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「韓国特殊学級の成立と変容(1970〜1974)」

クァク・ジョンナン 20100331 『特殊教育ジャーナル――理論と実践』11(1): 227-305

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last update: 20160218


■要旨

この研究は1970年から1974年までを中心として、知的障害学生のための最初の特殊学級の成立背景とその後の変化を究明したものである。研究方法は文献調査、現場訪問、それに、関係者への面談を実施した。この研究の主な結論は次のとおりである。第一に、知的障害学生のための最初の特殊学級である大邱七星小学校の特殊学級は、今まで知られていたものとは異なり、1971年ではなく1970年に正式に学級編制に含まれていた。また、今まで知られていたものとは異なり、自生的に作られたものではなく、慶北地域の特殊教育関係者、慶北教育委員会の計画の下で一般学校内の知的障害学生の教育権保障という教育的目的を確実に持っていた。第二に、知的障害学生に対する教育権保障を目的に設置された特殊学級は1974年文教部によって全国的に拡がりながら、学習不振学生に対する学力救済の性格をより強く持つようになった。当時の一般教育は「小学校義務教育の拡大と中学校無試験制度」という一大変化を経験していた。この過程において文教部(一般教育)は学習不振学生及び知的障害学生に対する教育的措置を取るよりも、特殊学級を拡大設置し、特殊学級にただその場しのぎの学力救済を担当させた。それだけでなく、学習不振学生と知的障害学生の中学校進学を抑制するために特殊学級を利用した。このような特殊学級の変容は、特殊学級に対する否定的なイメージの典型をさらに固着化させ、それはその後の特殊学級のアイデンティティーにも多くの影響を及ぼした。

■目次

T. 序論 
U. 精神遅滞学生に対する教育の拡大と特殊学級の成立
V. 中学校無試験制度にともなう特殊学級の変容
W. 特殊学級に対する否定的なイメージの拡大
X. 結論
参考文献

■一部抜粋

□ 特殊学級の設置現況(70 〜 74)
年度 学級数 増減数 学生数 増減数 学級平均学生数
1970@ 1 0 30 0 30
1971A 1 0 9 ↓21 9
1972B 18 ↑17 312 ↑303 17
1973C 33 ↑15 532 ↑220 16
1974D 210 ↑177 4418 ↑3886 21
* 上記表は教育部(1993)『国民学校の特殊学級の設置現況』(p.317)を従って、新しく確認された数値を修正したものである。
出所:@、A『テグチルション(大邱七成)小学校(1939 〜現在) 沿革紙(永久保存資料)』 p.45
B 慶尚北道教育委員会1972 『慶尚北道の特殊学級市・郡別編成現況』:31-32
C ホ・チャンギュ 1973 「特殊学級現況"特殊学級設置と運営」韓国特殊教育研究協会編 1973 『第1回特殊学級設置と運営に関するセミナー』:73.
D 韓国精神薄弱児教育研究所 1974 〜 1975 「1974年7月15日現在の我が国の特殊学級の設置実態」『特殊学級研究(1冊2冊合本号)』1―1: 1

1969年には中学校入試試験撤廃を骨子とする中学校無試験制度が実施された。 その結果、従来は試験から落ちて中学校に入学できなかった学歴不振学生および精神遅滞学生の一部が中学校に入学することになった。 朝鮮日報1969年7月10日付には中学校無試験制度実施に対する学歴不振学生の問題に対する次のような記事がのせられている。市教委は今年、無試験抽選進学後新入生らの実力の差が大きく広がった点を重視し、学期初めから新入生らを相手に知能学力考査を実施した。その結果IQ70未満の低能児と弱視などと計算と本ができない児童が学級当たり平均7 〜10人ずついるのを発見し、各国民学校にもう一度低能児の数字を調査することによって、正常授業に不適切な児童数を把握したということである(記者名未詳、低能児などが5%、朝鮮日報1969年7月10日付、8面) (p.291)。
文教部は1973年10月29日精神薄弱児および学習遅進児の中学校進学抑制にともなう指導方法の一環で精神薄弱児(教育可能級)と学習遅滞児を対象とする特殊学級を 国民学校に併設することを勧奨し始めたのである。 それだけでなく、文教部は中学校教育の正常化を理由で国民学校の精神薄弱児と学習遅滞児に対して74学年度から中学校進学を抑制するように決定、判定結果を来る9月30日まで報告しろと2日、各地の教委に指示した。 当時、文教部が発表した「学習遅滞児 (学力欠損が深刻な)および精神薄弱児の中学校進学抑制方案」というのは中学校教育の継続が不可能な愚鈍(IQ 0〜25,保護収容級)と痴愚(IQ 25〜50,訓練可能級)等の精神薄弱児はもちろん学校教育の継続が不可能な愚鈍(IQ 50〜 70,教育可能級)と読み取り、書き、数えるなどが出来ない遅滞児を二度選び出して出身学校長(または、区庁長)責任の下父兄を説得させて進学をあきらめるようにするという内容を含んでいた(記者名未詳、遅滞児中学進学抑制、朝鮮日報1973年8月3日付7面) (p.291)


□ 参考 2010年障害児教育の現状
特殊教育対象者の幼稚園、小学校、中学校および高等学校全過程義務教育(障害者などに対する特殊教育法第3条第2項)
2010年4月現在の全国150個の特殊学校で23,776在学、特殊学校で特殊教育を担当している教員は6,738人である。
2009年度特殊学校現況と備えれば特殊学校の学生数は170人が増加、学級数は140学級増設、教員数は126人が増員(教育科学技術部 [2010]:9)

□ 特殊学校の現状(2010.4.1現在)
設立別 学校数 学級数 学生数 教師数
国立 5 171 948 326
公立 55 1,740 10,842 3,004
私立 90 1,866 11,986 3,408
150 3,777 23,776 6,738
出所:教育科学技術部 2010 『2010年特殊教育年次報告書(2010年定期国会報告資料)』教育科学技術部:10

□ 一般学校の特殊学級現状(2010.4.1現在)
過程別 学校数 学級数 学生数 教師数
幼稚園 207 274 815 267
小学校 3,604 4,682 22,886 4,847
中学校 1,343 1,748 10,230 1,846
高等学校 642 1,087 8,085 1,298
専攻課 1 1 5 1
リハビリ福祉治・療教育教 12
5,797 7,792 42,021 8,271
出所:教育科学技術部 2010 『2010年特殊教育年次報告書(2010年定期国会報告資料)』教育科学技術部:10

2010年4月現在の全国5,797個の幼・小・中・高等学校に設置された7,792個特殊学級で42,021人の特殊教育対象学生が特殊教育を受けている
特殊学級で特殊教育を担当している教員は8,271人
2009年度特殊学級現況と備えれば特殊学級設置教は473校増加、特殊学級は868個学級増設、担当教師は1,143人が増員( 教育科学技術部 [2010]:10)

□ 特殊教育対象者の一般学級配置現状(2010.4.1現在)
過程別 学校数 学級数 学生数
幼稚園 1,091 1,459 1,616
小学校 2,891 4,845 5,313
中学校 1,592 2,765 3,100
高等学校 1,201 3,306 3,717
 計  6,775 12,375 13,746
出所:教育科学技術部 2010 『2010年特殊教育年次報告書(2010年定期国会報告資料)』教育科学技術部:11

2010年4月現在の全国6,775個 幼・小・中・高等学校 の12,375個一般学級に13,746人の特殊教育対象学生が配置されて統合教育を受けている(教育科学技術部 [2010]:11)


<参考文献>
教育科学技術部 2010 『2010年特殊教育年次報告書(2010年定期国会報告資料)』教育科学技術部
慶尚北道教育委員会1972 『慶尚北道の特殊学級市・郡別編成現況』:31-32 
テグチルション小学校(1939 〜現在) 『テグチルション(大邱七成)小学校(1939 〜現在) 沿革紙(永久保存資料)』:45
ホ・チャンギュ 1973 「特殊学級現況"特殊学級設置と運営」韓国特殊教育研究協会編 1973 『第1回特殊学級設置と運営に関するセミナー』:73
韓国精神薄弱児教育研究所 1974 〜 1975 「1974年7月15日現在の我が国の特殊学級の設置実態」『特殊学級研究(1冊2冊合本号)』1―1: 1
記者名未詳、低能児などが5%、朝鮮日報1969年7月10日付、8面
記者名未詳、遅滞児中学進学抑制、朝鮮日報1973年8月3日付7面



*作成:クァク・ジョンナン
UP: 20110419 REV: 20160218
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