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「ケアの最前線――アポリアとコンフリクトの諸相」

安部 彰(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)
 2010/05/16 第36回日本保健医療社会学会
理事会企画 若手テーマセッション(B) 「ケアの最前線――アポリアとコンフリクトの諸相」企画趣旨
[ワード版] 韓国語

last update: 20100410
ケアの最前線――アポリアとコンフリクトの諸相

安部 彰(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)



 ケア(care)は「配慮」「世話」「何か(の個別性)を尊重すること」と翻訳される/読み替え可能なように、人間生(活)における普遍的な事象である。すなわち有史以来、ケアをめぐる実践と言説は遍在してきたのであり、その意味で今日におけるその流行は遅きに失しているという感さえある。ところでかかる現在性にあってケアがかくも前景化しつつあること――人々の耳目を引き、議論の対象となっていること――は、故なきことではない。かかる前景化の主たる背景には、このかんの「病や障害にたいする認識の転回」――キュアからケアへ――、「フェミニズムの台頭と浸透」――権利上は「遍在」する(はずの)ケアが事実上は女性のもとに「偏在」してきたことへの批判と受容――、「少子高齢化社会の到来(にともなう諸事象)」――介護保険の導入、ケアの社会化、ケアにまつわる人的/物的資源の需給の不均衡――などがあっただろう。
 こうして立ちあらわれた現況にあって(少なくとも)学問研究に要請されるべきは、たんにケアを言祝ぐのでも、批判するだけでもない、より困難な第三の道を歩むことである。すなわちケアにおける複雑牲を(浅慮から)縮減しようとするその欲望に抗して――その欲望の手前で踏みとどまり――、むしろその増大を志向することである。そのさい医療や保健といった文脈――妥当であるがゆえにあまりに自明でもある文脈――から距離を置いてケアを眺めなおしてみることは、必要でも有用でもあるだろう。かかる見地から本セッションでは、「(社会)運動」「倫理」「政治哲学」「法」などが交錯する場所においてケアをとらえ返すことを試みる。それによって保健医療におけるケアについて思考していくうえでもヒントとなる新たな視点を提供できると考える。
 なお当日は、変則的ではあるが、すべての報告終了後に全体討論の時間を設けたい。偏にそれは、そうした細切れではない時間のもとでこそ開かれる「未来」を望見してのことである。報告者とフロアのみならず、報告者間での活発な相互作用――クリティカルな質疑や応答の応酬、それにもとづく討議――の生成をおおいに期待する。

■■参考資料
安部 彰・有馬斉,2009,『ケアと感情労働――異なる学知の交流から考える』(生存学センター報告8)、立命館大学生存学研究センター.
安部 彰堀田 義太郎郎編,2010,『ケアと/の倫理』(生存学センター報告11)、立命館大学生存学研究センター.

*作成:安部 彰
UP:20100412 
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