HOME >全文掲載 >

「医師による自殺幇助に合法判決――モンタナ州」

児玉 真美 201002 介護保険情報 2010年2月号

last update: 20110517


 よりによって大晦日に……と思うのは、日本人の「年末年始はスペシャルなお休み」感覚で、クリスマス休暇を終えた直後の米国の裁判所には無縁なことなのだろう。大晦日、かねて注目されていたモンタナ州の最高裁判所が、医師による自殺幇助を合法と認める判断を下した。
 これまでにも当欄で紹介したように、米国では1998年にオレゴン州が、去年3月にはワシントン州がそれぞれ「尊厳死法」を作って、意思決定能力のあるターミナルな患者に対する医師の自殺幇助を合法化している。オレゴン州ではこれまでに約400人が、ワシントン州では施行からの半年間で11人が同法を利用して自殺した。 モンタナでは08年12月に地方裁判所から、患者が医師による幇助を受けて自殺するのは州憲法で認められたプライバシー権だとの判断が出ている。末期がんの患者Robert Baxter氏(76)が、医師による自殺幇助に殺人罪を適用する州法を州憲法で保障された患者の権利の侵害だとして、医師ら4人、自殺幇助合法化アドボケイトの Compassion & Choice と共に訴えたもの。Baxter氏は判決が出た当日に亡くなったが、州側が最高裁に上訴し、その行方が注目されていた。
 大晦日の最高裁の判決は、州憲法レベルでの判断は避け、意思決定能力があるターミナルな成人患者への医師による自殺幇助を違法とする規定は州法にはない、とした。主な理由としては、自殺そのものは違法行為ではない。医師は手段を提供するだけであり、その後、本人が自分の意思で致死薬を飲むことが公共の平穏を乱したり、他者に危害を加えるわけでもない。「(延命を)中止する」ことも「(致死薬を)与える」ことも、終末期の患者の意思を尊重しようとの「モンタナ・ターミナルな人の権利法」の理念に基づき、患者が求めることのできる“行為”と考えてもよい、など。
 これで医師による自殺幇助を認めた州は公式に3つとなったわけだが、今回のモンタナの判決で非常に気になるのは、これまでの2州が新たに法律を作って合法化したのに対して、現行法のままで違法ではないとの判断がされたこと。また、これまでは延命治療をやらない・やめること(omission )と、死に至らしめる行為をすること(commission)との間に線引きがされてきたのだけれど、治療の差し控えや中止を決断するのも最終的に致死薬を飲む決断をするのも患者自身である以上、医師の行為がいずれであっても違わないと捉え、これまでの線引きを踏み越えてしまったように思えること。この判決が、今後、他の州や他国に及ぼす影響が懸念されてならない。
 去年、米国では、通過こそしなかったものの、ニューハンプシャーを始め、いくつかの州で合法化案が議会に提出された。Final Exit Network事件(09年4月号当欄で既報)など“闇の自殺幇助”も取りざたされて、合法化を求める声は日増しに高まっている。去年はルクセンブルクが合法化に踏み切り、カナダとスコットランドでも合法化法案が議会に上がった。英国でも去年、公訴局長から自殺幇助に関する法解釈のガイドライン案が出された。具体的にどういう行為が「幇助」に当たるのかが不明瞭な上に、対象をターミナルな人よりも広げ、医師だけでなく近親者による自殺幇助まで、事実上、容認するかのような内容である。春に最終決定されるとあって、賛否の議論は日々激しさを増しているところだ。
日本でも終末期医療のあり方についての議論が進んでいるが、世界における、こうした尊厳死議論の動向をしっかりと見据えた上で、ぜひとも慎重な議論をお願いしたい。

安易な胃ろうに警告――英国内科学会

1月6日、英国の主流メディアがこぞって大きく報道したのは、ケアホームでの胃ろう強要問題だ。英医学会からの報告書が、認知症の進んだ高齢者を中心に、人手・経費削減のための胃ろう造設が急増し、入所の条件にするケアホームも増えていることを指摘。胃ろうには延命効果のエビデンスはない、リスクを伴う侵襲的措置であり、食の楽しみや食事を通じての人との関わりを奪うので、最後の手段にするべきだ、と警告した。
「嚥下に困難のある高齢者でも、時間をかけてケアすれば、口から普通に飲食できるようになることもある。そういう人に必要なのは胃ろうではなく、ナーシング・ケアである」と、筆者の1人。
 日本でも高齢者医療・介護関係者の間ではお馴染みの議論ではあるのだが、改めて英国メディアの介護問題に対する関心の高さに目を見張った。メディアの問題意識が介護を国民の関心事にするのか、それとも国民の関心事だからメディアが放っておけないのか……。

*作成:堀田 義太郎
UP:20100212 REV: 20110517
全文掲載  ◇安楽死・尊厳死  ◇安楽死・尊厳死2010  ◇児玉 真美
TOP HOME (http://www.arsvi.com)