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進行性難病単身者から医療的ケアに関わる人たちへ

杉江 眞人 2010/06/20
日本自立生活センター(JCIL)重度訪問養成講座・医療的ケア講義

last update:20100715
  今日は皆さんにお会いできなくて残念に思っています。
  この病気と闘い、3年たちました。
  今、全身を思うように動かすことができず、ベッドの上から文字盤を使って、人を介して書いてもらっています。できれば、自分の口、体を使い、話したいし、会いにいきたいが、できません。最近、車椅子に思うように座れなくなりました。元気になり、お会いできる日を楽しみにしています。

  いつも、講義で2つのことを言っています。
  一つは、皆さんが講義を終了され、いろいろな重度の方にお会いになり、介助することになりますが、その人のことを分からないで、介助はできません。より早く習慣・性格も覚えなければならないし、日常のどんな生活をされているか、またその人の独特の生活・流れも覚えなくてはいけないし、周りの関係者、ヘルパー同士とか、訪問看護の人とか、他にもいろいろな人たちにほんろうされると思います。
  あなたの決意が問われるときもありますが、初心―今、あなたが決意したことを―どうかいつまでも持ち続けて下さい。いつか、そのうち、僕が言っていることが、分かる日が来ると思います。

  もう少し話します。
  実務に就かれたら、必ず思いつきや自分で独断で判断しないこと。必ず介助している人に確認し、よく理解できるまで確かめること。勝手な判断は絶対にしないで下さい。これは、ヘルパーがよくする失敗です。ヘルパー以外でもほとんどがこの失敗をします。
  例えば、独居の人の介助に入って電話をとって、本人に伝えず勝手に判断して先方と話を決める。これは、最近僕の家で実際にあったことです。
あと、文字盤の読み違いを勝手にして、救急車を呼んだこともありました。このようなことのないように努めて下さい。

  次に、医療的ケアのことです。西田さんから、初めての人にも分かるようにと注文をもらったので、少し詳しく言います。
  僕には、吸引や胃ろうからの注入があります。僕は気管の手術をしていてのどに穴が開いています。痰がたまったら息が苦しくなるので、その穴にチューブを入れ痰を引いてもらうと、息が楽になります。口から食事や水分が取れないので、胃ろうを作っていて、そこから栄養や水分を摂っています。薬も6時間おきに注入しないと、痛みや痙攣が出てくるので、胃ろうから注入してもらっています。皆さんは、普段痰が溜まれば自分で吐きだし、そして食事をしながら生活しています。でも、僕にはそれが自分でできなくなったので、代わりにヘルパーにしてもらうことで、家で生活しています。つまり、吸引や胃ろうからの注入は、暮らしていく上で必要なことです。してはいけないとか、していいとか、いろいろあるようで、詳しいことは分かりません。家族の人はしていいようです。しかし、僕には家族がいないのでヘルパーにしてもらわないと生活できません。それなのに、してはいけないことになっていると言われては、生活できないし、生きてもいけません。独居者への差別です。ヘルパーの吸引などは、体の調整やトイレの介助が出来た上でしてもらっています。日常生活の介助を上手くできない人にはまかせられないからです。(医療的ケアのこと)いろいろあるようですが、医学にはもっと違うところに力を注いでほしいし、訪問看護はあまくだりになっている。訪問看護の人に僕が期待していることは、緊急時のこととか、僕の体のことをもっと勉強し理解して欲しいことです。例えば、僕は痛みと痙攣が強いので、いろんな薬を飲んでいます。何時間でその薬が効かなくなるのかとか、どのときに痛み・苦しんでいるのかとかです。呼吸ももっと悪くなるのです。少しの時間だが、毎日来ているならそういうことを気にして欲しい。僕が口から飲めなくなったことも知らなかった。口から飲めなくなったことより、胃ろうは認められていないとか、どうもそちらの関心が強いようだ。胃ろうと浣腸、ホットタオルで顔を拭く以外にない。ヘルパーと体のことを話しているところも見ない。吸引は、ヘルパーの中には看護の人より上手な人がいます。慣れたヘルパーの方が僕のことを知っているから、痰の出ぐあいもよく知っていて、僕もしんどくない。
  そして、これも、僕の家で実際にあったことです。訪問看護が減って増えたとき、それまで1日3回はいっていたのに、新しい訪問看護の営業時間が5時までなので、他の訪問看護もそれに合わせて、1日2回の胃ろうからの注入になった。そして、僕の夕食は6時7時から3時に変更になった。浣腸も上手な人と下手な人がいます。それは仕方ない。だから僕は、上手な人がくるときに合わせて浣腸し便を出すようにしていた。しかし、下手な人が続けてきたので、便が出せなかった。それでお腹も張っていたので、注入を断った。そしたら、すぐ先生に報告し僕が悪者になった。その上、看護師から「あなたは王様ですね」と言われた。僕は言いたい。「どちらが王様なのですか」。

  話が長くなりましたが、最後に言います。僕は自分でできるものなら自分で便をし、息をし、話して、食べたい。でももうそれはできないです。でも、ヘルパーがいるから、満足ではないが、生活できている。しかし、しんどいこともたくさんあります。そして、ヘルパーもしんどくなるようだ。ただ、あなた達の介助の時間には終わりがありますが、僕は24時間続いています。お互いそうだが自分との闘いもある。ゆっくりと一人で静かに考えたいときもありますが、忙しくてなかなかそういう時間もとれません。でも、僕は家で生活して生きていくと決めたので、自分に負けたくない。周りの人達も大変なようだが、頑張っている。皆さんが、どんな人のところに行くのか知りませんが、生活を共にされ、相手のこと自分のことをしっかり見て考えてください。そして、立派な人に成長して下さい。そうしてもらわないと、僕も困ります。

  医療的ケアの講義だったということです。再度言います。僕の声は届かないかもしれませんが、僕と同じ人達のためにも言いたい。僕は一人なので、ヘルパーに自分ができないことの代わりをしてもらわないといけないことが多いです。そうしてもらわないと家で暮らしていけないし、生きてもいけない。家族のいる人のことも聞きました。仮に家族がいても、仕事もあるし家の用事もあるし、寝る時間も必要だ。24時間そういうことはできないでしょう。訪問看護もずっとはこれないみたいだ。だから、してはいけないことになっていると言われても、どうにかしてもらわないと、僕も医療的ケアが必要な人達も生活できません。生きていけません。だから、そういう人達のために、いろんな専門の人達はよい方法を考えていただきたい。自分の家でのことと、周りの人たちの話を聞き、僕が言えることです。

  つたない話でごめんなさい。
  今は皆さんがいる場所まで車椅子に乗って行けないですが、栄養をつけてまた行きます。講義の場ではあまり好ましくないか。僕の介助に興味のある方は、小泉さんを通して下さいと言ってもらえますか。皆さんとどこかでお会いできる日を楽しみにしています。
  それではさようなら。


UP:20100715
日本自立生活センター(JCIL)難病/神経難病/特定疾患 2010  ◇医療的ケア 2010  ◇全文掲載 
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