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独居ALS患者における支援体制の事例検討
長谷川 唯
2009/08/28 第14回難病看護学会学術集会 於:前橋テルサ
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last update: 20160218
【研究目的】
2008年度から実施している筋萎縮性側索硬化症(以下ALSと記す)患者の在宅独居生活支援活動を報告する。従来、日常的な医療的ケアの管理や医療と介護との調整を家族の仕事としてされてきたが、独居の場合はその担い手がいない。一部の医療行為については、ヘルパーに認められているが、多くは認められておらず、独居者を支えるヘルパーは何の後ろ盾もないまま必要に迫られて行なっている状況である。このような現状から、本研究は、とくに医療的ケアを要する障害者が地域で一人暮らしをするために、必要な支援内容を具体的に明らかにし、制度化に結びつく情報として整理し提示することを、最終的な目的とした。
【研究方法】
患者の具体的生活場面を把握し、制度利用に必要な知識を共有するため、患者への働きかけを行なった。上述の支援活動を継続し、その過程を記録・分析した。それを通して、支援の仕方とかかわり方について検討を行なった。また本人と福祉・医療機関からのヒアリングを通して、安定した在宅生活をサポートするために望ましい連携のあり方についても考察を行なった。調査対象者:ALSを患う60歳代男性(以下S氏と記す)を対象とした。調査期間:2008年4月〜2009年8月。倫理的配慮:調査対象者には、研究目的・方法・倫理的配慮についての説明を行い、自署困難のため代筆者により署名を得た。
【結果】br> S氏は2009年1月中旬に、気管切開手術と在宅生活を立て直すために入院し、4月初旬に退院をした。S氏は家族がいないために、入院中の医療面以外のこと(支払いや郵便物の確認)は支援者が行なった。S氏は入院中のストレスが強く、また本人の退院への強い希望があり、在宅移行後の支援体制が整わないままに退院となった。痰の吸引については、S氏の入院中に主治医や病棟看護師から指導を受け、練習をしていたが、退院後にはどこが医療的ケアを中心的に担うのかにより、手技や手順が異なり、統一されないまま在宅生活がスタートした。しばらく在宅の主治医が決まらず、支援者とヘルパーの間で手技や手順を確認しながら、痰の吸引を行なった。また本人の要求が優先されてデイケアに行かなくなった。そのため、口腔ケアなどがヘルパーの仕事となった。必要なリハビリなども不足し、できること/できないことの適切な見極めに困難が生じた。ヘルパーはどこまで本人の意思を尊重するのか、かかわり方難しくなった。
【考察】
独居の場合は、医療的ケアを誰がどのように指導、管理し、行なうのか、介護と医療の連携をどのように図っていくのかが課題としてある。また本人の病状の進行に合わせた適切なニーズ判定と支援が必要である。病院では医療的ケアニーズについてはある程度適切なアセスメントに基づいて充足できるかもしれないが、介護ニーズに関しては明らかに過小評価されてしまう現状がある。他方、在宅生活では医療的ケアニーズは評価困難である。本人の要求が優先され、医療的アセスメントを妨げる場合がある。在宅生活を維持するためには、医療と福祉の密接な連携が必要である。
UP:20110707 REV: 20160218
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