』 ソウル大学校病院健康増進事業支援団
オン・ジョンニム記者 2004 『朝鮮日報 2004.09.13日付、30面』 「難聴手術子供80人、「喜びののど自慢」」
聯合ニュース ソウル大病院 「人工内耳手術1千人突破」 2010-04-08
佐伯英一 2001 「聾教育とインタネット」 金沢貴之 編 2001 『 聾教育の脱構築』 明石書店:257-275
ユン・ミヒ、ユン・ミション 2007 「聴覚障害幼児の早期仲裁に関する実態調査」 『言語治療研究』16―4:103-124
全ろう兒をもつ親の会 2006 『ろう育が変わる』明石書店



*作成:クァク・ジョンナン
UP: 20110419 REV:
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